これまで北宋時代を舞台にした中国時代劇ドラマと言えば岳飛、包青天、楊家将といったヒーローを主人公にした歴史ドラマが定番だった。ところが、最近では『明蘭~才媛の春~』『孤城閉~仁宗、その愛と大義~』に代表されるように、当時の人々の生活ぶりや文化にフォーカスする作品が増えてヒットを飛ばしている。
【写真】北宋を舞台にした映画村で撮影! 運河を渡るリウ・イーフェイ&チェン・シャオ
■古代のカフェ文化を描写! 技術にこだわる見事な茶芸
ヒロインの趙フン児(「フン」は目へんに分)が経営するのは人々がお茶を飲みに来る茶坊。江南から北宋の都・東京(とうけい)にやってきた彼女はお茶文化の違いに戸惑いつつも、江南で鍛えた茶芸の技で自分の茶坊を人気店へと成長させていく。そんな彼女が得意とするのが、この時代に流行したと言われる“点茶”。粉末状にした茶を点(た)てる方法で、これが日本の茶道の源にもなっているというのも感慨深い。
また、彼女が茶の表面にできた泡に絵を描く“茶百戯”を披露する場面は、現代のラテアートのよう。さらに、趙フン児がライバル店の店主と茶芸を競う“闘茶”も見逃せないシーン。それぞれがお茶を点てて、茶の色、泡立ち、味わいを勝負する過程など、見事な茶芸の技術が表現された一つ一つの描写に注目だ。
■当時の流行スイーツを紹介! 目にも美味しい茶菓子
北宋時代の風俗を記録した書籍『東京夢華録』には当時流行した料理やスイーツの記述がある。そして北宋を舞台にした中国時代劇では、これを参考にして想像も加えながら当時のメニューを再現することが多い。
そして『夢華録』では、お茶とともにだされる菓子をクローズアップ。茶菓子づくりが得意なヒロインの相棒・孫三娘が様々なメニューを紹介してくれる。孫三娘が作って宿の女将が夢中になるのは、艾(ガイ)葉などを使った緑色と薔薇などを使った赤っぽい色の組み合わせが花のような彩りの“鮮花団子”。
また、趙フン児の店で高級スイーツとして提供される桃のお菓子として、透明なゼリーに桃の味を閉じ込めた“春水生”も登場する。さらに、定番のお茶受けとして緑豆粉とお茶から作られた“碧潤豆児コウ(「コウ」は米へんに羔)”を食べるシーンも。そんな茶菓子たちの競演は目にも美味しい。
■名画から当時の風景を再現! 細部に宿る文化の真髄
北宋では暮らしの中でお香、生け花、書画を楽しむ文化も発達したと言われている。劇中では趙フン児がこれらの文化をたしなむ姿がさりげなく描きこまれているのも見逃せないところ。
また、北宋の第4代皇帝・仁宗を主人公にした『孤城閉~仁宗、その愛と大義~』は当時の名画を彷彿とさせるポスタービジュアルが大いに話題となったが、『夢華録』も“清明上河図”からインスピレーションを受けたとのこと。全編にわたりこの名画を参考に鮮やかに再現された生き生きとした人々の生活風景を見ることができる。
さらに、本作は横店影視城や北宋が舞台の名作小説『水滸伝』がイメージされた水滸影視城といった映画村でロケ。
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