西村ツチカによる漫画『北極百貨店のコンシェルジュさん』が映画化。10月20日より全国で公開中だ。

本作は、従業員は人間、お客様は動物という不思議な百貨店「北極百貨店」に訪れるキャラクターたちの心あたたまる物語が描かれる動物×百貨店エンターテインメント。今回クランクイン!は、新人コンシェルジュの秋乃役・川井田夏海と、謎のペンギンのエルル役・大塚剛央にインタビュー。二人がアフレコ現場で先輩方から学んだこと、そして思い出に残っている“プレゼント”についての答えからは、作品同様の温かさを感じた。

【写真】撮影中、ピースで笑顔を向けてくれた川井田&大塚

■丁寧に進んだアフレコ

――原作と映画の脚本を読んだときの感想を教えてください。

川井田:原作はどのカットも飾っておきたいくらいかわいらしくて、アニメになったら「どんな感じで動くんだろう!」とワクワクしていたので、実際に動いている秋乃たちを見たときはかわいすぎて感動しました! 原作の中からピックアップされたお話にも一貫性があって、誰かの夢につながっていくという物語が見事だなと思いました。

大塚:“人間が働いている百貨店に動物たちが訪れる”という設定自体が不思議だなと思いました。読み進めていると、哲学的なことや考えさせられるようなこともありつつ、でもほっこりする雰囲気があって。いざ収録が始まって脚本を読んだときは、そのホッとする部分が色濃く出ているという印象がありました。プラスして秋乃の成長という軸も物語のなかにあり、彼女の憧れや仕事に向き合う姿勢は、映画を見ている方々にも何か伝わるものがあるんじゃないかなと思います。

――続いて、演じるキャラクターの紹介をお願いします。

川井田:秋乃は北極百貨店で働く新人のコンシェルジュです。コンシェルジュになることをずっと夢見ていて、やっと働けるようになりました。
彼女は「人のために何かをしたい」という気持ちが強いのですが、それは100%誰かのために何かをするということではなく、彼女自身がやりたくて、そういう行動を取っているんです。なので、明るく前向きというだけではなく、ちゃんと人間らしい、人間臭い部分も持っている子だと私は思っています。

大塚:エルルは、百貨店内をいつも歩いている謎のキャラクターです。表情から感情がなかなか読み取れないので、演じる身としてはどう表現すればいいのか悩みました。ただ、物語を読み進めていると、「エルルってもしかしたらこういうことを考えているのかも」という判断材料が散りばめられていると感じたんです。それをかき集めて彼を作っていきました。

――アフレコはいかがでしたか?

川井田:あるシーンでどうお芝居したらいいか分からなくなってしまった時があって、何度もトライさせていただきました。どんな状況でも急かすことなく、一歩一歩着実に歩んでいけるような、そんな雰囲気の現場でした。

――時間に限りがあるなかでも、丁寧に収録できた。

川井田:はい。そんなにテイクも重ねずに収録を進めることができました。

大塚:確かに。
それは掛け合いがうまくできたからかもしれないですね。

川井田:そうですね。掛け合いのお芝居から生まれたものを尊重していただけたこともありがたかったです。今回は同じシーンに登場するキャラクターで一緒に収録できたんですよ。

大塚:秋乃は接する人や動物が多いので、ずっとアフレコ現場にいました(笑)。

川井田:そうなんです(笑)。主演ということもあってかなり緊張していたので、スタジオで縮こまっていた私に、監督さんやディレクターさん、キャストの皆さんが「大丈夫だからね」「お腹空いてない?」と声をかけてくださって。皆さんの温かさに助けていただきました。

――コロナ禍ではなかなか集まって収録ができなかったと思います。本作では多くの先輩方と収録ができた分、学べることも多かったのではないでしょうか。

■思い出に残っているプレゼントは?

川井田:役に対するアプローチの仕方や、ディレクションへの対応、現場での過ごし方など本当に勉強になることがたくさんありました。収録が終わって「楽しかった!」と帰って行かれるのを見て、「またご一緒できるようにもっと頑張ろう!」と励みになりました。


大塚:フロアマネージャーの東堂を演じる飛田展男さん、外商員のトキワを演じる中村悠一さんと一緒に収録させていただいたのですが、先輩方の対応力のすごさにびっくりしました。お二人とも演じる方向性をピタッと合わせていらっしゃったんです。

また、飛田さんからは狙っていない面白さを感じました。東堂さんって厳格な雰囲気がありつつも、神出鬼没で謎の多い人物なんですが、飛田さんのお芝居を生で聞かせていただいたことで、東堂さんに色がついていくのを感じることができて、とても面白かったです。

――本作は自分のため、誰かのためと、いろいろな理由で百貨店に訪れるお客様がいます。お二人は誰かからもらった、もしくは渡したプレゼントで思い出に残っているものはありますか?

川井田:お手紙ですね。小さい頃に友達同士でやり取りした手紙も捨てられなくて、例えばちょっとしたお菓子と一緒にもらった「この前ありがとうね、今度遊ぼうね」と一言書かれた手紙も専用の箱にしまってあります。特に直筆で私に宛ててもらった手紙には思い入れがあって、私だけに宛てられた文字だと思うと捨てられないんです。

――そうなんですね!

川井田:ありがたいことに、この仕事をしていてお手紙をいただくこともあって「これを見たよ」「元気をもらえた、ありがとうね」と皆さんが書いてくださってるのを、私こそ「それを伝えてくれてありがとう!」「手紙を書く時間を作ってくれてありがとう!」という気持ちで読ませていただいています。とってもうれしいプレゼントをいつもありがとうございます。

大塚:僕はつい最近、母の誕生日がありまして、せっかくこの作品にも関われたし、普段はあまり足を運べていない百貨店でプレゼント買いました。ただ、入店をしたものの、何を買っていいのか分からなくて…(笑)。
母はきっと何をプレゼントしても喜んでくれるだろうけれど、あげるからにはより喜んでもらえるものを選びたくて、店舗の担当者の方にいろいろとアドバイスをしていただきました。

川井田:そうなんですね! 何をプレゼントされたんですか?

大塚:財布です。それをどのくらい母が喜んでくれたかは分かりませんが、プレゼントって悩む時間も大事なのかなと思いました。最近だとネットですぐにプレゼントを贈ることもできます。それはそれで便利ですし、渡すだけでもすてきなことだと思うのですが、悩みながら選んだプレゼントを直接渡したほうが、僕はより心に残る気がしています。

――最後に本作の推しポイントを語ってください!

大塚:絵も音楽もすてきで、キャラクターたちもすごく面白く、そして印象的に描かれています。老若男女問わず楽しめる作品なので、ぜひ劇場でご覧ください。

川井田:本当にたくさんの動物たちが登場します。きっと皆さんが好きだと思う動物やエピソードも出てくるはず! そういう動物たちの魅力、そして物語や絵も含めて1回だと見切れないと思いますので、何度も何度も北極百貨店に足を運んでいただけたらうれしいです。

(取材・文:M.TOKU 写真:上野留加)

 『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、全国で公開中。

編集部おすすめ