冬ドラマ独り勝ちといわれるNHK朝ドラ「カーネーション」において、ヒロイン・小原糸子の初恋であり、「不倫」相手の周防龍一役を演じた綾野剛
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いま非常に注目されている彼が、4月スタートのドラマ「クレオパトラな女たち」(日本テレビ)「開拓者たち」(NHK総合テレビで再放送)に出演する。


それにしても、「カーネーション」での「周防龍一」の存在感は、あまりに大きく、鮮烈な印象だった。

たとえば、二人が初めて出会うシーン。繊維商業組合のオッサンたちが集う宴会場で、隅に静かに佇む「気配」だけで瞬時に、「絶対にこの人がヒロインの恋の相手だ!」ということを視聴者は悟ったはず。

切れ長の目も、長崎弁の朴訥とした、でもやわらかな雰囲気も、三味線を弾く姿も、テーラー職人としての確かな腕も、ヒロインや女性視聴者がうっとりしてしまうのはよくわかる。

さらに、妻子がありながら、ヒロインの愛の告白を受け止めてしまう「ズルさ」「優しさ」も。

綾野剛のことはドラマ「Mother」や映画「クローズZEROII」などで知ってはいたけれど、「周防龍一」には正直、やられた。

でも、この役柄がハマりすぎて、良すぎて、どこかしら「騙されないぞ」という警戒心も抱いていた部分があったのだが、それを見事に打ち破られたのが「スタジオパーク」(3月8日放送分)でのトークである。

2度の延期を経て、ドラマ内のご本人の出番もとっくに終わっての、満を持しての出演。女性たちの強烈な声援に迎えられ、登場した彼は、静かに、ひとつひとつ丁寧に言葉を選びつつ、こんな話をした。 「照明とかカメラのアングルだとか尾野さんも含めて、『周防龍一』はみんなに作ってもらったんだと思いました。僕を通して、尾野さんが演じる糸子がとにかく魅力的で美しくあって、そして女性であってというのが映ればいいと思っていたけど、自分一人じゃ何にもできないので、そういう部分を改めて助けていただいたんだと思いました」。

え、なに……この感じの良さ? 作品のおかげで人気が出ても、関係ない顔をする役者が多いなか、なに、この謙虚で頭の良いコメント。
さらに、追い討ちをかけるように、脚本家・渡辺あやさんからのメッセージが読まれた。

「周防さんのあまりの存在感の強さに、おそらくは現場全体も夢中になってしまったと思われ、彼の出演回に限っては、私が脚本に組んでおいたはずの構成のバランスが見事にふっとんでしまっているのが辛いやら怖いやらでした」。

「カーネーション」の最大の魅力として、脚本の良さを挙げる声が多いけれど、そんな細やかで緻密な脚本の「構成のバランス」を吹き飛ばしてしまうとは……。恐るべし、「周防龍一」の存在感。

一般的には、映画やドラマの役がハマりすぎてブレイクした役者さんって、ご本人の「素」のトークを聞いた途端にガッカリするケースが多いものだけど、素のトークを聞いてさらに好感度が上がるという稀有な例である。綾野剛、恐るべし。(文:田幸和歌子
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