1月22日に東急シアターオーブにて初日を迎えるミュージカル『ケイン&アベル』。イギリスの国民的作家、ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説を原作に、音楽にフランク・ワイルドホーン、脚本・演出にダニエル・ゴールドスタインといった世界的クリエイターを迎えた期待作だ。
【写真】松下洸平&松下優也、りりしい表情が美しいソロショット
■初共演の“W松下”、お互いを絶賛!
――いよいよ本格始動した『ケイン&アベル』。稽古場の雰囲気はいかがですか?
洸平:進みがめちゃくちゃ早いです! ついていくのが必死というか。立ち稽古が始まって1週間ぐらいで1幕全部終わったんです。
優也:なんなら一昨日通してるし。
洸平:そうなんですよ。この間1幕を通した時、ほんと笑えるくらいの出来で(笑)。優也くん演じるアベルが「(伴奏)ジャンッ!」ってかっこよく終わるシーンがあるんですが、ちょっとほっこりする感じで(笑)。でもすごく新鮮で、逆に刺激的でした。
優也:ほんとにスピード感が想像以上に早くて。ケインも、自分が演じるアベルも、ミュージカルにしては会話劇なところが多く、セリフが多いんですよ。だから家に帰ったら、「明日多分あのシーンやるから、もう覚えとかないと……」みたいな、今は覚えることに追われてるって感じで。曲数もセリフも多いので、今は自分が何か意見を出して作っていくというよりも、まず追いつくことに必死。この1週間は、がむしゃらに過ごしてたって感じです。
――初共演となる洸平さんと優也さん。稽古を共にし始めて、お互いの印象に変化などはありましたか?
洸平:(優也は)めちゃくちゃかっこいいです、ほんとに。アベルという役は、ケインと対になるようなキャラクター。ケインは裕福な家庭で育って、わかりやすく言うとちょっと“お坊っちゃま”というか、エリートですが、アベルは真逆で、身寄りのないところからのし上がっていった“野生的”な男。優也くんのアベルが “まさにその感じ”というか、メラメラと常に燃えたぎっていて。ここからどんどん上がっていくと思うけど、現段階でこれだけかっこいいアベルがいるから……これはやばいです。
優也:役者をやりながらアーティストとしても活躍している洸平くんはどういう感じでミュージカル曲を歌うんだろうっていうのは、ちょっと興味があったんですよ。
本作はシアターオーブでやる大きなミュージカル作品ですが、そういった作品だととりあえず色々動いてみたり、大きくやってみたりしながら作っていくこともあると思うんです。でも洸平くんって、もうそこ(舞台上)だけで成立しちゃうお芝居をまず完成されているのがすごいなと。本当にお芝居をとらえている人じゃないと多分表現できないと思う。それは映像でもこれだけご活躍されているからこそなのかなっていうのは強く思いました。稽古場で近いところから見ていても、そこにもう答えがある感じがして。すごいなと思うし、純粋に楽しんでいます。
■2人がつかみたい“ジャパニーズドリーム” 俳優としての未来も見据え
――ケインとアベルは、それぞれ違う方向からアメリカンドリームを追い求めていきます。お2人にとって、今つかみたい“ジャパニーズドリーム” は何でしょうか?
洸平:えー、なんだろう。
優也:聞きたいですね。洸平くんのジャパニーズドリーム、なんかすでにつかんでそうな感じですけど。
洸平:何かを大きく変えてやろうとか全くなくて。ただ、今の自分にできることを一歩一歩積み重ねていきたいという気持ちが強いんです。僕の夢というか、常に考えてるのは、楽しく仕事すること。「明日が待ち遠しいな、早く稽古したいな」と思うことは多いわけではないけど、それでも、稽古に向かう気持ちにはワクワク感があるんです。ただ、同時に「明日は大変だな……」って思うこともありますが、それがまた楽しくて、そうやって少しずつ作り上げていく過程が大好き。いつまでもものづくりに携わっていたいし、大変な思いしながらもみんなと一致団結してものを作って、それを持って劇場に行ってたくさんの人に見てもらって、最後に拍手をいただいて……その瞬間は、やってて良かったなと思えるんで。
苦しいことをたくさん受け入れて、それを最終的に楽しいもの、幸せなものに変えていくっていうのが僕たちの仕事だと思う。それをずっとやり続けていたいなというのが僕の生涯の夢。それこそが僕の幸せなので。だから今回もほんとに幸せ。
――優也さんの夢はいかがですか?
優也:『ケインとアベル』は(親から子への)“継承の話”。自分もいろんな人から影響を受けて、憧れて、夢を持って今この仕事をしているから、自分も誰かにとってのその存在になれるようになりたいなっていうのがすごくあります。自分が今やっていることは、この後ろに誰かが続くためのものだと思っているから、戦う日もあります。自分が今ここで折れてしまうということは、後ろにこれからついてくる人たちも折れなきゃいけないかもしれない。そう思うと、折れられない時もあるなって。かっこよく俺はいたいと思うし、こういう人がいるならこの世界もありだなって思う人たちがいずれ出てきたらいいなって思う。ただ、俺も楽しくやりたいとは思うから……稽古に毎日来るのは俺は結構好きですけどね。
洸平:あ、本当?
優也:うん。俺は家に帰って「じゃあ明日これやってみよう」と思うと、早くそれをやりたくなっちゃって。
洸平:うわあ、かっこいいぜ……!
優也:いや、ほんとに(笑)。
洸平:でも本当にそう。こんなにずっと練習してる人はいないですよ。自分の出番終わったら席に戻ってずーっとご飯も食べずに(練習している)。だからこその松下優也なんだなってのはもうこの1週間にめちゃくちゃ感じてます。だから上手いんだと。
優也:いやいやいや。
■主戦場を定めない2人、『ケイン&アベル』で魅せたい“幅”
――お2人はいわゆる「ミュージカル俳優」ではなく、映像やアーティスト活動など幅広く活躍しています。そんな2人で名作を世界で初めてミュージカル化する本作。稽古前には「ワクワク!」と話していましたが、稽古が始まってその心境には変化がありましたか?
洸平:振り付けや演出、ステージングは、ブロードウェイで活躍されているスタッフの方々が作ってくださっているので、まず面白いのは間違いないんですよ。その時点で見に来てくれる方々にミュージカルだからできる壮大なものはお届けできると確信していて。そこからさらに細かいところは、ミュージカルだからというところにあまりこだわらずに、単純に演劇で勝負できるものだと思っています。
優也:めっちゃ会話。この会話こそ歌にせえへんの?って(笑)。
洸平:そうそう、本当にそういうのが面白くて。そこで見せられるものもあるっていうのは、やっぱりこの作品の面白いところだし、我々に課されている部分ではあると思う。ミュージカルとしての素晴らしさと、演劇としての素晴らしさ、エンターテイメントショーとしての素晴らしさ、3つが入っている。あとはもう僕たちがそれをどれだけ1個1個大きくしていけるかが、本当にこの作品が成功する鍵なんじゃないかな。
優也:今洸平くんが言ってくれたように、ストレートプレイかなと思うぐらい会話劇みたいなところと、ショーとしてショーアップされた部分っていうのが両方混在していて、それって結構珍しいんじゃないかな。自分はアーティストとして音楽活動もしてきて、役者としてはここ数年、あんまりフィールドを限定して活動してきてなかったんです。いろいろ繋がってきて、今の自分があるって感じ。洸平くんも同じで、2足、3足のわらじみたいな活動をしてきたからこそ、よりこのミュージカルで幅を見せられるんじゃないかなっていうのは思いますね。
(取材・文:小島萌寧 写真:上野留加)
ミュージカル『ケイン&アベル』は、東京・東急シアターオーブにて1月22日~2月16日、大阪・新歌舞伎座にて2月23日~3月2日上演。