劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が8月1日に公開。ERカーで事故や災害現場に駆け付け、懸命に命を救おうとする医療チームMERの奮闘を描く本シリーズの劇場版最新作の舞台は、沖縄と鹿児島にまたがる南の海。

離島を襲う大規模医療事案を前に、MERは“死者ゼロ”を守ることができるのか? そんな本作で新チーム「南海MER」チーフ候補の医師・牧志秀実役を江口洋介、看護師・ME・操舵士・機関士の常盤拓役を高杉真宙が演じる。シリーズに初参加した2人が撮影を振り返り、今作の見どころ、自身の日頃の“ミッション”について語ってくれた。

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■これまでの医療ドラマとは異なる見せ方がユニフォームにも! 江口洋介「全員がカッコよくバシッと着る気持ちよさ」

――今作は『TOKYO MER』のシリーズの劇場版第2弾となりますが、作品の印象はいかがでしたか?

江口洋介(以下、江口):医療ドラマだと思って見たんですが、僕が出演した『救命病棟24時』シリーズ(1999~2013年/フジテレビ)や『白い巨塔』(2003~2004年/フジテレビ)のような作品とは全く違って、(消防署の)救命隊や、戦隊もののヒーローのような存在感もあって、「これが今、求められている医療ドラマ」なのかなと思いました。非常にスケールが大きい作品だなと感じました。

高杉真宙(以下、高杉):江口さんがおっしゃったように、僕も「MERは救命隊に近いものがあるな」と思っていました。そのなかで(鈴木)亮平さん演じる喜多見先生がヒーローのように人々を救っていくことは、医療従事者の方々の大変さも理解してはいますが、きっと求められている姿なんだなと感じましたし、人々からの感謝を感じられる作品だなと思いました。

――今作では「南海MER」の奮闘が描かれますが、脚本を読まれて、物語やご自身の役どころについてどう感じましたか?

江口:南海MERはチーフ不在で、船上で暮らしながら、狭い船の中で何かが起こるのをずっと待っていて、仕事がないという大変さを感じているチームなんです(苦笑)。今まで活躍してきたMERとは、ちょっと違うんですよね。僕が演じる牧志は、南海MERチーフ候補ですがちょっと頼りなくて、「本当にこの人に任せて大丈夫なのか」と他のメンバーに思われているんです。なので、かなり情けなく演じさせてもらいました(笑)。牧志は能天気に見えるんですけど、平和が一番だと思っている人物なんです。そんな牧志を含めTOKYO MERとの出会いや自然災害をきっかけに、南海MERの変化やそれぞれの意思が出てくる姿が描けるといいなと思いました。


高杉:南海MERは、もともとさまざまな地域のMERの実績がある中で作られた組織で、僕が演じる常盤はこれまでのMERのようなヒーローに憧れているキャラクターなんです。ヒーローになりたいと思っていたけれど、人を助けることを目的に動くことで常盤やチームの成長につながっていったり、牧志先生の誰も怪我しない状況が一番だということもわかるようになって牧志先生に対する見方も変わっていたり…そうした変化が描かれていくのが面白いなと思いました。

江口:牧志はチーフ“風”かな(笑)。

高杉:いやいや、牧志先生の志はやっぱりチーフでしたよ(笑)。

――(笑)。実際、南海MERのピンクのユニフォームやERカー、専用の船をご覧になっていかがでしたか?

江口:スタッフの皆さんもすごく力が入っていて、衣装もチームのカラーも「今回これでいきたいんです!」という感じだったんです。ユニフォームはハイビスカスのような南国のイメージと、今までのMERの流れもあってピンクだったんですけど、最初は「ピンク?」と驚きました。でも、最後には全然気にせず着ていましたね(笑)。

高杉:僕もピンクのユニフォームってどうなるのかなと思いました。これまで医療ドラマは白や水色の爽やかなイメージが強かったので…。でも、やっていくうちになじんでいって違和感なく着ていました。かわいいんですよ。
(医療用)スクラブの後ろにハイビスカスの花もあって、すごくこだわって作ってらっしゃるのも感じられました。

江口:そうだね。それを踏まえてERカーを見ると「だからピンクなのか!」と思うしね。

高杉:はい。森が多い南海MERの管轄区域でも目立ちますしね。

江口:自然の中で映えるよね。船もちゃんとペイントしてあるんです。それとユニフォームは、着崩しちゃいけないということを徹底していました。これまで僕が出演した作品では、白衣の袖をまくるキャラクターがいたり、前を開けて着ている人がいたり…と、バラバラの着こなしで一人ひとりの個性が立つようにやってきたんですけど、この作品では全員がカッコよくバシッとユニフォームを着る気持ちよさに、観ている方も感化されるのかなと感じました。

高杉:そろっているカッコよさみたいな…。

江口:うん。それが「このチームの一員になりたい」という憧れの気持ちをふくらませるんじゃないかな。


■沖縄ロケを振り返る! 高杉真宙は現地の食事であるものに全BET?

――今作では、鈴木亮平さん演じるTOKYO MERのチーフドクター・喜多見幸太と菜々緒さん演じる看護師の蔵前夏梅が出向して南海MERの物語が描かれますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

江口:毎日朝から晩まで一緒にいるので、みんなでいてもそれぞれが一人の時間を作って楽に、気を使わず過ごすことがどんどんできていったので、そのいい雰囲気が芝居にも影響していたんじゃないかな。そういう雰囲気は、地方ロケならではかも。

高杉:そうですね。みんなそれぞれで楽しく過ごし、時にワイワイしたり…そうしたいい距離感でできたのも、地方ロケだからこそだと思います。

――作品的には過酷な撮影も多かったと思うのですが、印象深いことはありますか?

高杉:僕はスコールが印象に残っていますね。

江口:撮影の終盤とかね。「今日撮んなくちゃ!」みたいな時に、天気が…。南の島なんだから、通り雨みたいなのが結構あるんですよね。ラストのすごく大事なシーン大変だった印象はありますね。

――自然に左右されながらの撮影だったんですね。

江口:それで言うと、船のシーンはもう一度撮るのに船を沖までUターンさせる時間が必要だったので、船のシーンは毎回「絶対これでOK出すぞ!」みたいな気持ちだったのが印象に残っています。

高杉:ハハハ、確かにそうですね(笑)。


江口:一回一回、結構な時間がかかってたよね(笑)。

高杉:いつ戻れるか、分からなかったですよね(笑)。

江口:「あー、今、失敗しちゃった…。何分後かな、次のカット」みたいな気持ちになるんです(苦笑)。船のシーンでは、「この一回で成功させよう」という緊張感がありました。

――そんな船での撮影は、所作も含め、役の準備が大変だったのでは?

江口:今回の舞台が非日常的な場所なので、撮影現場に行くと役に入り込めるような感じでしたね。逆に淡々とした日常の方が難しかったです(苦笑)。

高杉:僕もそんな感じでした。撮影環境がスタジオとは全く違うので、その環境に立ってみないと分からないことも多かったなという印象がありました。台本を読んでいるだけだと状況がつかめないことも多くて、現場に行ったら全然違うイメージというのもありましたし…。そういう意味では裏切られたことも多かったですし、だからこそ出来上がったものもたくさんあったなという印象です。唯一、心配だなと思ったのは、船の操縦シーン。
やったことがなかったですし、想像もつきにくかったので、現場で船長さんに聞いたり、動画を撮らせてもらってそれを見たりして演じました。

――日常のシーンでは、牧志先生が釣りをする場面も。江口さんはプライベートでも釣りもされるとうかがいましたが…。

江口:実は、もう何年も釣りもやってなかったんですよ。でも、台本に書かれていたので、僕も釣り道具持参で(ロケ地の)沖縄に行きました。せっかく沖縄に行くし、長い滞在になるので、何か釣れるかなと思って釣り道具店にも行ったんです。「どんな魚がいるの?」なんて話をして、ルアーを用意もしました(笑)。

高杉:ハハハ(笑)。

江口:久しぶりに釣りをやって、懐かしさも感じながら、“牧志”感を味わうことができましたね(笑)。

――そんな牧志先生が現地の方々と触れ合うシーンもありましたが、長期の沖縄ロケは楽しめましたか?

江口:現地の方が本当にいい雰囲気を作ってくれているので入りやすかったです。食べ物もおいしいし、いろいろなお店に行っても、心地よく過ごすことができました。

高杉:僕はほとんど、ホテルと現地のタコライス店の往復でしたね。


江口:僕も一回行ったけど、おいしいよね? 毎日行ってたの?

高杉:はい。ほぼ毎日、お昼までの撮影が終わったらタコライス食べて、夜もタコライスを買って食べていました。おいしいところを見つけちゃったんで、食事は全BETしてました(笑)。

■今作は「何回もハラハラドキドキさせてくれる」「驚かされることが多い」作品に 2人の小さな日常の“ミッション”も紹介

――完成した今作をご覧になっていかがでしたか?

江口:本当に台本を何倍も超えるぐらい、予想以上にエンターテインメントしていたし、何回もハラハラドキドキさせてくれました。大災害を描いてはいますが、映画として年齢を問わず楽しめて、観た後に心も温かくなる作品でした。楽しい映画になったなって思いましたね。実際の医療従事者の方々の現実とオーバーラップしてくるところがあって気持ちも伝わってくるし、優しい気持ちにもなれるんじゃないかなと思いました。

高杉:台本で読んでストーリーは分かっているんですけど、それでも驚かされることが多かったですね。自分たちがやっていたものが、完成した作品を観て、こんなふうに出来上がったんだという驚きや迫力がありました。江口さんがおっしゃったように、医療従事者の方々への感謝や尊敬の念を、改めて感じさせてくれる作品だなと思いました。

――そうした想像を超えるスケール感あふれる映像とともに、さまざまな感情をもたらしてくれる作品に仕上がった『南海ミッション』。このタイトルにちなんで、日頃からやっている小さなミッションを教えてください。

高杉:僕は「寝落ちしない」ことです。

江口:寝落ちしない? すぐ眠くなるってこと?

高杉:はい。僕、撮影が終わって家に帰ってきた時に眠くなって、やらなきゃいけない家のことをやらずに寝ちゃうこともあるんですよ。そのままソファーで寝っちゃって…。

江口:一人暮らしならではの醍醐味じゃん(笑)。

高杉:ハハハ(笑)。一時期は、1年で10回満たないぐらいしかベッドで寝ないことがあったんですよ。それが体に悪いなって思って(苦笑)。

江口:そりゃ、そうだよね(苦笑)。

高杉:だから、それを止めたいと思ったんです。今は、ちゃんと人らしい生活をすることを心がけています(笑)。一人暮らしは自由でいいけど、自由すぎるからこそ甘えちゃうんですよね。「寝落ちをしない」ことを心掛けて、ここ3年くらいはしなくなりました(笑)。

江口:なるほどね。僕も寝落ちってことでいうと…(笑)。

高杉:ハハハ(笑)。

江口:「昼間に眠くなったら15分寝て、長くは寝ない」ようにしてる。寝すぎてもダメだし、ちょっと整うぐらい寝るのがいいんだよね。撮影の最中も15分ぐらい寝て行くと、次のカットからフレッシュな気持ちで臨めるしね。

高杉:寝すぎないのがいいんですね。

江口:そうだね。ミッションかどうか分からないけど、寝落ちで言ったら「昼寝は15分」かな(笑)。

(取材・文:齊藤恵 写真:松林満美)

 劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』は、8月1日公開。

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