吉岡里帆と水上恒司がダブル主演する映画『九龍ジェネリックロマンス』が、8月29日に公開。TVアニメ化もされた眉月じゅんの同名漫画を実写映画化する本作で、吉岡は過去の記憶がない鯨井令子、水上は誰にも明かせない過去をもつ工藤発を演じた。

2人の距離が近づくほど謎は深まっていく“九龍”の街を舞台に過去と現在が交錯するミステリーと、2人の切ない恋模様が描かれる映画版。その魅力と初共演となったお互いの印象、そして美しくも妖しい“九龍”を生み出した真夏の台湾ロケの様子を2人が明かしてくれた。

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■吉岡が髪をバッサリ切ってビジュアルから令子に! 水上演じる工藤に太鼓判

――原作漫画を読まれて惹かれた部分は?

吉岡:原作はまだ完結していなくて、ミステリーがより面白くなって謎が深まるばかりという展開なんです。私はサスペンスやミステリーが好きなので、引き込まれました。舞台となる“九龍”にまつわるシーンで、大好きな大友克洋さんの『童夢』という漫画を思い出しましたし、“九龍”という不思議な街で恋愛したり、昔の思い出と葛藤したり…そういうさまにも惹かれました。

水上:僕は原作の説明的ではないところがすごく好きでした。文学性もそうですが、わかりやすく表現するというところがないにも関わらず、多くの人の心に届いていることがどれほどすごいことか…と思って、それを体現している眉月先生が素晴らしいなと思いました。

――そんな魅力あふれる原作の実写映画化となりますが、脚本を読まれてみていかがでしたか?

吉岡:原作の壮大な物語をどうやって2時間の映画にまとめるんだろう、難しいだろうなと思っていたんです。映画では独自のアイデアで原作にはない展開になっていて、「こうまとめるのか!」と脚本を手掛けられた和田清人さんと池田(千尋)監督の手腕を感じました。

水上:池田監督が「本質を捉えるということをどれだけできるか」とおっしゃっていたんですが、それを大事にして劇的に作られている脚本だと思います。眉月先生が試写をご覧になった時に「面白かった」とおっしゃってくださったんです。それが僕ら実写チームとしてクリアすべき課題だったので、原作の本質は捉えることはできたかなと思っています。


――演じるにあたって原作のキャラクターは参考にされましたか?

吉岡:はい。とても参考にしました。鯨井令子のビジュアルは原作ファンの方に納得してもらえるよう、できるだけ漫画に近づけるようにと思って髪の毛も何年ぶりかにばっさり切りました。

水上:原作のキャラクターのすべてを真似しても、実写化では僕らのオリジナルになっていくところはあるとは思うんですけど、キャラクターの本質を捉えて演じるという部分で助けになりました。

――吉岡さんは、今年4月から放送されたTVアニメ版もご覧になったとうかがいましたが、アニメの世界観はどうでしたか?

吉岡:TVアニメ版に「サクセス役」で出演することになって、アニメを拝見したのですが、「そのアプローチかぁ」「こういうふうに表現できたのかぁ」と、いろいろ感じるところはありました。ただ、実写版は監督が思う“鯨井令子”にアプローチをしていったので、映画は映画として観てもらえたらいいなと思います。

――今回初めて共演されてみて、お互いの演技から感じたことは?

吉岡:水上くんは原作から飛び出してきたかのような雰囲気をまとってらっしゃって驚きました。アニメを観て余計そう感じたんです。特に工藤が話す時の“溜め”の作り方や、クセみたいなところで、(TVアニメ版の工藤役)杉田(智和)さんと水上くんの解釈が一致していてビックリしました。原作を読んでいる方が想像する“工藤”を体現されているんですよ。

水上:ありがたいかぎりです(照)。普段は低い声なので、工藤を演じる時に高い声を出すことはこだわりました。
吉岡さんの演技で印象深いのは、序盤に屋上で工藤が令子に対して思わぬことを言い出すシーン。結構な“間”を要して撮影したんですけど、その時の吉岡さんの表情が忘れられないです。令子のいろいろな感情がぐるぐるしているのが分かったんですよ。時間の長さや風の強さを感じていたり、工藤が令子に近づいてドキドキしていたり…表情がさほど変わっていなくても伝わってきました。

■真夏の台湾ロケを振り返る! 吉岡をトリコにしたグルメ、水上も驚いた現地の撮影とは?

――本作の舞台となる、かつて香港に存在した九龍城砦を再現するため、今なお狭く雑多な路地裏など古い街並みを残す台湾で撮影されたそうですね。今回、真夏の台湾での撮影はいかがでしたか?

吉岡:漫画の登場人物たちが常に汗をかいてジメジメしていて…でもそれがどこか色っぽいなと感じていましたが、台湾で撮影したことでその雰囲気を再現できたと思います。1カット1カットが、台湾の暑さと光によって作られているので、台湾で撮影できて良かったなと。それと、台湾のスタッフの皆さんはオンオフのメリハリが素晴らしかったです。「食事の時間はしっかりとって、おいしいご飯食べる」という意識があって、温かくておいしいご飯を毎食7~8種類用意してくださったんです。現場の士気もすごく高まりました。我々を応援してくれるような空気感の中で撮影できたことも良い思い出です。

水上:「蛇沼製薬」宣伝スタッフ役の関口メンディーさんが派手に暴れているシーンがあるんですが、その撮影のためだけに台湾に来てくださったのが印象に残っています(笑)。
そのシーンでは、現地の実際の住居で朝7時ぐらいから撮影をして、どんちゃん騒ぎをしているというシーンだったんです。本番中に音の振動で建物が揺れるぐらいの騒ぎでした。でも、そこに住んでいる方々がニコニコしながら撮影を見てくれてるんです。それは大変ありがたかったですね。もちろん申し訳ない気持ちもあるんですけど、その気持ちをも超える人の温かさを感じました。そうした現地の方々のおかげで、この作品が成り立ってるんだなと思いました。撮影も、エキストラの方ではなく、ただそこに座っている現地の方がいてもカメラを回すんですよ。

――そうなんですか?(驚)

水上:「いいんですか?(驚)」とスタッフさんに聞いたら、「いい、いい!」と言ってカメラを回して…。そのノリに便乗して、僕も「おう、おばちゃん!」とか言って現地の方に話しかけたら、その方が芝居をしてくださるんです。芝居をするつもりがあるのか、ないのか分からないんですけど(笑)、あの撮影はなかなか日本ではできない撮影の仕方だと思うので、ありがたかったです。

――そんな撮影の合間に、台湾の街は楽しまれましたか?

吉岡:みんなで居酒屋に行きましたよね。

水上:行きましたね。


吉岡:屋台の居酒屋でカエルのスープが出てきたのは、結構チャレンジングな出来事でした(笑)。それと、海苔にサラダを巻いて食べる料理が好きでした。

水上:カリフォルニアロール的な料理ですよね。

吉岡:そうそう(笑)。居酒屋のゆる~い感じも居心地がよかったです。そういえば、隣の席に座っていたグループが何度も乾杯をしにきてくれたんです。乾杯を促されたら飲まなきゃいけないという台湾のルールがあるようで、すごくニコニコしながら何回も乾杯しました(笑)。

――現地の食事で特においしかったものは?

吉岡:地元の方々におすすめの料理店を教えていただいたのですが、一番思い出深いのは酸っぱい白菜の鍋です。発酵した白菜を大量に入れるのですが、本当においしくて何度も食べに行きました。

――ちなみに、日本から持参したものはありましたか?

水上:ハンディ扇風機なんですが…全く通用しないぐらい暑かったです(笑)。風を送っても熱風が来るだけだったので、諦めるしかなかったです(笑)。

吉岡:(笑)。
私はフリーズドライのお味噌汁は持っていきました。

水上:何対策ですか?

吉岡:日本が恋しくなっちゃった時の対策です(笑)。

――(笑)。そんな濃い台湾ロケを経て完成した映画版がいよいよ公開に。原作やアニメを観ている方も楽しめるポイントを教えてください。

水上:実写ならではの“生々しさ”ですね。そこを武器にしたいですし、それが映画版の魅力なんじゃないかなと思います。

吉岡:映画版は、一瞬のトキメキとか、「理屈じゃなくて好きなんだよなぁ」という気持ちを感じられる作品になっています。疾走感や、恋が止まらない感じ、気持ちがあふれ出るような瞬間の描写は、映画版のポイントだと思います。

(取材・文:齊藤恵 写真:高野広美)

 映画『九龍ジェネリックロマンス』は、8月29日より全国公開。

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