島崎遥香が主演し、ISSEIが共演するドラマ『もしも世界に「レンアイ」がなかったら』(CBCテレビ/毎週木曜24時58分)。本作の主人公・乙葉(島崎)たちが生きる世界は、恋愛がない世界。
【写真】第3話ではついに乙葉とハレが気持ちを伝える覚悟を!
◆偽りのない自分を認めてくれる人たちとの関係性
本作は、21年に恋愛ウェブメディア「AM(アム)」で連載されると、“恋愛することが普通じゃない”という独自の世界観で描かれる物語が話題を呼んだ同名コミックを実写ドラマ化。恋愛がない世界で特定の人を好きになる「レンアイ」を自覚し、葛藤する主人公・乙葉を島崎、同じく“レンアイ”でありながら、乙葉とは違い恋愛感情を隠しながら生きるハレをISSEIが演じる。
乙葉が暮らす世界には“恋愛”がない。男も女も相手を決めずお互いを縛らず、誰とでも自由にセックスするのが普通。子どももみんなで協力し育て合い、嫉妬することもなく平和に暮らしており、実際に乙葉もシェアハウスで生活をしている。しかし乙葉は、シェアハウスのメンバーには決して言えない悩みがあった。それは、先輩である太一(中山優馬)への思いだ。乙葉は特定の人を好きになる少数派の人間「レンアイ」であり、太一に恋心を抱いていた。
乙葉たちが生きる世界で「レンアイ」は、厄介者扱いされている。作中のドラマでは、「レンアイ」は独占欲が強く好きな人につきまとう存在として描かれ、異質な存在。
マイノリティを生きる乙葉がシェアハウスで抱えていた居心地の悪さは、そのメンバーと一緒にいるときの乙葉の表情からも窺える。リビングにシェアハウスのメンバーが集まっている中で、すぐに自室に戻ってしまう乙葉の表情は、どこかビクビクしていた。「レンアイ」は異質なものとして認識されている世界。いくら一緒に生活している相手でも、“本当の自分”を打ち明けるのは怖くて勇気が必要なものだ。そんな息苦しい生活の中で乙葉が出会った同志たち。ハレたちと一緒にいるときの乙葉の表情は明るく、心底ホッとしているように見える。
乙葉が抱えている悩みは、誰かに打ち明けたからといってすぐに解決できることではなく、最終的な答えは自分自身で出すものだ。しかし、胸の内をさらけ出せる相手がいることや、そのままの自分を認めてくれる相手がいることで人は少し救われる。シェアハウスのメンバーの前で見せる頼りなく不安そうな表情と、ハレたちの前で見せるリラックスした表情。
◆本当の自分を偽りながら好きな人と関係を持つもどかしさ
第2話では、乙葉は太一に誘われて一夜を共にする。その後も二人はデートをするなどして関係性を深め、乙葉は太一への想いを募らせていった。レンアイ仲間でもあるナギはそんな乙葉を心配して「これ以上踏み込んだら、傷つくのは乙ちゃんだよ」と忠告するが、乙葉は「幸せだから水を差さないでほしい」とそれを突っぱねる。ナギに言われなくても、乙葉はわかっていたし悩んでいた。太一は自分とは違う。太一のことを特別だと思っているのは自分だけ。わかっていても止められないまっすぐな感情と、踏み込んではいけないという感情の揺れが切ない場面だ。
そんな中で、乙葉が太一と自分の違いを決定的に感じる出来事があった。太一は、乙葉の幼なじみの葵(山谷花純)とも関係を持っていたのだ。乙葉が生きる世界では普通のことで、葵は特に重要なこととも思わずに乙葉にそのことを打ち明けるが、乙葉は思わず泣き出してしまう。そこに偶然通りがかったハレが「乙ちゃん、今日うちに泊まりに来る約束してるんだ」と優しい嘘をついて乙葉をその場から連れ出したところで第2話の幕は閉じた。
心の中でわかっていたとしても、それを目の前に突きつけられると一瞬で心が崩れてしまう脆さを、島崎は瞳にたっぷり涙を溜めて肩を震わせ大号泣するという演技で見せていた。どこか自信がなさそうで、いつも迷いながら進んでいる乙葉の弱さは、島崎の透明感や儚さとマッチしている。しかし乙葉は「自分の気持ちに正直に生きたい」という強さも持っており、これも島崎の内面からにじみ出る芯の強さに重なった。第2話では「好きな人と一緒にいたい。だけど苦しい」という、希望と苦しさの間で揺れるもどかしさが丁寧に描かれていた。
◆ハレたちと深めていく信頼関係
第3話の予告では、泣き崩れる乙葉をハレが自宅へ迎え入れる場面が描かれていた。ハレは、カフェのオーナーの紘香に片思いをしている。ハレも紘香も同じ「レンアイ」ではあるが、紘香にはすでに遠距離中のパートナーがいた。同じマイノリティで生きているとしても、その思いが叶うかどうかはまた別の話だ。ハレも切ない気持ちを胸に抱えており、「叶わない想い」を抱えるという面では乙葉と同じ。ナギの内面はまだあまり描かれていないが、乙葉とハレは同じような気持ちを抱える相手として近い存在にいる。この二人の関係性がどう深まっていくかにも注目したい。
架空の世界でマイノリティに生きる人たちを描いている本作。「自分らしく生きる」「自分の気持ちに嘘をつかない」、言葉で書くと簡単だが、それは実はとても難しいことだ。マジョリティもマイノリティも関係なく、素の自分をさらけだす怖さはきっと誰しもが持っている。自分の居場所を探す乙葉が抱える苦悩や葛藤は、現代社会を生きる私たちにも置き換えることができる。この作品は、自分らしく生きる勇気や、自分の気持ちと向き合う強さを考え直すきっかけになるはずだ。これから乙葉たちが自分の揺れや悩みにどう向き合っていくのか、そして周りはどう行動するのか。最後まで見守っていきたい。
ドラマ『もしも世界に「レンアイ」がなかったら』は、CBCテレビにて毎週木曜24時58分放送。チューリップテレビにて毎週金曜25時53分放送。HBC北海道放送にて8月25日より毎週月曜25時34分放送。TTVerでも配信。