連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合ほか/毎週月曜~土曜8時)で朝ドラ初出演を果たした妻夫木聡。戦時中、嵩(北村匠海)が所属していた小倉連隊の上等兵・八木信之介を演じる妻夫木からコメントが到着。
【写真】のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の人生に大きな影響を与えていく八木信之介(妻夫木聡)
■嵩を陰で支える八木の姿勢に、僕も共感できました
妻夫木が演じる八木信之介は、戦時中、嵩(北村匠海)が所属していた小倉連隊の上等兵。軍隊になじめない嵩を気にかけ、折にふれ助け舟を出していた。戦後、闇市で闇酒を売りながら、戦災孤児たちに食べ物を与えたり本を読んであげたりしていたところで嵩と再会。その後、「九州コットンセンター」を設立し、のぶと嵩の人生に大きな影響を与えていく。
――連続テレビ小説初出演となりますね。今回、『あんぱん』の出演が決まったときの経緯とお気持ちを教えてください。
妻夫木:昔、ラジオドラマでご一緒したチーフ・プロデューサーの倉崎さんとロサンゼルスで久々に再会し、『あんぱん』に出てほしいというオファーをいただきました。朝ドラに出ることは俳優としての目標だったので、すごくうれしかったですね。いざ台本があがって、八木のキャラクターと対峙したときに、一見厳しく見えるけれど、すごく冷静に嵩の才能や人間性を見つめていて。嵩を陰で支える八木の姿勢に、僕も共感できましたし、これならば最後まで皆さんと共に戦い抜けるという確信が持てました。物語としても、人々に希望を与えるお話だと思いますし、そんな作品に携わることができて、本当に幸せです。
――妻夫木さんが思う、八木の人物像を教えてください。
妻夫木:静かに本質を見極められる人ですね。生きていると雑念だらけですが、その中で無駄を省いて、あるべきものだけと向き合おうとしている。そのストイックさと繊細さが、僕はすごく好きです。彼が向き合っている世界は孤独だけれども、どこか憧れる部分があります。きっと、彼は彼なりに「生きるって何だろう」というのを、ずっと自問自答していて。嵩とはまた違ったやり方で、彼なりの答えを見つけようとしているのではないでしょうか。その答えを探す中で、“だれかが喜んでくれることが自分の喜び”という思いに至ったんじゃないかな、と想像しています。
――八木は戦時中、嵩が所属した小倉連隊の上等兵として、第10週から登場しました。戦争シーンで感じたことを教えてください。
妻夫木:「弱い者が戦場で生き残るには、ひきょう者になることだ」という八木のセリフもありましたが、やっぱり生きていることが全てなんじゃないかと思うんです。どんなに無様でもいい。
■妻夫木聡の生徒役だった北村匠海との再共演は「本当に感慨深い」
――その後、第16週で嵩と再会を果たしました。八木は嵩をどのように見ていると思いますか? 演じる北村さんの印象も教えてください。
妻夫木:八木はあまのじゃくなので、素直に感情を表現できない人間ですが(笑)、再会できてやっぱりうれしかったと思います。何よりもうれしかったのは、嵩が変わっていなかったこと。おっちょこちょいなところも含めて、彼のずっと持っているピュアさというのは魅力的ですし、八木にはないものを持っていることが、少し羨ましくもありますね。僕は、嵩って意外と周りの人をどんどん輝かせていく人物だと感じていて。こういうピュアな人間が、世の中を明るくしていくんじゃないかなと思います。
匠海は、いつもフラットで、力が抜けていて、僕は彼のたたずまいが大好きですね。役をどう演じるかということではなく、もう嵩としてそこに存在しようとしている。そんな匠海のお芝居がすばらしいなと思いますし、自然に引き込まれて感動する場面がたくさんあります。昔、『ブタがいた教室』という映画で共演したときは、僕が教師役で、匠海は生徒役。当時、匠海は小学校4年生でした。僕は次に彼とお芝居をするときには、彼の演じる役を支えるような役がいいなと思っていたので、今回その願いが形になって、本当に感慨深いです。静かだけれども、心には熱いものを持っている。そんな彼の魅力が、今回の役に反映されていて、僕もすごくうれしいですね。
――第21週では、八木が戦争で家族を亡くした過去が明かされました。
妻夫木:もともと演出の方から、そういった背景は聞いていました。八木は、大事な家族を失ったからこそ、目の前にある命の尊さを感じていて。少しでも支えになれるのであれば、自分はいくらでも犠牲になろう。
連続テレビ小説『あんぱん』は、NHK総合にて毎週月曜~土曜8時放送。