今年2月、8人体制となり新たなスタートを切ったtimelesz。グループを牽引する顔ともいうべき佐藤勝利は、ここ数年舞台作品への挑戦に意欲的だ。

この秋は、『ブロードウェイ・バウンド』で主演を務める。新たな環境に身を置き、日々進化の止まらない佐藤に、本作に懸ける思いを聞いた。

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◆心配性で臆病な主人公に共感

 本作は『おかしな二人』や『グッバイガール』で知られる伝説のコメディ作家、ニール・サイモンの自伝的作品、“B・B三部作”の完結編。ニール・サイモンをモデルとしたユージンが青年になり、家族への愛情と失望の狭間で揺れ動きながらも夢に向かう姿を描く。

 演出は、第25回読売演劇大賞優秀演出家賞などを受賞した小山ゆうな。主演の佐藤とは、4年前に上演された“B・B三部作”の第1作『ブライトン・ビーチ回顧録』に続いての顔合わせとなる。キャストには前作から松下由樹、神保悟志、入野自由が続投するほか、新たに浅野和之、小島聖が参戦する。

――本作上演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

佐藤:4年前に『ブライトン・ビーチ回顧録』をやらせてもらった時に三部作であることは知っていましたし、神保さんも「(B・B三部作を)ライフワークにしたらいいんじゃない?」と言ってくださったりしていたんです。でも、三部作とは言ってもなかなかすべての上演がかなうとはかぎらないですし、僕としては初めてのストレートプレイの作品で、やりきることで精いっぱいでした。いつか続きを同じチームでやれたらと頭のどこかで思ってはいましたし、夢ではありました。4年越しにはなりますが今回こうして叶ってうれしいです。

――『ブライトン・ビーチ回顧録』では14歳のユージンを演じられて、今回は23歳になったユージンを演じられます。


佐藤:前回は役の年齢的なことも大きいと思うのですが、子どもならではの勢いやフレッシュさ、動きのコミカルさがあり、スピードやコメディ感で押し切れたところもありました。舞台上に生き生きといることが求められていたことだったんですね。

今回は大人になって、せりふに使われているワードも変わり、子どもっぽくは演じられないので、普通の会話で笑いが起きるように演じられたらいいなと思っています。

コミカルな部分でいうと自由くんとの掛け合いが多いのですが、4年ぶりですけどずっと家族で話している感じにすぐに戻れたような感覚もあったので、そこはあまり心配ないかなと感じています。

――ユージンに共感する点はどんなところでしょう?

佐藤:ユージンは心配性なところや臆病なところがあって。「本当に自分に書けるんだろうか?」「これは面白いのかな?」と疑っている目線もあるんですね。僕自身も臆病なところがあるので共感します。背中を押されないとやらない感じも(笑)。

あと僕はコントユニットを作ったのですが、ちっちゃいころからお笑いが好きなんです。小学生の時に、変なコントを書いたこともあるんですよ。なので、面白いものを書ける人のことをリスペクトしていますし、憧れもあります。

◆コンスタントに舞台に挑戦する中で得た気づき

――小山さん、松下さん、神保さん、入野さんと前回に続いての顔ぶれが揃いました。
前作での思い出は何かありますか?


佐藤:小山さんからは「こうしてください」っていう指示があまりないんです。「これ、どっちですかね?」と聞いたりするんですけど、「どっちもあるよね」「どっちもいいよね」という感じで。演じる僕の心がどう動くかというのを大事にしてくださる方なんですよね。楽しさもたくさん教わりましたし、初めてのストレートプレイ作品の演出が小山さんで本当によかったなって思いました。

前回の『ブライトン・ビーチ回顧録』では、共演の皆さんとは、コロナ禍の上演だったので食事にも行けずでした。でも自由くんとは、ここだけの話なんですけど、距離を保てるから2人で京都を自転車で周った思い出があります。道に迷ってお互いのせいにしたり(笑)、走りながらミュージカルの歌を一緒に歌ったり、いろいろ思い出がありますね。

今回はご飯も行けるし、打ち上げもできるし、稽古中もマスクをせずに顔を見て話せる。4年前に初共演させてもらっていますけど、オフの部分でご一緒できるのは初めてになるのでそこもまた楽しみです。今回京都には行かないですけど、みんなで自転車に乗るかもしれません(笑)。

――舞台単独初主演で初ストレートプレイとなった前作の後、『Endless SHOCK』『ハロルドとモード』『モンスター・コールズ』と、コンスタントに舞台にご出演されている印象があります。

佐藤:もともと舞台は好きでしたし、演劇をやりたいという気持ちはあったんです。
前作を通して演劇の楽しさをより感じるようになりました。

――舞台経験を重ねる中で、ご自身の中に変化はありましたか?

佐藤:一つ一つの作品を経験させてもらう中で得たものはたくさんあるんですけど、サイズが違ういろいろな劇場を経験させてもらったことはよかったと思います。わりと大きいステージから経験させてもらっているというのも大きいかもしれないんですけど、遠くまで届けなきゃいけないという思いがネックになることもあるんだということを学びました。

僕は一番奥の席まで届けなきゃっていう思いが強いんですね。そういうことじゃなくて、「そこにいればいいんだから。表現じゃなくて、存在をしていなさい」っていうのを『モンスター・コールズ』でご一緒した山内圭哉さんに言っていただいて。肝に銘じるようになりましたし、自分が求めていたところにたどり着くためには、そういうことを意識しなきゃいけないんだなっていう気づきにもなったので、レベルアップしてるとかの話ではないんですけど、意識が変わったと思います。

◆グループメンバーや家族との「絆」を感じたエピソード告白

――本作は「家族の絆」や「夢」が描かれた作品ですが、佐藤さんにとって「絆」を感じるエピソードはありますか?

佐藤:知らないと思うんですけど、僕8人組になったんですね(笑)。新しい体制になってライブツアーを行ったのですが、仕事の都合で8人全員そろう公演が最初からあったわけじゃなかったんです。ようやく8人そろった公演で、(橋本)将生っていうメンバーが泣いちゃったりして。将生は、初ステージでは感動はしていましたが泣いてはいないんです。その将生が8人そろった時には泣いていて素敵だなと思いました。
みんなも8人そろった時の喜びを噛みしめてはいたので、これからもっとそういう思い出がたくさんできてくると思うんですけど、2月からなんで半年経ってないくらいでも、もう絆はあるんだなっていうのは実感しました。

将生は僕が泣きそうだったから「それを見て泣いたんですよ」って言うんですけど、僕はもちろん感動はしていましたけど、泣きそうになったわけではないので(笑)。でも素敵な絆はあるんだな、始まったばっかりだけど繋がっているものはあるんだなって思いました。

――「夢」はいかがですか?

佐藤:夢は今あまりないかもしれないですね。グループでの目標が夢ということになると思うんですけど、現状がある種夢がかなった最中でもあると思うので、噛みしめている感じがあると思います。

でもグループを続けるということは簡単なことでないし、普通じゃないし、当たり前のことじゃないので、夢といったらそこになるのかもしれません。

――家族のお話が描かれる本作ですが、佐藤さんはご家族とは頻繁に連絡は取られていますか?

佐藤:兄がニューヨークにいるんです。それでブライトン・ビーチに行ったらしくて、うちの姪っ子は初ビーチがブライトン・ビーチなんですよ。兄も舞台の続編があるとわかっているので「舞台頑張れよ」っていう意味も込めて写真を送ってくれたと思うんです。

勝手な想像でニューヨークのビーチって、そんなにキレイじゃないのかなと思っていたんですけど、結構キレイで! 作品で描かれる当時はもっとキレイで、夏とか楽しかったんだろうなと、今のブライトン・ビーチを知る姪っ子から教わって勉強になりました(笑)。

……この話、本当は初日の会見で言おうと思ってたんですよね。言いたくてこらえられなかったです(笑)。


(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])

 PARCO PRODUCE 2025『ブロードウェイ・バウンド』は、東京・PARCO劇場にて9月4~28日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて10月2~13日上演。

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