新たな仮面ライダーの歴史を刻む『仮面ライダーゼッツ』の放送がスタートした。その主役に抜擢されたのは、若手俳優・今井竜太郎だ。

幼い頃に夢見たヒーローになるという願いを現実のものとした彼が、歴代ライダーへの敬意を胸に、新たなヒーロー像を創り上げる熱意や、作品を通して見据える世界の舞台と、役者としての未来予想図、ゼッツというヒーローの魅力と共に、その熱い思いを語った。

【動画】第1話、自己採点したら何点?歴史を背負う覚悟を語る

■ヒーローになった日。「変身」の言葉に宿る、魂の重み

 大勢のファンの熱気に包まれた制作発表イベント。その壇上で初めて変身ポーズを披露し、ヒーローになった実感を噛み締めたという今井。しかし、彼が“ヒーロー”の重みを最も強く、そして鮮烈に感じたのは、また別の瞬間だったという。

 「大勢の皆さんの前で変身するのは初めてだったので、もちろん緊張はありましたが、皆さんが本当に温かくて、反応もすごく嬉しくて。ああ、ヒーローになったのか、という実感が湧いてきましたね。でも、一番強く実感したのは、撮影現場で初めて変身ベルトをつけて、『変身』と言った時でした。あの瞬間、本当に自分がヒーローになったんだと思えました」。

 幼少期に、『仮面ライダーW』(2009年放送)を見て育ったという今井。憧れの存在であった仮面ライダーの歴史に、今、自分の名を刻もうとしている。その胸に去来するのは、プレッシャーだけではない。
むしろ、それを凌駕するほどの熱い情熱だ。

 「やはり、歴代の方々の思いや姿勢をすごく背負っていると感じています。その上で、新たな『仮面ライダーゼッツ』を創り上げる。だからこそ、どのライダーにも負けないぞという強い、熱い炎を燃やしながら作品に取り組んでいます」。

 今井が変身する仮面ライダーゼッツは、ライダーベルトを胸に巻いて変身するなど、歴代ライダーの中でも異彩を放つ。そのビジュアルや戦い方には、今井自身も大きな魅力を感じている。

 「今までのライダーと違って、ゼッツには華美な装飾がないんです。本当に肉体美で戦うというのが、すごく魅力的だなと。戦い方も、夢がテーマの作品ならではというか、今までのライダーにはないアクションをたくさんしているので、ぜひそこを見ていただきたいです」。

 そして、ゼッツに変身する前の主人公・万津莫には、印象的なチャームポイントがある。ぴょこんと跳ねた、特徴的な寝癖だ。

 「この寝癖は、夢の中でのエージェントの時の莫のアイコンですね。
直そうとしても直らなくて、毎日ついちゃうんです(笑)。自分ではコントロールできない、わがままな寝癖です。落ち込んでいる時もついているし、どんなタイミングでもピンと立っています。寝癖を自分で動かすようなシーンもあるので、『本当に直らないんだな』と思っていただけるんじゃないかなと。キャラクターを愛してもらえるようなポイントとして入れてくれたのかもしれません」。

■仮面ライダーはゴールじゃない。1年後に見据える役者としての未来

 放送は1年にわたる長丁場。この作品を通じて、役者として、一人の人間として、彼はどんな未来予想図を描いているのだろうか。その答えは、彼の真っ直ぐな向上心を映し出していた。

 「僕自身の役者としてのゴールは、仮面ライダーという作品ではありません。この作品で生かされた経験や培った技術を生かしながら、これからの役者人生で自分自身をどんどん成長させられるような1年にできたらいいなと、いつも思っています」。

 その視線は、国内だけでなく世界にも向けられている。
『仮面ライダーゼッツ』は、全世界へほぼ同時に配信される。劇中には英語のセリフもあり、今井にとっては新たな挑戦の連続だ。

 「英語は得意というわけではなくて……(笑)。日本語のセリフでさえ難しいのに、英語で感情を乗せるのはさらに難しいです。毎回、発音のお手本を送ってもらって必死に練習しています。海外の方にも見ていただいて、『あ、頑張っているじゃん』と思ってもらえるような英語を話せたらいいなと思っています。日本が誇るこの歴史あるシリーズを、さらに海外の方にも愛してもらえるように、『ゼッツ』がその始まりの一歩になれたら嬉しいです」。

 ゼッツと深い関係を築くキャラクターを演じるベテラン声優陣からの期待も大きい。ゼッツに指令を与えるゼロの声を担当するのは川平慈英だ。彼からも「頑張ってね」「体調を崩さないように」と温かいエールを送られた。アフレコ現場では、その卓越した技術を目の当たりにし、大きな刺激を受けたという。

 「アフレコを間近で勉強させていただいたのですが、すごかったです。
ご自分でアドリブを入れて、それが採用されていて。ああ、こういうふうに作品って作られていくんだ、と感動しました。いただいたビデオメッセージの最後のセリフも、本当にカッコよくて、司令官だなと思いました」。

 一方、ねむ役の堀口真帆、妹・美浪役の八木美樹ら同世代の共演者たちとは、年齢を気にすることなく切磋琢磨する日々を送る。その中心に立つ主演として、彼は「座長」という立場をどう捉えているのだろうか。

 「現場では、みんなが『いい作品を』という同じ思いの中で、お互いの芝居や役について話し合っているので、本当にいい環境です。僕も、先輩俳優の方々の背中を見て学んだことを、年下の子たちとの芝居で生かせているか、常に意識しています。お芝居で現場を引っ張っていけるようになりたいです。僕自身、たくさん喋るタイプではないので、『頑張るぞ!』と声で鼓舞するよりは、姿勢で見せる方が自分らしいのかなと思っています」。

■満足なき挑戦は、まだ始まったばかり

 いよいよ放送がスタートした『仮面ライダーゼッツ』。第1話を見終えたファンに、改めて見どころを尋ねた。

 「1話は、やはり冒頭のアクションシーンです。
本当に頑張って撮影したところなので、かっこいいなと思ってもらえたら嬉しいです。それから、初めての変身シーン。ゼッツがどう始まったのかという、本当に大事なシーンなので、ぜひ注目していただきたいです」。

 そんな渾身の第1話の出来栄えを、自己採点するなら? と直球の質問に、彼は少し考えた後、力強く答えた。

 「でも、少し時間が経ってから見返すと、『あ、もうちょっとここをこうできたな』という反省点も生まれてくるんです。だからこそ、自分の中でも少しずつ成長できているのかな、と撮影を通じて感じています。満足はしないように、初心を忘れずに頑張っていきたいです」。

 幼い頃、今井の夢は「仮面ライダーWになること」だった。クリスマスには変身ベルトをお願いするほど、その存在に憧れた。時を経て、今度は自身が子供たちの夢を背負う存在となった。彼の熱い魂が、新時代のヒーロー『仮面ライダーゼッツ』を、そして役者・今井竜太郎を、どこまでも高く飛翔させていくことに期待したい。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 『仮面ライダーゼッツ』は、テレビ朝日系にて毎週日曜9時放送。

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