二宮和也が主演し、女優の小松菜奈が出演する映画『8番出口』が大ヒット公開中だ。映画化が発表されたのは昨年12月末。
そこから約8ヵ月経ち、具体的なストーリーも明かされぬまま公開を迎えたが、“8月8日”の1日限定で実施された東京・表参道のイベントには約1800人が駆けつけるなど、封切られる前から高い注目を集めていた。さらに国内のみならず世界からも熱視線を浴びている本作は、今年5月には第78回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションでワールドプレミアを開催したほか、第50回トロント国際映画祭や第58回シッチェス・カタロニア国際映画祭に出品され、配給会社・NEONによる北米配給も決定済みだ。今回クランクイン!は二宮と小松にインタビューを行い、カンヌ訪問の裏側や、「贅沢だった」という撮影裏について聞いた。
【写真】シックな衣装がステキ 二宮和也&小松菜奈撮り下ろしショット(6枚)
■実はドタバタだったカンヌ前
――作品では今回が初共演ですが、バラエティー番組などでは共演されていたと思います。その時からお互いの印象は変わりましたか?
二宮和也(以下、二宮):よく笑う人だなと思っていました。紙媒体で見ている感じだと、もっとスンとしている印象だったので、バラエティー番組で動くバージョン(笑)を見たら、こんなにも笑ってくれるんだっていう印象でした。
小松菜奈(以下、小松):本当ですか? 二宮さんは全然変わらなかったです。
二宮:そうだよね?(笑)
小松:ゆるっとしているところやフラットで物事を見ている印象は、最初にバラエティー番組でお会いした時も今回の現場も一緒でした。
――お二人はカンヌにも行かれましたが、カンヌ行きが決まったのはいつ頃だったのですか?
小松:1ヵ月前くらいでした。
二宮:そうか。俺あの頃、出来上がった映像をゆっくり見てたもんな。「あそことあそここうしたいな」って話してたら監督から電話がかかってきて、アフレコだろうなと思っていたら「カンヌが決まりました」って。
喜んだと同時に「え? 編集終わってなくない?」って。
――そこから1ヵ月かけて急ピッチで編集作業を。
二宮:そうなんです。編集チームは睡眠不足の中で作業しなければいけませんでした。その段階でグリーンバックのところがまだありましたし(笑)。
小松:音楽もついていなかったですよね。
二宮:実は「やば…」みたいな感じでした。
――結果的には無事に上映されたわけですが、上映前にはカンヌの街巡りもしたそうで。
小松:びっくりするくらいしっかり観光できました。時間が限られてはいたのですが、街をブラブラしましたし、映画祭が開催されることでカンヌという街全体が盛り上がっているのも感じられました。丘にも行きましたよね? カンヌを一望できるすごくいい景色が見れました。
二宮:勝手に聖地巡礼もしたよね(笑)。
多分、誰かの俳優さんの聖地を一通りめぐって。
小松:してましたよね?(笑)。結構ちゃんと味わえました。
――そこから「ミッドナイト・スクリーニング部門」の公式上映があり、一夜明けた翌日の午前中にはフォトコールに出席されていました。
二宮:深夜上映のレッドカーペットの雰囲気も独特で、観客の皆さんが全員劇場に入っていくのをレッドカーペットから見送ってから僕たちも入るみたいな感じで。もっとサインとか書くのかなと思ってた(笑)。あれはあれでよかったかのもね。
小松:そうですね。もちろん華やかでしたが、深夜の上映ということもあり想像とは違う雰囲気も体感することができました。
二宮:でもすごく感動したのが、東宝やSTORY incのロゴがスクリーンに映し出された時にドカンと歓声が上がるんです。毎回ワーッって盛り上がってくださるのは見たことがなかったので、こういうお祭り感は新鮮でした。
――8分間のスタンディングオベーション受けた本作でしたが、撮影はいかがでしたか?
■久しぶりの映画撮影だった小松はド緊張
小松:『わたくしどもは。
』以来、久しぶりの映画撮影だったので、とても緊張しました。クランクイン前は寝れなくて「どうしよう」と思ったくらいで。すでに撮影は始まっていて、わたしが後から参加する形だったので、どういう風に進んでいるのか、どんな雰囲気なのかと不安が募りました。いろいろ考えていたら、背中が痛くなってきちゃって(笑)。緊張しすぎて最初のシーンの撮影は声が震えていました。
二宮:ずっと核心をついたシーンを撮影してたので、ワンカットを撮っても落ち着けるタイミングがなかったですね。
小松:そうなんですよ。わたしたちのシーンで言うと、つながっている感じがないので難しさがありました。
二宮:普通だと段階を踏んでから核心に迫っていくと思うんですけど、すっ飛ばしていきなり結論から入る感じがあったよね。
――小松さんは遅れての参加だとおっしゃっていましたが、「明日、小松さん来るぞ」っていう日の現場はどんな感じだったんですか?
二宮:僕ら側はすごくうれしかったです。ずっと歩く男(河内大和)と歩くシーンばっかりだったんで(笑)。小松さんとのシーンはある意味、“答え”でもあるので、作品の性質上、見ている人にとっては一呼吸できるシーンと言えるかもしれないですね。
撮影した日はお天気も良くて、僕にとってはすごく良い日でした。
小松:12月の中旬なのに温かかったですよね。
二宮:そうなの。もう少し気温が低かったら顔が固まって冷たい感じに映る気がして。いろいろなものが味方してくれた撮影でした。
――小松さんは、2017年にザ・チェインスモーカーズのMVで川村元気監督とご一緒していますよね。今回の撮影はいかがでしたか?
小松:あのMVは、川村さんが脚本・監督・プロデュースのすべてを初めて手掛けられた作品でした。初めてお会いしたのは、それより前の『バクマン。』のオーディション会場だったのですが、今回再びご一緒できたことは、とても感慨深いです。川村さんに撮っていただくからこそ、緊張したのかもしれません。
――二宮さんはいかがですか? 撮影→編集→確認をその場でやる現場だったそうですね。
二宮:そうなんです。
撮ったテイクが使えるか使えないかを判断している間に、もう1回撮影する準備をしつつ、次の段取りの練習をする…みたいな感じでした。長回しが多かったので、1回撮って確認するだけで20~30分かかるんです。さらにそこから編集も加えるので、最終的な答えが出てくるのが1時間後くらい。反射的に編集しないものもあるのですが、「ハマるかもしれない」っていうカットもその場で編集していくので、もう1回撮影できる準備は残しつつ、「次の段取りもやっておくか、今やることないし」みたいな時間はありました。カメラマンの今村圭佑さんと一緒に次の動きを決める時間に、僕たちがセットに入るので、練習して撮れたものを見ていただいて、その確認中に次の動きを確認するという贅沢さはありましたね。
小松:その場で確認ができるのはいいですよね。
二宮:この映画ってワンシーンが長いので、台本上は全部で15シーンしかないんです。だから、例えば10周目から15周目を撮影してもシーン自体は変わらないので、それをどう組み立てていくのかや何が起こるかを、台本に書かれていないところでできて、すごく贅沢な撮影でした。元気さんも「みんなのアイデアを借りたい」って撮影初日から言っていたので、すごくフラットにアイデアが出し合える現場でした。
――制作から携われると役者としてもやりやすさがありそうです。
二宮:そうですね。特に今回はぼくの一人芝居が多いので、絶対に現場で何かを言うだろうと思っていました。
なので、脚本協力という形で携われたのはとても大きかったです。
(取材・文:阿部桜子 写真:コウ ユウシエン)
映画『8番出口』は公開中。
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