9月21日に35歳の誕生日を迎える女優の趣里。先月29日には、ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」メンバーの「RYOKI」こと三山凌輝と結婚、第一子妊娠を発表したが、俳優としての趣里のこれまでの軌跡を振り返る。
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■俳優のサラブレッドでも、“最初の夢”は演技の道ではなかった
2022年後期の連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合ほか)で2471人のオーディションを勝ち抜き、「ブギの女王」と呼ばれた笠置シヅ子をモデルにした主人公・福来スズ子(花田鈴子)役を射止めた女優の趣里。オーディションの上限年齢に設定されていた32歳でつかんだ大役。選出の大きな理由は、彼女が卓越した「歌って踊れる」俳優であったことだ。
父・水谷豊、母・伊藤蘭という芸能一家に生まれた趣里は、4歳からクラシックバレエを習い、バレエダンサーになることを目指し、高校時代にはイギリスへ留学するなど、夢へ向かって一直線だった。しかし留学先でケガをしてしまい、夢が絶たれてしまったというのは、過去のインタビューでも明らかにされている。
その後、女優への道へ進んだ趣里。2011年に出演した『3年B組金八先生ファイナル~「最後の贈る言葉」4時間SP』(TBS系)では、武田鉄矢演じる担任の坂本金八に恋心を抱く生徒・柴崎茜を演じ俳優デビューすると、映画、ドラマ、舞台と幅広いジャンルで活動。特に舞台では、クラシックバレエで培った姿勢の良さや、しっかりとした体幹、よく通る声など、ポテンシャルの高さを存分に発揮する。
確かな素地を活かしつつ、映像でも一筋縄ではいかない役を好演。2017年に放送された、湊かなえの人気原作を連続ドラマ化した『リバース』(TBS系)では、三浦貴大演じる議員秘書・村井の妻・香織に扮した。劇中、不倫をしている夫に対して、狂気的な行動を繰り返すキャラクターは、作品にホラー的な要素を与え強いインパクトを残した。
翌2018年に公開された『生きてるだけで、愛。
同年放送されたTBS系日曜劇場『ブラックペアン』では、主任看護師の猫田麻里を演じた。個性的な病院スタッフのなか、常に無表情で不愛想だが、仕事は完璧という天才肌のキャラクターは、物語全体のなかでいいアクセントになっていた。
■バレエが朝ドラに活きた! 4度目の挑戦でつかんだヒロイン
派手さはないものの、作品のなかで重要な役割を担い、彩りを添えてきた趣里が、4度目の挑戦にして主役の座を射止めたのが『ブギウギ』。前述の通り、制作統括は、趣里のクラシックバレエで鍛えられたしなやかな動きに裏付けされる踊りや、歌唱力を評価。「艶やかかつ華やか」と表現した。
この言葉通り、『ブギウギ』のスズ子は、苦境に陥りながらも、常に明るく無邪気に、音楽と舞台を愛し笑顔で乗り切り、元気の源のような存在として駆け抜けた。東京出身でありながら、テンポの良い関西弁を操り、突っ込まれたり、突っ込んだりするポップな姿は、多くの反響を呼んだ。本作で、コメディエンヌとしてのポテンシャルの高さも見せつけ、脚本を担当した足立紳も「猫のようにクルクル変わる豊かな表情」を特徴にあげ、書き手の想像力を掻き立てるような演技を絶賛していた。
『ブギウギ』放送中に公開された塚本晋也監督が手掛けた映画『ほかげ』では、『ブギウギ』と同じ戦後を舞台にしながらも、闇市で“絶望”を体現する女性を渾身の芝居で表現。その存在感は、唯一無二で、映画女優としても圧倒的な表現力を見せていた。
連続テレビ小説後は、映画、ドラマと主演作が続いているが、どんなアクが強い役でも、作品からはみ出すことのない確かな演技力は、主演だけではなく、あらゆる立ち位置のキャラクターでも演じられる強みがある。結婚、出産という新たなステージを迎え、さらに役柄の幅も増えていくであろう趣里の今後が楽しみでならない。(文:磯部正和)
引用:「趣里」インスタグラム(@shuri.and.mg.official)