連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)が最終回を迎えた9月26日はギリシャ生まれの小説家・小泉八雲の命日。八雲は29日からスタートする連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)の主人公のモデルとなった小泉セツの夫でもある。
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■「小泉八雲」ってなにした人? 『ばけばけ』放送前におさらい
八雲ことラフカディオ・ハーンは、1850年生まれ。ギリシャ西部のレフカダ島でイギリス人の父とギリシャ人の母の元に生まれた彼は、両親の離婚をきっかけに大叔母に引き取られる。ハーンは19歳の時に移民船でアメリカへ。そこで新聞社に就職し、ジャーナリストとして活動し始める。
そんな彼は『古事記』の英訳を読んだことや1884年の万国博覧会をきっかけに日本に興味を持ったという。そしてハーンは1890年4月に来日。同年8月には島根県尋常中学校に赴任し英語教師として働くことになる。翌年には、1人暮らしだったハーンの家に、のちに妻となる士族の娘・小泉セツが住み込み女中として雇われる。その後、ハーンは熊本や神戸での勤務を経て、1896年9月に帝国大学文科大学講師に就任。同年にはセツと正式に結婚して日本に帰化。名前を小泉八雲と改めるのだった。
八雲は翻訳や紀行文、随筆など多彩なジャンルの著作を発表。代表作『知られぬ日本の面影』は、出雲地方や松江でのエピソードを通じて、明治期の日本を世界に発信。また当時の日本に口承で残されていた説話を記録、翻訳するという活動は『骨董』『怪談』といった怪奇文学作品集に結実した。一方、妻のセツとは三男一女を儲けている。1904年2月、早稲田大学に招聘(へい)され講師として勤務していたものの、同年9月に2度の心臓発作を起こし死去。享年54歳だった。
■『ばけばけ』はどんな話に? 主人公は八雲の妻がモデル
連続テレビ小説第113作となる『ばけばけ』の主人公は、八雲の妻・セツをモデルにした松野トキが主人公。本作は、戦前~戦中~戦後の物語が多い傾向にある連続テレビ小説の中では珍しく、明治期の日本が舞台となる。明治維新によって長かった武士の時代が終わり、急速に西洋化していく日本。物語では、その中で埋もれてきた名もなき人々に光をあてつつ、代弁者として語り紡いでいく1組の夫婦の姿が描かれていく。ドラマ『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)や『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(NHK総合)、映画『子供はわかってあげない』などを手がけたほか、劇作家、作詞家としても活躍するふじきみつ彦が脚本を務める。
主人公・松野トキを演じるのは、2892人がエントリーしたオーディションで抜てきされた女優の高石あかり(「高」は「はしごだか」が正式表記)。
トキと出会い、生涯の伴侶となるレフカダ・ヘブンを演じるのは、イギリス出身でミュージシャンとしても活躍する俳優のトミー・バストウ。彼はロックバンド「Franko」のボーカリストとして活躍するかたわら、2008年には『ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日』でメジャー映画に初出演。2024年にエミー賞を受賞したドラマ『SHOGUN 将軍』ではメインキャストの1人として、マルティン・アルヴィト司祭を演じていた。バストウは『SHOGUN 将軍』で共演した穂志もえかから、ヘブン役オーディションを知らされたそうで、応募総数1767人の中から、ヒロインの夫役を射止めた。八雲をモデルとしたヘブンは、新聞記者として取材のために来日し、松江で英語を教えることに。そしてひょんなことからトキと出会い、不思議な交流が始まっていく。
■注目キャストがすでにずらり まず押さえたいキャラ達
来日したヘブンをサポートする英語教師・錦織友一を演じるのは、主演映画『国宝』が大ヒットを記録している吉沢亮。
連続テレビ小説の魅力の1つとして欠かせないのは、主人公の人生に影響を与えていく個性的なキャラクターたちの存在。主人公の父で元武士の松野司之介を演じるのは、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)でも主人公の父親を演じていた岡部たかし。今作で岡部が演じる司之介は、愛する家族と共に貧乏生活から脱出するべく不器用ながらも奮闘するというキャラクターだ。
一方、トキの母・フミを演じるのは2001年の連続テレビ小説『ほんまもん』で主演を務めていた池脇千鶴。朝ドラヒロインを経て、朝ドラヒロインの母親役に挑むことになった池脇が演じるフミは、出雲大社の上官の家で育った女性。トキは母・フミから出雲の神々の物語や生霊・死霊の話、目に見えないモノの話を聞かされることになる。
連続テレビ小説には、2002年の『まんてん』(NHK総合)、2015年の『まれ』(NHK総合)に続いての出演となるのが小日向文世。彼が演じるのは、トキの祖父・勘右衛門。
トキたち松野家の面々と深い関わりを持つ雨清水家の人々を演じるキャスト陣も豪華だ。松江藩で名をはせた上級武士で、明治に入ると多くの没落士族に手を差し伸べようと尽力する雨清水傳役には2014年の『マッサン』(NHK総合)に続く連続テレビ小説への出演となる堤真一。そして連続テレビ小説には本作で初出演となる北川景子は、親戚のトキに礼儀作法やお茶など武家の娘としての教養を厳しく教えるタエを演じる。また雨清水家の三男で、松野家と特に親しい間柄となる三之丞役には、連続テレビ小説初出演の板垣李光人がキャスティングされている。
このほかにも、トキのお見合い相手・山根銀二郎役に寛一郎、ヘブンに日本行きを勧める同僚記者イライザ・ベルズランド役には『マッサン』でヒロインを演じたシャーロット・ ケイト・ フォックス、さらにトキとヘブンを見守る蛇と蛙を阿佐ヶ谷姉妹が演じるなど、キャストも多彩な『ばけばけ』。激動の時代に国際結婚を果たした1組の夫婦がどんな物語を届けてくれるのか、秋からも朝ドラから目が離せない。(文:スズキヒロシ)
連続テレビ小説『ばけばけ』は、NHK総合にて9月29日より毎週月~土曜8時ほか放送。
引用:『ばけばけ』公式インスタグラム(@asadora_bk_nhk)