もっともチケットが取れないと言われる人気劇団、“劇団☆新感線”が2025年、45周年興行を上演。ゲストを中心にすでに上演された初夏公演に続く、秋冬公演『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』では、10年ぶりに「チャンピオンまつり」と銘打つ。

主宰・いのうえひでのり、座付作家・中島かずき書下ろしで、45年分の作品のセルフパロディ・セルフオマージュの要素も織り込み、劇団員、元劇団員、ゲストが集結しファンに“まつり”を届ける。公演に先立ち、看板俳優の古田新太高田聖子、粟根まこと、数年ぶりの出演となる橋本じゅん、羽野晶紀橋本さとしの劇団☆新感線の歴史を知る6人に話を聞くと、話題は思わぬ方向へ――。

【写真】「劇団☆新感線」レジェンド、圧巻のオーラ!

■橋本じゅんが語る、古田新太に「奥行き」が出てきたワケ

――勝手知ったる豪華なメンバーにお集まりいただいたので、このメンバーのここは「昔と変わった」、もしくは「昔と変わらない」と思うことを教えてください。

古田:ここにいるメンバーはそんなに変わってないよね。

羽野:古田さんは変わったでしょ。

古田:変わった? まあ、少し前に飲み屋で女の子3人にフラれたかな。

高田:知らんがな。

羽野:変わってないじゃん。

高田:通常営業。

じゅん:でもそれは変わったとこだな。

古田:変わったやろ。

じゅん:昔はプレデター、捕食者だったからね。
フラれるとは。

粟根:たしかに。

高田:だけど古田さん、女の人をフッてるイメージはない。ちゃんと自分がフラれてはるイメージ。だからそういう意味では変わってない。

じゅん:昔の記憶のまま止まっているところはあるからな。言うてもそんなに会ってないので。でも僕は古田さんといえばプレデターだから、フラれるなんて聞くと、「なんか奥行き出たな」って。

高田:奥行き(苦笑)。

さとし:どちらかというと僕もじゅんさんと一緒で、古田さんはプレデターのイメージです。昔、打ち上げの後に消えていく古田さんのシルエットを何度も見送りました。

粟根:言えないこともたくさん。


高田:たしかに後ろ姿は見てました。だけど結局フラれてあげるイメージ。

古田:フラれてバンザイやな。

――色男ですね。

羽野:ええ~?

■羽野晶紀「私たちはたぶん伝説の人」

――羽野さんは、みなさん勢ぞろいの劇団☆新感線公演には久しぶりの参加です。稽古で「変わったな」と感じられたことはありましたか?

羽野:すっごい段取りがいいし、昔みたいにいのうえさんの“1000本ノック”みたいなことをやってない。以前は、ひとつの稽古がはじまったら、1日そこだけで終わってしまったりしてましたから。その原因を自分が作ったときの申し訳なさといったらなかったです。今はそういうことがなく、時間がきっちり決まっていて、みんな自分の持ち場をしっかりやっていて驚きました。

粟根:羽野さんの言う昔というのは、相当昔の話なんで。昔は演出助手もおりませんでしたし、稽古場での作業はみんな劇団員たちで分担してやっていました。自分たちで衣装を作ったり小道具を作ったり。
今はそれぞれのプロがいるし、演出助手がいてスケジュールも段取ってくれる。そんなところに羽野さんは久しぶりに呼ばれちゃったから、未来に急に来ちゃっているような状態なんですよ。

――では製作発表会見(7月30日)をネットで生中継なんていう感じも。

羽野:ゴージャスすぎて夢の国にいるようです。みんなの根っこは変わってないのに、外側がすごいことになってる。

高田:中は変わってないですよね。

羽野:変わらない。

――「劇団☆新感線の舞台だから観たい!」というファンの熱も、すごいことになってます。

さとし:僕らからしたら、「自分が新感線にいたということを覚えている人いるのかな」って感じです。

羽野:当時は十何ステージだけやってて、小屋も小さかったから、観ていた方がどれだけいらっしゃるかなって。

粟根:このメンバーが一緒に出てたときの公演は、まだディスク化されてないからね。

羽野:私たち、たぶん伝説の人だと思う(笑)。


さとし:もしかしたらゲストだと思われているかもしれない。

高田:(橋本さとしは)ミュージカル界から来た人みたいな、ね。

古田:ラララで歌う、な。帝国劇場で。

さとし:帝国劇場始まって以来、ラララで歌いまくったんです。歌詞が出てこなくて。

高田:あはは!

羽野:今回は、ちゃんとやってね。

さとし:やります!

■かつては衣装も手作り。甲冑は段ボール素材で臭いが・・・

じゅん:変わったといえば、更衣室に扇風機とか脱臭のマシンがある。

羽野:空気清浄機ね。

じゅん:あれは何? 臭い対策?(笑)

粟根:違う、違う、感染症対策。

高田:みんな、汗かくし。


粟根:雑菌を取り、換気を良くするためです。

じゅん:そうなの?

高田:女子更衣室にもありますよ。

粟根:臭い対策で置いているんじゃないです。

じゅん:昔あってほしかったよね。地獄やったから。

――衣装を洗えなかったそうですね。

高田:そうです。

古田:じゅんさんもすごかった。

じゅん:はい。昔は甲冑とかも段ボールにラテックス塗っただけのものだったから、基本紙なんですよ。だからやってるうちにぐちゃぐちゃになってきて。天日干ししても匂いが取れない。


高田:客席登場とかあると、アンケートに「臭い」って書かれてた。

羽野:やだ~。

じゅん:犬の臭いがするって。

羽野:みんな、良いこと言おうよー。

全員:(笑)。

■古田新太、飲んでも家に帰る「金魚にエサやらな」

――今回、45周年興行ですけれど、古田さんは所属41周年です。

古田:そうですね。

――所属35周年のときにこれだけの人気劇団が続いているのは、「このメンバーでやり切れることを、まだやり切っていないから。まだまだこのメンバーで面白いことができると感じているから」とコメントされていて、ステキだなと思いました。劇団45周年の今、改めて思われることを教えてください。

古田:ものすごくバカバカしくて「ああ、面白かった!」と言ってお客さんが帰る、1時間40分の一幕ものがやりたいです。

羽野:賛成!

高田:同じく。

じゅん:本多劇場で2ヵ月とかね。

粟根:それを実現するために、まだ劇団に残っているわけですね。我慢して。

古田:新感線の舞台はおいらが出ていないときに観に来ても楽しいんですけど、3時間半超えるとなるとケツが痛い。みなさんそうでしょう。

羽野:短く終えて、下北へ飲みに行こうと思ってるんでしょ。

古田:2時から始めて3時半に終わったらいい。

高田:その時間はまだ飲み屋やってないでしょ。

古田:おいらは4時から入れるから。

じゅん:短くて面白い芝居を、できれば近場で地道に長くやっていきたいというのが夢ですね。

古田:下北沢とか三軒茶屋から出たくない。歩いて帰れる。

さとし:ああ、いいですね。

高田:結局、家には帰りはるのね。

古田:金魚のエサ、やらな。

さとし:なんか、変わりましたね。金魚にエサやるイメージはなかったです。

粟根:最初の話に戻った!

全員:あはは!

■くだらないことを「歌って踊って、戦って」を長くできたら

――「次は劇団50周年」といったことを考えるより、まだまだ先もずっとこのメンバーでやっていけるのが楽しそうですね。

古田:なるべくならばくだらないことを「歌って踊って、戦って」というのを、長いことできたらいいなとは思ってるけどね。

じゅん:改めてこうやって勢ぞろいして話してみると、忘れていることを覚えている人とかいて、すごく面白かったですね。まあ、また忘れるんだと思いますけど。

古田:(橋本さとしに)全然、覚えてないよな。

さとし:全然、覚えてなかったです。何もしゃべれなかったです。

全員:(笑)。

――お時間になってしまいました。最後にどなたか45周年興行に向けてビシっとひと言。

羽野:えー! 会見では向井(理)くんがいてくれたからよかった。

高田:ありがたかったね。向井くんに聞いてください。

――せっかくなので、ゲストだと思っている人もいるかもというお話の羽野さんから。

古田:決めろよ。

羽野:45周年興行ですが、私たちは45周年ではないんです。

じゅん:ん?

羽野:劇団としての45周年なので。

じゅん:ああ。

羽野:私たちはとにかく、いのうえさんへのリスペクトを忘れずに、いのうえさんの45周年をみんなで楽しく盛り上げます。

古田:うまいこと言うた!

全員:(拍手)。

(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)

 2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』は、長野・まつもと市民芸術館にて9月19~23日、大阪・フェスティバルホールにて10月9~23日、東京・新橋演舞場にて11月9日~12月26日上演。

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