2024年10月期に放送され、小学校の保健室で子どもたちが発する「言葉にできないSOS」と向き合う小児科医・牧野の姿が大きな反響を集めたドラマ『放課後カルテ』が続編『放課後カルテ 2025秋』(日本テレビ系/9月24日21時)として帰ってくる。文句ばかりで口も態度も大きい超偏屈なドクター・牧野役で新境地を開いた松下洸平にクランクイン前に話を聞くと、作品や児童役キャストに対する愛のあふれたインタビューとなった。
【写真】白衣×メガネは反則! 松下洸平の柔らかいほほ笑みに癒やされる
◆続編は「変わらないよさと変わっていく楽しみと両方が詰まった作品」
――『放課後カルテ』の続編での復活、最初にお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
松下:すごくうれしかったですね。「いつかまたやりたいですね」というお話はしていたのですが、こんなに早く実現するとは思っていなかったです。連続ドラマが続編で帰ってくるパターンってあまり多くないと思うので、すごく貴重な機会を頂けたと思います。
連続ドラマが終わって8ヵ月が経ちましたが、物語の中では最終回の半年後の世界を描きます。とはいえ、子どもたちの成長するスピードは早いので、大きくなった児童たちと会うのは少しドキドキします。会えばきっとあの頃のままの児童たちがいると思うので、連続ドラマの中で培ってきた絆を糧にしたいですね。
今回は2時間ドラマなので、連続ドラマでは描き切れなかった部分、連続ドラマを経たからこそ描ける部分、両方がきっとあると思うので、変わっていった牧野先生の姿と、変わらないみんなの笑顔をお届けできたらなと思っています。
――8ヵ月ぶりに牧野先生を演じられますが、久々に白衣に袖を通した心境はいかがですか?
松下:帰ってきたなという感じがしますね。どんなしゃべり方だったかなと映像を見返したり台本を読んでいくと、「そうだ、そうだ。こういう性格だわ」と思い出してきました。現場でみんなの顔を見たらすんなり戻ってくるんじゃないかなと思っています。
あとは久々の医療用語が(苦笑)。
――台本を読まれての感想はいかがですか?
松下:ちょっと成長したみんなの姿が描かれているなと感じました。成長するからこそ増える悩みや、環境が変わって中学生になるので、小学生の時には抱かなかった悩みが出てきている彼ら彼女たちに向き合う牧野先生の姿も描かれますが、保健室での経験がしっかり活かされているところも印象的でした。
一方で、ぶっきらぼうなところは変わらず健在なので、変わらないよさと変わっていく楽しみと両方が詰まった作品になると思います。
――牧野先生の変わったところはどんなところでしょう?
松下:彼は、子どもが好きという理由ではなく、小児科医はすべての病気を診ることができるということで小児科医になった人なんです。その彼が保健室で子どもたちと向き合うことで、病を治すということは病気だけを診ているだけでは治らないことに気づかされ、成長していったんですね。子どもたちに未来を見て生きていってほしいという願いにまでたどりつけたのが、連続ドラマでの牧野先生の成長だったかなと思っています。
今回牧野は病院に戻って小児科医として実務に励んでいますが、患者に対する向き合い方も変わっているなと感じました。言い方は悪いですけどね、相変わらず(笑)。口は悪いんですけど、優しさと、見てる目線が今までとは違っている感じがしました。これまでは病気だけを見ていましたけど、その奥にある根本的な悩みに寄り添おうとする彼の姿がありました。
◆児童役キャストとの共演は「同じ目線でいることを心がけた」
――松下さんにとって、これだけの子役のみなさんとの共演は初めてだったかと思います。現場での児童役のみなさんの姿はどう映りましたか?
松下:すごく現場を楽しく感じながら過ごしてくれたみたいでした。オールアップの日には、「人ってこんなに泣いて大丈夫なのかな?」って思うくらい、みんな涙が止まらなくて。本番前から泣いている児童もいましたし、カットがかかってもずっと泣いている児童もいました。よくドラマやマンガで「うぇ~ん!」って泣くじゃないですか。あれ、本当に言うんだなと思って(笑)。彼らにとってきっとこの3ヵ月はもう1つの実在する世界だったんだなと感じました。
僕ですか? 僕も感極まりました。間一髪のところで堪えましたけど、今までの中で一番感動しましたし、一生忘れないオールアップでしたね。
――思い出に残っているシーンはどこでしょう。
松下:最終話で牧野先生は卒業式には出ずに人知れず去って行くんですけど、最後保健室に寄ったときに、児童たちからの寄せ書きが置いてあるのを見つけるんですね。児童のみんなもずっと牧野先生と呼んでくれてましたし、僕自身も牧野先生として生きている時間が濃密だったので、その寄せ書きはまぎれもなく牧野先生へのメッセージであり、僕自身に宛てたメッセージとしても捉えることができたので、グッときました。
牧野先生はああいう性格なので泣かないと思うんですけど、中の人がもうたまんなくてですね(笑)。なんとか堪えて、でも途中ポロっといきそうになっちゃったので、一回上を見て(涙を)中に仕舞ってから演じたことを覚えています。
――牧野先生として児童役キャストと接する中で気を配われた点はありますか?
松下:クランクインする前は、牧野先生と児童たちの役柄の関係性でいえば、オフの時間もとっつきにくい怖い人でいたほうがいいのかなと思ったこともあるんです。でも撮影が始まってみると、僕が思っている以上に児童たちがとても純粋で。そんな彼らと3ヵ月いる中で、ずっと牧野先生でいることは不可能でした。
むしろ僕と一緒にお芝居することを楽しく感じながら現場に来てくれたほうが彼らはきっとノビノビできるんだろうなとも思いましたし、率先して一緒に遊んで、いろんな話を聞きました。学校でどんなことが流行っているのかとか、このクラスの中で女子に一番人気の男子は誰?とか聞いて、同じ目線で一緒にいることを心がけました。
――そんな彼らと久しぶりに再会します。
松下:僕達がびっくりするくらい大きくなっていると思うんですよね。衣装合わせをしたら、児童たちみんな前に着ていた衣装が1サイズアップしていて、10センチくらい身長が伸びた子もいるそうなんです。こっちが面食らわないように気をつけなきゃと思っています。
『放課後カルテ』以降、みんなたくさんの現場を踏んでステップアップしていると思うので、変に現場慣れとかしていないといいなぁ(笑)。
◆ミュージカル主演、カンヌ映画祭経験し新しい世界を見ることができた
――この8ヵ月で児童たちも成長を遂げているかと思いますが、松下さんもミュージカル『ケイン&アベル』で主演を務められ、映画『遠い山なみの光』でカンヌ映画祭も経験されました。
松下:新しい世界を見たなと思います。ミュージカルもそうですし、カンヌに行かせていただいたり、今まで見たことのなかった景色がずっと広がっていたので、またあそこに行きたいなとか、またあの舞台に立ってみたいなとか、新しい目標がいくつかできた期間でした。
カンヌは初めて行かせていただきましたが最高でした。映画の現場の経験がそんなに多くはない中で、石川(慶)監督に声をかけていただけたのもうれしかったですし、世界的なレッドカーペットを歩かせていただけたのもうれしかったです。みんながカンヌに行きたいと思いながら作品を作っているのが分かった気がしました。
『ケイン&アベル』も、それこそ牧野先生としての撮影が終わって、翌日には稽古をやってたんですよね。無理やりハンドルをきって切り替えて(笑)。でもまったくの別世界の作品だからこそ振り切ってできた気がします。
――新しい景色をいくつもご覧になって、これからの活動へのお気持ちに変化は生まれましたか?
松下:海外の作品に出てみたいなという気持ちは強くなりました。日本とは全く違う作り方、違うスケールのものが多いと思うので経験してみたいですね。もちろん日本でしっかり結果を出すってことが一番やらなきゃいけないことですけど、それと同時に、違う世界の違う作り方というものにもとても興味があります。
――改めて、『放課後カルテ』という作品は松下さんにとってどんな作品でしょうか?
松下:まず、俳優として、主演をやらせていただけたということが大きな経験でした。そして、子どもたちの芝居から得るものもたくさんある現場でした。すごく器用にお芝居する子もいれば、不器用ながら一生懸命やっている子もいて、いろんな子どもたちの芝居を見て、すごく勉強になりましたし、彼らの取り組み方や一生懸命さにいつも励まされました。彼ら彼女たちが、僕ら大人をお手本にするときになるべくいいお手本になれるようにと心がけるようになりましたし、改めて自分の仕事というものへの向き合い方を考え直す機会もいっぱい頂けました。
地上波で初めての単独主演でもちろんプレッシャーもありましたし、今までとは違う責任感もある中で、視聴者の皆さんが毎回涙しましたと言ってくださったり、同じ病や悩みを抱えている方々からのメッセージもたくさん頂きました。そういうお声に僕らもまた励まされて、お互いに励まし合いながら作ることができた作品だと思っています。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG Inc.])
『放課後カルテ 2025秋』は、日本テレビ系にて9月24日21時放送。