歌・芝居・ダンスのすべてで観客を魅了し、退団後もさまざまなジャンルの作品でその技術を磨き、芸道を邁進する元宝塚歌劇団星組トップスター・北翔海莉。同じく高レベルな舞台スキルを誇り、周囲を明るく照らす華やかな笑顔で北翔の相手役を務め上げ退団後も活躍が続く元星組トップ娘役の妃海風。
【写真】退団後も仲の良さマシマシ! 北翔海莉&妃海風、尊さあふれる“みちふう”ショット
◆男性キャストによる北翔と妃海への反応の違いにクレーム?
玉野和紀が脚本・構成・演出・振付を手がける舞台『CLUB SEVEN』は、ソング&ダンス、芝居、タップ、ミュージカル、スケッチ、舞台の醍醐味が全て詰った、究極のエンターテインメント・ショー。この“怒涛のジェットコースター大娯楽エンターテインメント”は、2003年5月の初演以来、玉野を筆頭に、吉野圭吾、東山義久、西村直人と初演から作品を支える“レジェンド”メンバーをはじめ、ミュージカル界をけん引する才能あふれるキャストたちが、常に全力で作品を盛り上げてきた。
今回は、北翔、妃海のほか、原田優一、内海啓貴、蒼木陣も参戦し、歴代最長となる怒涛の50音順ヒットメドレーや名物の無茶ぶりコーナーなど、『CLUB SEVEN』らしさあふれる舞台に挑む。
――『CLUB SEVEN another place II』へのご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
北翔:『CLUB SEVEN』へは4回目の出演になるのですが、大好きな作品ですし、今回は風ちゃんと一緒ということで、喜びが倍にも三倍にもなるくらいの気持ちでした。
妃海:私もすごくうれしかったです。客席でみちこさん(北翔)の、本当にアッパレすぎるくらいの素晴らしい『CLUB SEVEN』を拝見していましたから、稽古場でお会いした瞬間に、「これからこの作品を一緒に作れるんだ!」ってうれしさが爆発しました(笑)。
北翔:『CLUB SEVEN』って通常の公演よりも長く稽古をやるんですね。長い稽古場に親友がいるっていう安心感みたいなものがあって、稽古初日に「あ、これだよな」みたいな感覚がありました。
妃海:毎日のようにお会いできる日々が続くので、本当にうれしいです。
――『CLUB SEVEN』は歌もダンスも無茶ぶりもと、お2人にぴったりなエンタメの面白さてんこ盛りの作品ですが、初めて出演した時はどんな感想を持ちましたか?
北翔:どこまでやっていいのかも分からず、でも加速していく共演者を見て、「あ、なんでもありなんだ、このステージは」って思いました(笑)。
――宝塚と通ずるところもありますね。
北翔:そうですね。やりすぎないけど、面白いことは確実にやるっていうね。
――そういうところは北翔さんの独壇場ですよね。
北翔:いやいや(笑)。
妃海:独壇場です! みちこさんは『CLUB SEVEN』のレジェンドですから!
北翔:いやいやいや。原田優一さんも同じくらいの出演回数なんですけど、私と原田さんのことを玉野(和紀)先生が「強者たちが来たぞ!」っておっしゃっていました(笑)。
妃海:あぁ、確かにそういうイメージがあります。原田さんもそろって、なんかこう「強いな」って(笑)。初めて出演されるお二人もいらっしゃいますけど、『CLUB SEVEN』への愛にあふれた、作品のパワーを信じる方たちがそろった感じがありますね。
北翔:お一人ずつを見ると本当に実力者で、それぞれが本当にいろんなところで活躍されている方たちばかりなんですけど、稽古場に入ってこられただけで面白さがにじみ出るっていうか(笑)。
妃海:稽古場というより部室感がありますよね(笑)。
――歴戦の猛者がそろわれていますよね。もちろん妃海さんも。
妃海:いやいやいや、毎日全力投球でやらないといけなくて、ワナワナしています。今回は特にみちこさんとご一緒ということで…。
北翔:男性陣はみなさん前回の風ちゃんのいい印象が残っているので、「風ちゃんが来た! 風ちゃんが来た!」って喜んでいました。「なんで私には言ってくれないんだろう? 全然反応が違うんだけど」って(笑)。
妃海:(笑)。みちこさんはレジェンドですから。
――妃海さんは、前回の思い出は何かありますか?
妃海:私はとにかくガムシャラだったので、与えていただいたことに、どこまで自分が振り切れるのかということと、「ここまでやりすぎたらお客さんはひいちゃうんだな」と、振り切りすぎないことを身をもって勉強したことを覚えています。
北翔:そんなことがあったの?
妃海:ありました、ありました。
◆『CLUB SEVEN』は大人の青春と役者のプライドがぶつかる作品
――今年は50音順ヒットメドレーが過去最長になるという宣言が玉野さんからありました。それをお聞きになった時のお気持ちはいかがでしたか?
北翔:大変ですけど、止められないし…。部長がやりたいって言うんだからしょうがないんですよ(笑)。
妃海:玉野さん、うれしそうですよね。しんどいって言いながら(笑)。
北翔:「覚えられるかな」「しんどいんだよな」ってね。本人が一番喜んでいることなので。
妃海:部長を喜ばせることが一番の喜びです。
――玉野さんの演出にはどんな印象をお持ちですか?
北翔:やはり玉野先生は若いころにニューヨークで、エンターテインメントを作る上での基礎作りをされて、すべてのジャンルのダンスも勉強されていますし、知識が豊富です。万人にうけるやりすぎない構成・演出が素晴らしいなって思いますし、お客様を飽きさせず、常に時代にあったものをやるっていうのは本当にすごいなと思います。
妃海:客席で観ているときでも、お稽古に入ってでも、特に『CLUB SEVEN』に言えることかもしれないんですけど、中毒性があるんだなっていつも思っています。
北翔:玉野先生の作品は、現代の人にもうけるけど、昭和の懐かしさみたいなものもあると思うんです。だから幅広い年齢層に受け入れてもらえるんだろうなって思いますね。
――お二人が考えられる『CLUB SEVEN』の魅力、面白さはどこにあると考えられますか?
北翔:みなさんがカメレオンのように七変化するところですかね。七どころじゃないけど(笑)。スケッチの場面での面白さもありつつ、それでいて本職としてみなさんが活躍しているシーンのカッコよさもあったりと、役者ってこんなにも場面によって違う面を見せるんだっていうのを一気に観られるのが一番の魅力じゃないかと思います。
妃海:大人の本気の青春と、役者個人としてのプライドみたいなものがガツンと集まっているところが、素敵だなって思います。玉野さんという頂点の方がいて、一番キラキラしていて。プライドは持ちつつ、いくつになってもキラキラし続けながら、幕が下りたらみんな疲れ果てて帰るのが、カッコいいなって思います。
◆“みちふう”誕生から10年 関係性に変化は?
――今年は、北翔さん、妃海さんの「みちふう」コンビが爆誕して10周年となります。
北翔&妃海:爆誕(笑)。
――個人的な話になるのですが、プレお披露目の『大海賊』を神奈川県民ホールで拝見しまして、あの時の割れんばかりの拍手と熱狂は忘れられません。
北翔:ありがとうございます。まだ覚えていてくださって。
――はじめに相手役が妃海さん、北翔さんだと聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
北翔:一度も組んだことがなかったので、お見合い結婚みたいだなと思いました。だいたいは組む前にちょっとでもお試し期間みたいなのが必ずあるんですけど、そういうのもなかったんですよね。
妃海:宙組での初舞台の時はもちろんずっと陰から見ていただけですし、(北翔が専科時代に特別出演した)『眠らない男・ナポレオン-愛と栄光の涯(はて)に-』で星組に来られた時に、忘れもしない、踊り方とかお芝居とかが本当にカッコよくって! でも声をかける勇気はない、みたいな感じだったんです。
北翔:(妃海は)まだ新人公演の時期だったものね。
妃海:一回だけ「カッコイイです!」ってお伝えしたことがあるんです。でもそれだけで終わりました(笑)。
――その時の北翔さんの反応は?
妃海:「ありがとう」って言ってくださいました。
――退団から9年が経ちますが、お二人の関係性に変化はありますか?
北翔:卒業後もやっぱり風ちゃんの活躍ぶりは自分にとっての一番の励みです。「体調崩してないかな?」って親心もありますね。「海外行って大丈夫かな」「食事は合うんだろうか?」って。
妃海:「元気なの?」「生きてるの?」って連絡をくださいます(笑)。
――舞台『千と千尋の神隠し』でロンドン、上海公演を経験、朝ドラ『おむすび』にも出演と、妃海さんの大活躍ぶりは北翔さんの目にはどのように映りますか?
北翔:本当にあっぱれですよ。
妃海:ずっとご縁が続いていて。最初は相手役というご縁でしたけれど、こんなに深いつながりになるとは思っていなかったです。年を重ねるほどに、みちこさんとの出会いに感謝しかないです。
――先ほど親友というお言葉もありました。
北翔:戦友みたいな感じですね。
妃海:私には王子様ですけどね、お母さんになられても。稽古初日なんてずっと見つめていましたから!
――妃海さんは、退団後の北翔さんのここが変わったなと感じられるところはありますか?
妃海:出会ったときからそうなんですけど、進化し続けていらっしゃるんです。つねに挑戦し続けて、いつも好奇心をお持ちで、持っているパワーは変わられていないですね。お会いすると自分も頑張ろうと思わせてくれる方です。
――古巣の宝塚でいうと、同期の礼真琴さん、柚香光さん、月城かなとさんがトップを務め上げられ退団。同じく同期の朝美絢さん、桜木みなとさんがトップさんとして活躍されています。
妃海:同期が変わらず活躍してくれているのが本当にうれしいですね。観るたびに感動して泣いています。同期の活躍は、私の励みになります。
北翔:大変さが分かるからね。
――北翔さんにとっても、宙組時代に『記者と皇帝』などで共演した桜木さんや、専科時代にご出演の『THE MERRY WIDOW』で北翔さんのアドリブにあたふたしていた暁千星さんが星組でトップになるなど、ご縁のある方がトップスターになられました。
北翔:本当にちっちゃかった子がみんな立派になって、よくやっているなって思って観ています。
――最後に今回の作品を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
北翔:今回は、今までよりも最強のものを自信を持ってお届けしたいなと思っています。もうそれだけです。長いことは言いません。今回観ないと損するぞ!っていう作品になっています。
妃海:稽古場が最高に楽しくて! 振り覚えなど大変なこともありますけど、それがとってもいいエネルギーとなって、本当に楽しい『CLUB SEVEN』になるだろうと思います。またみちこさんとご一緒するという私自身のうれしい気持ちもお届けしたいですね(笑)。ぜひ劇場にお越しください!
(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)
『CLUB SEVEN another place II』は、東京・有楽町よみうりホールにて10月4日~14日、大阪・サンケイホールブリーゼにて10月24日~25日上演。