10月5日より放送がスタートするテレビアニメ『機械じかけのマリー』。本作は、人間であることを隠し“ロボットメイド”として送り込まれた少女・マリーと、彼女を本物のロボットだと信じて疑わない御曹司・アーサーが織りなす、ちょっぴり不器用であたたかなハートフルコメディだ。

クランクイン!では、放送開始を記念して、主人公・マリーを演じる東山奈央にインタビュー。キャラクターへの思いやアーサーとの関係性、さらには自身が大切にしている“人との距離の縮め方”についてまで、優しいまなざしで語ってくれた。

【写真】東山奈央、可憐な撮りおろしカットが満載!

■“感情を隠す”少女に宿る繊細さと強さ

――原作を初めて読んだ際の印象と、アニメ化に対する思いを教えてください。

東山:とにかくポップでテンポがよくて、気づけばどんどんページをめくっていました。でもそれが、ちょっぴり申し訳ない気持ちにもなって……。というのも、先生がすごく丁寧に、思いを込めて描かれている作品なので、本当は一つひとつをじっくり味わいながら読みたくなるんです。でも、面白すぎて止まらなくて(笑)。

原作はすでに完結していて、このアニメではその物語を1クールかけて、まるごと映像化していきます。だからこそ、“ゴール”が最初から見えているという安心感があり、あきもと明希先生が描かれたものをアニメスタッフさんがアニメの中に丁寧に落とし込まれているような気がします。

もちろん、アニメならではの表現もたくさんあって、原作の魅力を大切にしながらも、映像だからこそ生まれる楽しさや見どころも詰まっていると思います。テンポの良さや可愛らしさ、そしてちょっと不思議で愛おしい世界観がギュッと凝縮されている。そんな、とても素敵な作品になっていると思います。


――東山さんが演じるマリーはどのようなキャラクターですか?

東山:マリーは、人間でありながらロボットメイドとして御曹司・アーサーのもとに送り込まれる女の子です。感情表現が少なく、少し無機質にも見えるところがあります。

でも彼女の心の中では、実はとても豊かに感情が動いていて。人には見せないけれど、ドキドキしたり、パニックになったり、戸惑ったり……。そのギャップがすごく愛おしくて、視聴者のみなさんには“マリーの本当の心”が見えるという構造が、キャラクターの深みをより際立たせていると思います。

アーサーもまた面白い存在で、すごくしっかり者でお堅い性格なのに、マリーのことは完全に“ロボット”だと信じきっているんです(笑)。だからこそ、人間には厳しい彼がマリーにはついデレデレになってしまう。そのギャップも可愛らしくて、思わずクスッと笑ってしまいます。

さらにマリーは、実は元・格闘家という一面もあって、見た目の可愛らしさからは想像もつかないほど戦いに強いんです。でも、そんな武闘派な一方で、心の中はとても繊細で傷つきやすかったり、複雑な家庭事情を抱えていたりもして……。アーサーのことを守っているようで、実はマリー自身も誰かに守ってほしいと思っている女の子なのかもしれません。そういったすべてを含めて、本当に魅力あふれるキャラクターだなと感じています。


彼女は今、まだ人生で初めての感情にたくさん出会っている途中で、恋心もそうですし、「友達をつくる」ということひとつとっても、すごくドキドキしてしまう。そんなふうに、一歩一歩、心を育てていく姿を、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。

――そんなマリーを演じるうえで、心がけたポイントは?

東山:“心がけ”だらけでした(笑)。普段のお芝居では、台本を読んでいろいろ考えてメモを取り、本番ではなるべく無心で演じることが多いんです。でもマリーの場合は、セリフとモノローグが次々に交互でやってくるので、本番中もずっと頭をフル回転させながら演じていました。

特に最初の3話くらいまでは、どう台本を読み込めばいいのかさえ分からなくなってしまって……“路頭に迷っていた”という表現がぴったりなくらい、毎回頭を抱えていました。本番でも、「あ、今セリフのテンションでモノローグを言っちゃった……」とか、「逆に感情を込めすぎたな」なんて、自分の中でごちゃごちゃになってしまって。でも、そんな私の迷いや葛藤を、スタッフさんが「分かるよ、大変だよね」と優しく受け止めてくださって。現場のあたたかさに、何度も救われました。

マリーって、同じ一人の女の子なのに、“ロボット”としての無機質なセリフと、“人間”としての感情豊かなモノローグを行き来するんです。でも、感情の流れは地続きで、そのギャップをどう表現すれば、見てくださる方に自然に伝わるのか……。そこは本当に難しかったですが、だからこそ、演じがいのある役だったと思います。


■大切に思い合う関係性と、クセ者たちの愛しさ

――マリーとアーサーの関係性について、演じながらどのように感じましたか?

東山:2人は“強さ”と“弱さ”の両方をあわせ持ったキャラクター同士なんだなと感じました。どちらか一方が強くて支えているのではなく、お互いの足りない部分を、自然に補い合っているような……。そんな、すごく素敵な関係なんですよね。

マリーはロボットメイドとしてアーサーのもとに送り込まれ、命を狙われる彼を守るために必死に戦うのですが、実はマリー自身もアーサーに支えられているんです。お互いに守り、支え合っていて……その姿がとてもあたたかくて、大切に思い合っていることがじんわりと伝わってくる。演じながら、何度も「本当にいいコンビだなぁ」と思いました。

そして、アーサー役の石谷春貴くんのお芝居が、本当に優しくて素敵で。アーサーは、人に対しては少しきつい言い方をしてしまうんですけど、マリーと向き合うときだけは、驚くほどやわらかい声で、愛情をたっぷり込めて話しかけてくれるんです。そのトーンが本当に絶妙で……石谷くんだからこそ出せる、あたたかさや優しさがあるなと感じました。

石谷くん自身もとても優しい方なので、掛け合いの中で私の心もふわっと和らぐような瞬間が何度もあって。そうした空気感も、自然とマイクに乗っていたような気がします。

――彼らのほかにも個性豊かなキャラクターがそろう本作ですが、東山さんが注目するキャラクターは?

東山:本当にみんな魅力的で、「全員に注目してほしい!」って言いたくなっちゃうくらいなんです。
『機械じかけのマリー』って、登場する“敵キャラ”たちですらどこか憎めなくて、チャーミングなんですよね。役者のみなさんのお芝居もすごくはっちゃけていて、「みんなで面白いものを作ろう!」っていう熱気が感じられる、とても良い現場だったなと感じています。

そんな中で、あえてひとり挙げるとしたら……メイナード、でしょうか。アーサーの命を狙うキャラクターのひとりなんですが、「本当に狙う気あるの?」って思っちゃうくらい、どこか抜けていて(笑)。テンションがものすごく高くて、言動もズレていて、1周回ってアーサーのことが好きなんじゃないかと思えるほど、なんとも愛らしい存在なんです。

演じている梶田大嗣さんも本当に素晴らしくて、毎回なにかを“仕込んでくる”んですよ。アフレコのたびに「今日は梶田さん、どんなメイナードをやってくるんだろう」って、キャストもスタッフもみんなワクワクしながら待っていました。

印象的だったのが、アフレコ中にスタッフさんがトークバックで「梶田くんは本当にいい声だから、その声を大事にしてね」とおっしゃっていたこと。現場中に声そのものを褒められる機会って、実はあまり多くないんです。でもそれだけ、梶田さんの声とお芝居に力があったということなんだと思います。

メイナードはギャンギャン騒がしいキャラクターではあるんですけど、その騒がしさが耳に心地よくて、「また出てきてほしい!」と思わせてくれる存在なんですよね。梶田さんの熱演によって、原作以上にアニメではさらに魅力的に、よりコミカルに仕上がっていると思います。
ずっこけるシーンなんかは、“深い爪痕を残しに来ている”と言っても過言じゃないので(笑)、ぜひ注目していただきたいキャラクターです!

■“無機質”なふたりが歌うEDに秘められた、あたたかな心の交差点

――ED主題歌「Cross heart」は、東山さんとマリー2役の小清水亜美さんが歌唱されていますが、どのような楽曲になっていますか?

東山:まず、タイトルの「Cross heart」は“ハートが交差する”という意味ですが、まさに、マリーとアーサーが出会い、恋心を抱いていく中で生まれるすれ違いやときめき……そんなピュアな気持ちがぎゅっと詰まった一曲になっています。

マリーは、自分が“人間であること”を隠さなければならない。一方でアーサーは、どんどん惹かれていく相手を“ロボット”だと思っているのに本気で愛おしく感じてしまっている。その中で、お互いに思い合っていながらも、なかなか距離が縮まらない……。そんな切なさやもどかしさも含めて、この作品ならではの恋模様が、楽曲からも伝わってくるんです。聴いていると、思わず「恋っていいな」って思えるような、胸がキュンとする楽曲になっていると思います。

そして、もうひとつの“クロス”は、マリーとマリー2の関係性。マリー2は生粋のロボットですが、とても優秀で、マリーにとっては心の支えのような存在。親友のようでもあり、頼れる相棒のようでもあり……そんな特別な立ち位置にいるんです。

マリー2役の小清水亜美さんも、演じながら「ここは少しだけマリーに歩み寄る気持ちで演じてみようかな」と、お芝居の中にほんのりと人間らしさを織り交ぜていらっしゃって。ロボットでありながら、そこには確かに“あたたかさ”があるんです。だからこそ、ただの機械ではなく、大切な存在としてのマリー2が、楽曲の中でもしっかりと息づいているように感じました。


曲の中には、そんなマリーとマリー2の“女の子同士の友情”も込められていて、ふたりでハモるパートがとても綺麗なんです。声が重なったときのハーモニーは本当に優しくて、心に残る仕上がりになっているので、ぜひ耳を傾けていただけたら嬉しいです。

――キャラクター性を考えると、マリーとマリー2が歌うというのは意外性がありますよね。

東山:ちょっと裏話になっちゃうんですけど、現場にいたときに「どうやら私たちがエンディングを歌うらしいですよ」という情報が入ってきたとき、「えっ!? マリーってボソボソ喋るし、マリー2は機械なのに、どうやって歌うの!?」って、ざわざわしたんです(笑)。

でも、実際に楽曲を聴いてみたら、冒頭にポエトリーリーディングのような詩的な掛け合いがあって、そこでキャラクターらしさがしっかり表現されていたんです。そこから美しいメロディと歌のパートが続いていくのですが、キャラクターの個性を感じられるだけでなく、楽曲としても純粋に素敵で……「1曲で2度おいしい」みたいな感覚なんですよね。

この構成がとても好きですし、「Cross heart」という楽曲の魅力がぎゅっと詰まった部分だと思っています。

■東山奈央の“内心ドキドキ”エピソードが可愛すぎる

――本作には“正体を隠して生きる”というテーマがありますが、ご自身の中で「隠していたけど実は……」というエピソードはありますか?

東山:うーん、私ってあまり秘密がないタイプなんですよね(笑)。けっこう何でもオープンに話してしまうので、「隠していたこと」ってあまり思いつかなくて。でも強いて言えば……「実は、すごく緊張しいなんです」。

そう言うと、よく「えー、そんなふうに見えない!」って驚かれるんですけど、自分では人一倍緊張するタイプだと思っていて。ステージやイベントに出ていても、外からは落ち着いて見えるみたいなんですが、実は頭の中が真っ白になっていることがしょっちゅうあるんです(笑)。

最近も、何人かでライブに出演する機会があって、出番前に3人で「頑張ろうね!」ってグータッチしたんです。そしたら、他の2人の拳はほんのりあたたかいのに、私の拳だけキンキンに冷えていて……「わっ、全然違う!」って(笑)。ああ、やっぱり私って緊張しいなんだなって、そのとき改めて実感しました。

もう15年近くこのお仕事をしていますが、多少は慣れてきたとはいえ、根っこの部分はやっぱり変わらないみたいですね。でも、そういうところも含めて、今の自分なんだなって思います。

――また、“無表情だけど心の中はドキドキ”というマリーにちなんで、東山さんが最近“内心ドキドキだったこと”はありますか?

東山:実は、マリーのアフレコ現場での出来事なんですけど……スタジオのロビーで私、おにぎりをモグモグ食べてたんです(笑)。そしたら向こうから西村純二監督が、ノシノシノシ……と、明らかに私のほうへ向かって歩いてきて。

その瞬間、「あ、怒られる!」って、反射的に思っちゃったんですよ。アフレコスタジオでご飯食べてたのがダメだったのかなとか、お芝居のことで何か言われるのかなって、頭の中で不安がぐるぐるして。もちろん、西村監督はとても優しくて柔らかい方なんですよ? でも私、性格的にすぐ「怒られるかも」って身構えちゃうタイプで(笑)。

「えっ、なんだろう、なんだろう……」と内心ドキドキしながら待っていたら、監督がニッコニコの笑顔で「東山さんは、本当においしそうに物を食べますね」って話しかけてくださって。それだけじゃなくて、「見るたびに何か食べてる気がします。とても幸せそうで、いいですね」って。

西村監督とは以前からご縁があるのですが、そんなふうにふわっとした言葉をかけてくださって、緊張が一気にほぐれました。あの瞬間の「ドキドキからの安心」って、マリーが味わっている気持ちにちょっと近いのかも……なんて思いました(笑)。

■不器用でもいい。東山奈央が大切にする、心を通わせるための一歩

――作中ではマリーとの生活を通じて“人間嫌い”のアーサーが少しずつ変わっていく様子が描かれますが、東山さんご自身が“人との距離の縮め方”で普段意識していることはありますか?

東山:いやもう、そんな魔法みたいな方法があるなら、私が教えてほしいくらいですよ(笑)。人と人って、それぞれ考え方も感じ方も違うから、「こうすれば絶対うまくいく」っていう正解がないのが、すごく難しいところだなって常々思っていて。MBTIだって16タイプもあるくらいですし(笑)。

そんな中で私が意識していることがあるとすれば……「あまり気にしすぎないこと」かもしれません。たとえば、「あの時あんなこと言わなきゃよかったな」とか、「傷つけちゃったかも」とか、「言葉選びを間違えたかも……」って、気にしようと思えばいくらでも気にできちゃうじゃないですか。でも、案外人って、そこまで気にしてなかったりするんですよね。

私自身も、誰かに何か言われてもそんなに引きずらないですし、たとえちょっと「ん?」と思うことがあったとしても、「ま、いっか」って流すことの方が多いです。だから、自分が誰かと距離を縮めたいと思ったときも、多少不器用でも、「あなたと仲良くなりたい」っていう気持ちさえちゃんと伝われば、それだけで十分なんじゃないかなって。

たとえ少し間違えたとしても、思いがちゃんと届いていれば、相手もきっと受け取ってくれる。そう信じて、ポジティブな気持ちで向き合うようにしています。うまくいかないこともあるけれど、それでも“伝えようとすること”が大事だなって思いますね。

――たとえば、最初の一歩として「これ、人にやったら喜ばれるかな」といった気遣いを大切にしたり?

東山:うーん、自分だったら「こうしてもらえたら嬉しいな」って思うことはあるんですけど、それが本当に相手にとっても嬉しいことかどうかっていうのは、やっぱり人それぞれ違うので、正直あまり確信はないんですよね。

「自分が嬉しい=相手も嬉しいはず」って思いすぎると、それはちょっとエゴになっちゃうのかなとも思うので、いつも手応えがあるわけではなくて。でも、だからといって何もしなかったら、それはそれで何も生まれないなとも感じていて。

結局は、自分が「これ、いいことだな」って思えることが浮かんだら、あまり深く考えすぎずに素直にやってみる。喜んでもらえたらラッキー、もしそうじゃなくても「まあ、ドンマイ!」くらいの気持ちで(笑)。そんなふうに、自然体でいられるのがいちばん無理がなくて、心地いいんじゃないかなって思います。

――そうした行動まで含めて、「あまり気にしすぎないこと」が大切なんですね。また、東山さんが「この人と今後も付き合っていきたいな」と思える人には、どんな共通点がありますか?

東山:物事をポジティブに受け止められる人には憧れますね。私は根っこの部分がけっこうネガティブなほうなので、何か起きると、まず嫌なところが目に入っちゃうんです。不安になったり、先のことを考えて落ち込んでしまったりして……。

でも、私が「いいな」と思う友達は、たとえピンチに直面しても「ここから学べることがあるよね」とか、「むしろ面白くない?」って、さらっと言える人なんです。そういう前向きな視点をもらえると、自分では見えていなかった景色に気づかされて、「あ、そうかも」って思えるんです。

特に印象に残っているのが、声優仲間の西明日香ちゃん。ずっと昔に肺気胸で手術を受けたそうなんですが……普通ならビクビクしちゃうじゃないですか。でも西ちゃん、「なんか肺をコソコソされてるの、くすぐったいかも!」って言ったそうで(笑)。それを聞いたお医者さんも「手術中に笑ってる患者さん、初めて見ました」って驚いていたらしくて。もう、そのエピソードを聞いたとき、「やっぱり西ちゃんすごいな」って思いました。

無理して前向きなことを言うんじゃなくて、ナチュラルにそう思える。そういう人って、やっぱり一緒にいると救われるし、尊敬するなって思います。

――最後に、放送を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

東山:マリーとアーサーは、それぞれ苦しい過去を抱えながらも、ようやく“自分を理解してくれる存在”に出会います。その姿を見て、「運命の人って、本当にいるんだな」と感じました。お互いを大切に思い合うふたりの関係性からは、あたたかくて優しい空気が生まれていて、作品の現場全体にもその温もりが広がっていたように思います。

この作品には、クスッと笑えるような軽やかな楽しさがありながらも、心の奥にじんわりと染み入るような、繊細な感情が丁寧に描かれています。「見てよかった」と思っていただける、そんな優しさに満ちた物語になっていると思います。

原作ファンの方も、今回初めてこの作品に触れる方も、きっと心に何かが残るはずです。どうか最後まで、あたたかく見届けていただけたら嬉しいです。

(取材・文・写真:吉野庫之介)

 テレビアニメ『機械じかけのマリー』は、10月5日よりTOKYO MXにて毎週日曜22時放送。ほか各局にて順次放送開始。

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