連続テレビ小説『あんぱん』で北村匠海演じる“アンパンマンの生みの親”柳井嵩の弟・千尋を好演し、俳優として大躍進を遂げた中沢元紀。中沢にとってターニングポイントともいうべき1年の姿を追った初めての写真集『ルート』(ワニブックス)が10月1日に発売となった。
【写真】優しい笑顔や、真っすぐな眼差しも! 中沢元紀、撮りおろしショットが満載!
◆1年をかけて撮影した写真集、顔つきの変化に驚き
本写真集は2024年5月から2025年7月まで、中沢の四季をそれぞれ違ったカメラマンが切り取った一冊。春夏秋冬、季節を楽しむ姿や、スタジオでのポートレート撮影や故郷への旅も収録。それぞれの時期においてロングインタビューも敢行し、中沢の心の軌跡も映し出す。
――初めての写真集となりますが、お話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
中沢:めちゃくちゃうれしかったです。僕の中で写真集というものは求めてくださる方がいないと作れないものというイメージがあったので、本当にありがたいなという気持ちにもなりました。
――今回のタイトル『ルート』にはどんな思いを込められましたか?
中沢:即決でした。実家で飼っている猫の名前でもありますし、1年間かけて撮っていただくということで“道のり”「ROUTE」という意味、そして地元での撮影やデビューするまでのことを語ったインタビューも収録するなど僕自身の根っこという意味での「ROOT」、3つの意味を込めています。
――完成した作品をご覧になっての感想はいかがですか?
中沢:衝撃でした。まず顔が全然違いました。周りの方から顔つきが変わったと言ってもらってはいたんですけど、自分で自覚することがなかったので驚きました。時の流れも感じましたし、その時に演じていた役として生きている表情をしていて、まとっている空気感もいつもと違っている感じがあります。
――撮影で大変だったことはどんなことでしょう?
中沢:どの撮影も全部楽しんでやることができましたし、本当に自然体でリラックスした僕を撮っていただいた印象があります。あまりカメラを意識せずに撮ったので、気張らず自然体でいれたのかなと思います。
――お気に入りの1枚を挙げるとすると?
中沢:本当に選べなくて(苦笑)。全季節にお気に入りの写真があるんですけど、しいて挙げるとすると冬に駅で待っているカットが好きですね。雪も降ってきて、その1枚だけでもストーリーが思い浮かぶようなカットになっています。
――地元での撮影はいかがでしたか?
中沢:小学生のころによく行っていた公園や家族で通っていたパン屋さんでも撮影させていただきました。懐かしさを感じながら、「この道こんなに狭かったっけな?」と思ったり(笑)。小さいころの記憶のまんまの場所に今の自分が行ってみて、成長しているんだなという気持ちにもなりましたし、友達や兄弟と遊んだ思い出もよみがえってきて、エモいって言ったらいいんですかね? そんな気持ちになりました。
――撮影で特に思い出に残っているエピソードを教えてください。
中沢:飼い猫のルートは家ネコなので、普段外に出ることがあまりないんです。外に連れ出して写真を撮ったのですが、最初は大丈夫だったんですけど、後からだんだん機嫌が変わってきちゃって。
――鍛え上げられた腹筋も見どころの1つかと。
中沢:撮影前に頑張ってパンプアップしました。運動は普段から好きでやっていて、筋トレもランニングもしています。俳優は体が資本なので、体作りも大事だなとずっと続けているので、いつでも脱げますよ(笑)。
◆『あんぱん』千尋は「10年後役者人生を振り返ったときも色濃く残る役」
――ロングインタビューも、この1年での中沢さんの成長が感じられる内容でした。
中沢:主に『あんぱん』に携わる時期のインタビューで、お芝居や現場の居方など1年でけっこう変わっているなという感覚があります。第一線で活躍されている先輩方とお芝居をして揉まれる中で、役者として気持ちの面で変わっていってる部分が大きかったので、そうした変化も読み応えがあると思います。
特に冬のインタビューはたぶん『あんぱん』で最後に兄貴と2人で対話するシーンの前後に収録したものだったと思うので、鮮度の高いインタビューを楽しんでいただけるのではないかなと思います。
――『あんぱん』のお話が出ましたが、千尋役の反響はいかがですか?
中沢:僕のおじいちゃんおばあちゃんはもちろん、その知り合いの方も観てくれていましたし、本当に多くの方が観てくださった作品なんだなと実感しました。会う人会う人みなさん「朝ドラ良かったね」って言ってくださるので、影響力の大きさも感じています。でも、街で直接声を掛けられたことはまだないんです(笑)。
――『あんぱん』、そして千尋という役との出会いは中沢さんにとってどんなものでしたか?
中沢:本当に大きな出会いです。この先いろんな作品をやっていったとしても、10年後役者人生を振り返ったときに色濃く残っている役、作品だと思います。撮影期間も長かったですし、共演者のみなさんとのお話やお芝居を通して得るものが多かった現場でした。
千尋の精神や性格は僕の中にもたぶん投影されていて、「千尋だったらどうするかな?」と考える時もありますし、これから「千尋みたいなカッコイイ男になっていきたい!」という思いもあります。
◆『あんぱん』『最後の鑑定人』を経て作品に挑む姿勢に変化
――『下剋上球児』『ひだまりが聴こえる』、そして今回と1年に1度インタビューさせていただいていますが、デビューから3年が経って、どんなところが変わったなと感じられますか? 特にこの1年は中沢さんにとって重要な1年だったのではないかと思いますが…。
中沢:本当に濃い1年でした。変わった部分は……ほぼ全部(笑)。お芝居に対してもそうですし、台本の読み方も現場の居方も変わりました。
メンタルな部分もそうですね。自信がついたな、ちょっと余裕が出てきたな、視野が広くなったなと感じます。『下剋上球児』や『ひだまりが聴こえる』のときは、自分の芝居やシーンのことしか考えられていなかったです。現場でもあまり話しかけに行く余裕がありませんでしたが、『あんぱん』や『最後の鑑定人』を経て、自分のやることや役割を果たしつつも、いろんな人とコミュニケーションをとって現場の雰囲気を感じられるようになってきました。
――これまでは同世代が多い作品が続いていましたが、いろいろな世代の共演者の皆さんがいたことも大きいかもしれませんね。
中沢:同世代が一緒だとお互いに意識しあっていたと思います。でもそれは悪いことではないと思っていて、『下剋上球児』では絶対に必要なものでした。でも、『あんぱん』もそうですし、『最後の鑑定人』は若手が少なく、経験値の高い方たちばかり。(主演の)藤木(直人)さんにとってデビュー30年の節目の作品だったそうで。段取りやカメラワーク、カット割りなど全部分かったうえでお芝居されていたのがすごいなと思いましたし、とても勉強になりました。自分の30年後ですか? 1年後のことも想像できないので、まったく想像がつかないです(笑)。
――この後は、舞台『シッダールタ』という新しい挑戦も控えています。
中沢:舞台は初めてなんです。映像と舞台でもちろんお芝居も変わってきますし、1つの作品を生で、しかも何公演もやるというのは初めて。1ヵ月以上稽古をやるというのも初めてですし、なにもかもが初めてなので不安もあるんですけど、白井(晃)さんの演出で草なぎ(剛)さんが主演。たくさん揉まれて、役者として成長したいと思っています。
――映像作品も『君の顔では泣けない』(11月14日公開)、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(12月5日公開)と出演作が続きます。
中沢:ありがたいです、本当に。役柄が全く違うので、観てくださる方も楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。これからもいろんな作品に携わっていきたいですし、悪役のほうの役の振れ幅も広げていきたいです(笑)。
――お忙しい毎日だと思いますが、最近ハマっていることはありますか?
中沢:リフレッシュも兼ねてですけど、料理はずっと好きでやっています。魚料理とかにも挑戦していきたいですし、秋になると旬のものも増えていくので、そういう料理にも挑戦していきたいです。得意料理はずっと豚汁って言っているんですけど、もっとレパートリーを増やしたくて。最近は土鍋を買いたいとも思っています。
――現在25歳。今後20代のうちに挑戦してみたいことはありますか?
中沢:ずっと学生役が多かったので、『最後の鑑定人』が初めての職業ものでした。刑事もまたやりたいですし、医者も弁護士も、いろいろな職業の役に挑戦していきたい気持ちがあります。
――最後に、写真集を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。
中沢:1年かけて撮っているので、本当に贅沢な1冊になっていると思います。『ルート』っていうタイトルにふさわしい、僕のこの1年の道のりを自然体で撮っていただき、絶対に満足していただける自信があるので、宝物にしていただけたらうれしいです。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG Inc.])
中沢元紀ファースト写真集『ルート』は、ワニブックスより10月1日発売。価格3740円。