10月18日のNHK総合『未解決事件』File.02「北朝鮮 拉致事件」は、特別編としてドラマとドキュメンタリーの2本立てで放送する。ドラマは、北朝鮮と対峙した外事警察の苦悩と限界を当時の捜査官に、北朝鮮での過酷な日々を蓮池薫さんに取材し、映像化。

北朝鮮工作員を追う外事警察の捜査官を高良健吾、蓮池薫さんを田中俊介が演じる。

【写真】蓮池薫さんを演じる田中俊介「ご本人にお会いし、今作に挑む覚悟を決めました」

 2002年10月15日の拉致被害者5人の帰国から23年。しかし政府が認定した17人の被害者のうち12人は未だに帰国が叶わず、安否さえもわかっていない。

 今回、日本人の失踪事件が相次いだ1970年代から1990年代前半に至る警察と北朝鮮工作員の攻防を徹底取材。

 ドラマでは長年北朝鮮と対峙してきた外事警察の捜査員や幹部への取材をもとに、当時の知られざる捜査の裏側を映像化。さらに1978年に北朝鮮に拉致され、24年間現地での暮らしを余儀なくされた蓮池薫さんも制作に協力した。

 「拉致の解決を阻むものはなにか?」―国家と個人、その狭間でもがき続けた人々を見つめる。

 ドキュメンタリーも同日放送。外事警察、外交官など100人を超える関係者への取材から浮かび上がる拉致事件の深層とは?

 『未解決事件』File.02「北朝鮮 拉致事件」は、NHK総合にてドラマを10月18日19時30分、ドキュメンタリーを同日22時放送。

 「北朝鮮 拉致事件」ドラマ 作・大森寿美男、高良健吾、田中俊介のコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■作・大森寿美男

 毎回注目してきた「未解決事件」に関わることができました。今回はあの拉致事件です。
これは、いつ、どこで、誰が、何のために犯行に及んだのか、それが解明できてもまだ解決に至らない、つまり犯人も動機も居場所さえもわかっているのに、生きている被害者を取り戻すこともできない、ミステリーの常識から見れば、稀有な未解決事件ということになります。これを解決することは、この世界から分断と戦争をなくせないことに共通する難問です。それでも我々人類には、諦めずに立ち向かう知恵はあるのか。その糸口を見つけることはできるのか。そんな思いに駆られながら、人間の無力さや儚さを思い知るように、シナリオに取り組むほかありませんでした。とはいえ、私のしたことはほんの少しです。ディレクターの桑野氏と未解決事件チームが入念な取材を重ね、膨大な資料を集めて、伝えたい情報を精査した構成を元に、私は少しでもドラマとしての醍醐味を出せるようにお手伝いをしたに過ぎません。特に桑野氏の演出家として長い時間をかけた執念と、強い意志と言葉が反映されたものになったので、共同脚本とさせてもらいました。

 今は一視聴者として、人として、この未解決事件の帰着を期待して待つばかりです。

■喜多見守和役:高良健吾

 僕自身は2000年の日朝国交正常化交渉が北朝鮮拉致事件を知る初めてのきっかけだったと思います。今回の役を頂いてから北朝鮮拉致事件について初めて知る事が多すぎました。視聴者の方々も初めて知る出来事や、時系列があると思います。
それはこのドラマの面白さというよりは、怖さでもあります。無関心であり続ければ、感じない怖さです。僕は役とは全く違う時代、人生を送りながらも、役の葛藤には共感を覚えました。しかし、役の立場によってはなにも共感ができず、ただただ残酷なだけだったと思います。人と人、 国と国の問題の大きさは違えど、そこから生まれる葛藤には多くの人が、自分を重ね、なにかを考えるきっかけになると思います。時代の問題は大きく変化しますが、人間の問題はそこまで変化しないのではないか。そんな事を考える日々でした。1人でも多くの方に北朝鮮拉致事件を知ってもらうこと、改めて考えるきっかけになることが、これからの未来に繋がりますように。

■蓮池薫役:田中俊介

 北朝鮮が拉致を認め、5人の拉致被害者の方々が帰国を果たしてから23年の月日が経ちました。未だに帰国が叶っていない拉致被害者の方々がいらっしゃいます。プロデューサー、監督の熱意に心を動かされ、新潟県柏崎市の海岸に足を運び、蓮池さんご本人にお会いし、今作に挑む覚悟を決めました。進展のない拉致問題。
私たちに何ができるのか。それは、拉致問題は未解決なのだということを忘れないこと。再び多くの方に関心を抱いてもらうことが、この膠着状態を打開するきっかけになると信じています。

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