井ノ原快彦がナレーションを務める大ヒットアニメシリーズの第4弾『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』が10月31日に公開される。すっかりおなじみとなった本上まなみとのタッグでキャラクターたちの奮闘を温かく見守る井ノ原に、最新作の見どころやすみっコたちが愛され続ける理由を聞いた。



【写真】イノッチの優しいオーラに癒やされる! 井ノ原快彦、インタビュー撮りおろしショット

◆新キャラ“おうじ”&“おつきのコ”のバディ感に感動

 すみっコたちの暮らす町に雨が続いていたある日、空からおうじが落ちてくる。おうじに頼まれて水不足になった雲の上を助けるため、すみっコたちが空の王国で大冒険を繰り広げる。

――井ノ原さんと本上さんの声が欠かせない本シリーズ。収録を終えての感想はいかがですか?

井ノ原:改めて特殊な映画だなって思いました。ひとりで全部説明するのではなく、本上さんとのすみ分けも面白いし、それぞれのすみっコたちを輝かせられたらいいなっていうようなナレーションが入ってくるんですよね。今回は特に、画面に文字が多くて、お子さんもそうですけど、大人もいつのまにか吸い込まれるような感じの作りになっていると思います。

――ナレーションにはどんな気持ちで臨まれていますか?

井ノ原:基本見守るスタイルで。「じゃ、俺、誰なんだ?」っていう感じですが(笑)、もうひとりのすみっコみたいに思ってもらえたらいいなって思いながらやっています。彼らが思っているようなことを代弁するというか、フワっと音としてみなさんに届けられるような立場であればいいなという気持ちですね。

――今回は、“ふたりのコ”空の王国のおうじとおつきのコが新キャラクターとして登場します。

井ノ原:おうじとおつきのコは、2人でひとつなんだなというバディ感があるんですよね。おうじはおつきのコを守ろうとするし、おつきのコはおうじを守ろうとする。
お互いを思いやってるのがわかるんだけど、おうじはおうじで頑張りすぎちゃうんですよね。もっと任せてもいいんだなということをすみっコたちに気づかされたり、冒険を経て2人の関係がより深くなって、自分を大事にすることが互いを大事にすることにつながると気づいていくところが素敵だなと思いました。バディ関係というか、どっちも友達だと思ってる感じなんですよね。そこもすごくいいなぁと思いました。

おうじとおつきのコはライオンとヒツジがモチーフのキャラクターなんです。おうじのたてがみは、まだ生えてきていないから雲を付けているらしいんですけど、これから本物の毛が生えそろったときにきっとおうさまになるんでしょうね。そんなところもかわいいキャラクターとなっています。

――空の王国が舞台となりますが、アミューズメントパークのようで、すみっコたちが繰り広げる冒険がすごく楽しそうでした。

井ノ原:本当ですよね。すみっコたちがいろんなことに立ち向かっていくんですけど、観ている感じはすごく楽しいんですよね。モンスターが出てきたりと大変な冒険なんですけど、そのモンスターの逃げる姿がまたかわいくて! 空の王国に行けたら楽しいだろうなと思って観ていました。

◆映画館で子どもたちの声や反応を感じながら観るのがオススメ

――シリーズ第4弾となりますが、すみっコたちが多くの人に愛される理由はどんなところにあると思われますか?

井ノ原:すみっコたちもそれぞれキャラクターが強いコたちで、“たぴおか”も“えびふらいのしっぽ”も“とんかつ”も残されちゃったりと、「実は…」っていうものをそれぞれ抱えているんですよね。
言う必要はないけどどこかに抱えているものって、家庭の事情や生い立ちなどみんな少なからずあると思うんです。そんな中、すみっコたちがちゃんとみんなで寄り添って、一人が何歩も先に行くとかじゃなく、みんなで一緒に一歩進む姿に感じる何かがあるんじゃないかなと思います。

しろくまも、「しろくまなのに寒いのが苦手」とか、「なのに」とか言われちゃう。日本は「~でなければならない」が多いですが、すみっコたちはすべて肯定してあげたくなるキャラクターなんですよね。僕らの周りを取り巻く人々も、それぞれのキャラクターにあてはめて考えていくと、「あいつにもいろんなことがあるんだろうな…」と思えてくる。ムカつくおじさんも、一回“しろくま”にあてはめて考えると、「かわいそうかも…」と思えてきて、許せるかもしれないですよね(笑)。

――以前、キャラクターでは“えびふらいのしっぽ”が推しだとおっしゃっていました。

井ノ原:変わらずです(笑)。今回“えびふらいのしっぽ”が新しく合体するんですよ! それがめっちゃいいです。とんかつと合体してでかくなるんです。2人で油のお風呂に入ったりするのもいいんですよね。

――“えびふらいのしっぽ”のどんなところに魅かれますか?

井ノ原:そもそも僕、エビフライのしっぽを残したことがないんです。
家族が残していたらもらうくらい好きなんです(笑)。あとは、あぶれちゃった、残されちゃったというところに哀愁を感じるじゃないですか。僕フットサルをやるんですけど、2人1組になる時にあぶれちゃって知らない人と組んだりした時に、「お互い残っちゃいましたね…」みたいな、ああいう哀愁を日本人はよく知ってますからね。

でも残り物には福があるっていう言葉もあったりしますから! まさに残されたからこそ、“えびふらいのしっぽ”が誕生するわけですしね。

――ご自身に似ているなと思うキャラクターはいますか?

井ノ原:どうだろう…。みんなちょっとずつ入ってる気がするんですよね。そもそもみんなすみっこに集ってきたコじゃないですか。みんなどこか似ていて、「わかる、わかる」みたいなところが多いんですよね。

――ちなみに、井ノ原さんおすすめの『映画 すみっコぐらし』の楽しみ方はありますか?

井ノ原:コロナ禍に家で観て泣いたっていう人も多いんですけど、僕は映画館で観るのがおすすめなんですよね。なぜかっていうと、子どもの声がすごく聞こえてくるんですよ。彼らの笑い声から「こういうところが楽しいと思うんだ」という発見があって面白いと思います。大人が気づかないところを気づかせてくれるところがあるんですよね。
「かわいそう…」とか聞こえてきて、「あ、そうか。これかわいそうだよね」と、大人はスルーしちゃいがちなところを気づかされる。すみっコたちは言葉をしゃべらないからこそ子どもたちには伝わるものがあるんでしょうね。

◆『映画 すみっコぐらし』は自分が関わらなくても続いてほしいと思う作品

――今回、おうじが出てきますが、井ノ原さんにとって“王子”と言われて思い浮かべる人はどなたでしょう?

井ノ原:東映に「おうじ」という名前のプロデューサーさんがいるんですけど、その人が今パッと思い浮かびました(笑)。

あとは、誰だろう…。ケンティー(中島健人)ですかね。だって、ケンティーは食事に行くと、バラの花束とか持って来てくれるんですよ。一度、ケンティーと、光ちゃん(堂本光一)と、東山(紀之)さんと4人で飲んだことがあるけど、僕だけタイプ違うなと思ったことがあったな(笑)。

――井ノ原さんご自身の中に“王子”を感じる部分はありますか?

井ノ原:子どものころから周りに女性が多かったので、女性は靴が違うんだとよく言われてたんですよね。ハイヒールっていうのを履いているから階段は危ないんだと。なので、必要であれば手を添えることはありますね。それは染みついていると思います。
断られることもあるんですけどね(笑)。

――改めて『映画 すみっコぐらし』シリーズは、井ノ原さんにとってどんな存在の作品ですか?

井ノ原:「観終わるまで普通に観て泣いちゃったけど、最後に名前を見たら、イノッチだったんですね」と言われたことがあって、とてもうれしかったんですね。あまり声の仕事をやったことがなかったから、そういう風に言われるのは初めてでしたし、僕にとって新しい扉を開いてくれた作品ですね。誰に感謝していいかわからないですけど、声色みたいなものはないけど、こういう声を出したいというニュアンスは出せるんだなと気づいて。それは歌をやっていたからかもしれないですけど、僕の中ではやりがいや手ごたえがあるお仕事でもあります。

このコたちがすごく大事だなと思うようにもなったし、自分の考え方の引き出しも増やしてくれたし、人生でいろんなことを助けてくれた作品だなと思うので、ずっとあり続けてほしい作品です。自分が関われるのはすごくうれしいけど、僕じゃなかったとしても続いてほしいと思う作品ですね。

(取材・文:佐藤鷹飛 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])

 『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』は、10月31日公開。

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