勇者とは、この世で最悪の刑罰である――。常識を根底から覆す世界観で描かれるダークファンタジー『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』。

《女神》殺しの罪を背負い、懲罰勇者として戦い続ける元聖騎士団長ザイロ・フォルバーツと、剣の《女神》テオリッタ。過酷な運命に縛られながらも、歪な契約によって結ばれた二人は、戦いの中で少しずつ関係を変化させていく。本作でザイロ役を務める阿座上洋平と、テオリッタ役を務める飯塚麻結に、作品と向き合った最初の印象から、それぞれのキャラクター像、二人の関係性、そして収録現場の空気感まで、じっくりと話を聞いた。

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■“勇者=刑罰”という物語の始まり

――本作は「勇者=最悪の刑罰」という衝撃的な世界観が印象的ですが、最初に原作に触れたときの率直な印象を教えてください。

阿座上:まず、「勇者」という言葉が持つ意味が、僕たちの知っているイメージとは大きく異なる作品だと感じました。主人公が勇者でありながら、その立場が称賛ではなく“罰”として描かれている。その価値観の転倒が、とても強く印象に残ったんです。

この世界では勇者はひとりではなく、勇者刑に処された者たちがそれぞれ存在し、絶望的な状況の中で自分なりの在り方を模索しながら生き、戦っている。その姿に、人間味と不思議な魅力を感じました。重く厳しい世界観の中でも、キャラクターたちが確かに“生きている”と感じられるところが、この作品ならではだと思います。

飯塚:私も最初は「よくある勇者モノなのかな」という感覚で読み始めたんですが、すぐに「これは覚悟を持って向き合う物語だな」と思いました。世界観がとても過酷で、簡単に読み流せる作品ではないな、と。
それでも、その過酷さの中でキャラクターたちが抗い続け、それぞれの意志を胸に戦っている姿が強く心に残りました。ただ暗いだけではなく、そこに確かな感情のうねりがあるんです。

また、オーディションの段階からテオリッタを意識して読んでいたこともあり、自然と彼女の視点で物語を追っていました。読み進めるほどに「どうか救われてほしい」という気持ちが強くなり、物語の痛みや切実さを、より近くで感じた気がします。

――元は聖騎士団長でありながら、《女神》殺しの罪で懲罰勇者となったザイロ。阿座上さんは彼をどんな人物だと捉えていますか?

阿座上:ザイロは《女神》殺しという大きな罪を背負っていますが、それは単なる冤罪というより、彼自身にも背負わざるを得なかった事情がある。その“後ろめたさ”を、彼はちゃんと自覚している人物だと思っています。

同時に、自分よりもはるかに高い場所で、世界を裏から動かしている存在がいることにも気づいていて、その構造に絶望している。でもだからといって、人間そのものを諦めてしまったわけではないんです。救える命があるなら、手を差し伸べたいという優しさは、確かに残っている。口は悪くて乱暴で、粗雑に見える部分も多いですが、根っこの人間らしさは失われていない。その歪さや泥臭さこそが、ザイロの魅力なんじゃないかなと思っています。


演じる上では、いわゆる“かっこいいダークヒーロー”になりすぎないように意識しました。ふとした瞬間に人間味や、どこかチャーミングな一面が滲むような存在であれたらいいな、と。完全な強者ではなく、どこか親近感を覚えてもらえるような役作りを心がけました。

――剣の《女神》でありながら、褒められることや頭を撫でられることを好むなど、愛らしい一面もあるテオリッタ。飯塚さんは彼女をどう捉えていますか?

飯塚:最初はとても素直に、《女神》という存在としてテオリッタを受け止めていました。人類を救うために戦い、自分を犠牲にすることもいとわない、強い使命感を持った存在だな、と。ただ、物語を読み進めていく中で、この作品における《女神》は、一般的なイメージとは少し違う存在なんだと感じるようになりました。

戦うために作られた存在であり、必ずしも万能でも、絶対的でもない。勇者がそうであるように、《女神》もまた、この世界ならではの歪みを抱えているんですよね。その一方で、アニメを観る方それぞれが持っている「女神像」も大切にしたいと思っていて。神聖さと、幼さや愛らしさ、その両方をどう共存させるかを意識しながら演じています。

結果的に、テオリッタは作品の中で“癒し”の役割も担っているキャラクターだと思っています。
そこは思いきり大切にして、「この子は可愛くいていいんだ」という気持ちを忘れずに向き合っています。

■何度でも味わってほしい、情報量と熱量に満ちた一作

――契約によって行動を共にすることになる二人ですが、どんな関係性だと感じていますか?

阿座上:ザイロからすると、最初はかなり“歪な関係”だと感じていると思います。《女神》殺しの罪を背負った自分と、自己犠牲を前提に動く《女神》。その存在そのものが、彼にとっては簡単に受け入れられるものではない。だからこそ、テオリッタに対しても、どこか距離を取って接している部分があるんじゃないかなと。

ただ、戦いを重ねる中で、少しずつ関係は変化していきます。相棒のようでもあり、ふとした日常の場面では、父と娘のように見える瞬間もある。もともと歪な関係だからこそ、そこからどう関係性を築いていくのかが、この二人の大きな見どころだと思います。

最初から完成された関係ではなく、時間をかけて“作られていく”もの。その過程こそが、ザイロにとっても重要なんじゃないかと感じています。

飯塚:テオリッタの側から見ると、最初はザイロの冷たく突き放すような態度に、戸惑う場面も多かったと思います。ただ、テオリッタ自身は契約した以上、一緒に戦うことに迷いはなくて、「タッグを組む」という意識は最初から持っている。


一方で、関係性としての信頼が、すぐに深まるかというと、そうではない。物語が進むにつれて共に戦う“チーム”にはなっていきますが、感情の距離感は、皆さんが想像するよりゆっくり縮まっていくのかなと思っています。

テオリッタは人間ではなく、あくまで《女神》という特殊な存在です。その立場から勇者や人類を見つめる視点は、最後まで失わない。その距離感を保ちながら、どう寄り添っていくのかを意識して演じていました。

――シリアスな作品だからこそ、現場でのリラックスエピソードや意外な裏話があれば教えてください。

阿座上:最初は、皆さん物静かな方が多くて、収録現場の空気もかなり静かだったんです。座長として何かしたほうがいいのかな、と悩んだのですが、ザイロ自身が人を寄せつけないキャラクターなので、あまり場を回そうとする余裕もなくて。

収録が進むうちに「これ、全然会話していないな」と気づいて、このままで大丈夫かなと思ったこともありました。ただ、物語が進んで仲間が増えていくにつれて、現場の空気も少しずつ変わっていったんです。

特に大西沙織さん(フレンシィ・マスティボルト役)が、自然と会話を生み出してくださって。日笠陽子さん(ニーリィ役)も、セリフ以上にたくさんお話しして帰られるタイプで(笑)。
そうやって、いろんな方がそれぞれの形で現場の空気を作っていくんだなと、改めて感じました。

飯塚:私は正直、収録中はあまり余裕がなくて、わちゃわちゃするタイプではなかったんです。休憩時間も、台本を見ながらそわそわしていることが多くて。

そんなときに、大西さんが「ここ座っていい?」と声をかけてくださって、そこからたくさんお話しさせていただきました。すごく自然に距離を縮めてくださる方で、その優しさに助けられました。

シリアスな作品だからこそ、そうした何気ないやり取りや空気作りが、本当に嬉しかったです。

――これから本作を観る視聴者に、注目してほしいポイントを含めメッセージをお願いします。

阿座上:まずは、やはりアクションやビジュアルの力を、感覚的に楽しんでほしいですね。情報量がとても多い作品なので、正直、一度観ただけでは受け取りきれない部分もあると思います。

1回目はとにかく、絵とアクションを全身で浴びるように観ていただいて、2回目以降は物語の流れやキャラクター同士の掛け合い、音作りやオープニングなど、少しずつ違うポイントに目を向けてもらえたら嬉しいです。

本当に何度も見返してもらうことで、少しずつ魅力に気づいていける作品だと思っています。スタッフロールが驚くほど長いのも、それだけ多くの人の力が詰まっている証なので、その一つひとつを感じてもらえたらと思います。


飯塚:PVなどを見ると、重厚で壮大なダークファンタジーという印象が強いと思うんですが、気負いすぎずに観ていただけたらなと思います。もちろん迫力あるアクションやシリアスな展開も大きな見どころですが、その中に、ふっと息を抜けるような日常のシーンや、少しコミカルな瞬間もあって。

「これは集中して観なきゃ」と構えすぎず、まずは一歩踏み出す気持ちで触れてもらえたら嬉しいです。

(取材・文・写真:吉野庫之介)

 テレビアニメ『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』は、1月3日よりTOKYO MX、関西テレビ、BS日テレほか全国28局で放送。

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