映画『市子』『ミーツ・ザ・ワールド』、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』『海に眠るダイヤモンド』と、さまざまな作品で確かな存在感を放ち俳優としてますます進化を続ける杉咲花。『愛がなんだ』をはじめとする作品で等身大の恋愛模様を繊細に描き、“恋愛映画の名手”とも称される今泉力哉。
【写真】杉咲花、ふんわりした笑顔がかわいい! インタビュー撮りおろしショット
◆自分なりの答えを見つけ出そうとする登場人物たちに勇気をもらえる
本作は、杉咲演じる主人公・土田文菜が、これまでに経験してきたさまざまな別れや、叶わなかった恋などから、人を好きになることにどこか怖れを抱いていて、「大切な人とはつきあわないほうがいいのではないか?」「そもそも恋愛とはなんなのか?」などとためらいながらも前に進んでいくラブストーリー。文菜を取り巻く男性陣に、成田凌、岡山天音、内堀太郎らが顔をそろえる。
――本作はどういったきっかけで生まれたのでしょうか?
今泉:杉咲さんと何かやりませんか?というお話をいただいたところが始まりです。僕は普段映画を、その中でも恋愛物を多くつくっているのですが、わかりやすく誰かと誰かが出会って結ばれていくというラブストーリーより、もっと日常の中の、ドラマや映画ではあまり取り扱われないような悩みというか、倦怠期みたいな温度の低い恋愛や、罪悪感にまつわることなど、それで悩んだり苦しんだりしている人があまり可視化されないけど確実にいる。そんな恋愛の話をつくりたいと思い書き始めました。
――脚本を読まれて、杉咲さんはどんな感想をお持ちになりましたか?
杉咲:文菜と文菜を取り巻く人たちがぐるぐると思考しながら人に会って会話を重ねて、とりたてて大きな事件も起こらず、もしかしたら登場人物が最後まで成長するようなこともないかもしれないお話だと思いました。文菜という人物は、人によってはただフラフラしているようにしか見えないかもしれませんが、個人的には、物事に対して自分なりに思考して、自分なりの答えを見つけながら、真剣に生きている姿にとても惹かれます。
あまりドラマとして取り上げられないような、シーンとシーンの間にきっと繰り広げられているであろう部分にこそ焦点の当てられた作品で。でも、そんな穏やかな時間のなかにも、その人なりの思いやりや、その人だけの苦しみがひっそりと滲んでいる。人との交わりを繊細に描いたこの脚本に私は救われています。
――文菜はどんな人物だと感じられていますか? 共感するところはどんなところでしょうか?
杉咲:共感できる部分は、ほとんどないんです。でも私にとっては、共感できるかどうかは演じるうえであまり重要ではないんですよね。
文菜は、なんというか、すごくさみしい人なのではないかなと思うんです。時間の有限性や、すべての出会いには別れがつきまとうということがどうしようもなくさみしい。そういった感度がとても高い人なのではないかと。そんなところにも惹かれているのかもしれません。
――役作りで心がけている点はどんなところですか?
杉咲:役作りというものがなんなのか、あまり分かっていない自分もいるのですが。たとえば、文菜は小説を書いている人で、そのヒントになるもの、生活していて感じたことや疑問に思うことをノートに書いていたりするんです。その内容を今泉さんから共有していただいて、劇中のノートに書き写しているのですが、そういうところからも文菜の思考を知ることができています。
それから個人的には、衣装を通して役に近づいていける部分も大きいと思っていて。着ている服って、その人の暮らしを映すものだと思うんです。文菜は古着屋でバイトをしている設定なのですが、どんな年代や質感のものが好みで、どんな風に着こなすのか。
◆『冬のなんかさ、春のなんかね』タイトルに込めた思い
――『冬のなんかさ、春のなんかね』というタイトルも印象的です。このタイトル誕生の経緯を教えてください。
今泉:言葉には重力というか、重くて硬い言葉、ニュアンスの柔らかい言葉など、その表情がいろいろあると思っているのですが、響きも含めて、なるべく重くないタイトルにしたいと思って、この言葉になったというのが1つ。
あと、この作品はほぼほぼ会話劇で、膨大なセリフ量があるんですけど。言葉を発する際に、その言葉の前に「なんか」「なんかさ」「なんかね」って言うような、その言葉そのものとしては意味を持たないかもしれないけど、でも1つの言葉を話すときにどれだけ真剣に、どれだけ怖れながら丁寧に発しているか、がわかるようなタイトルにしたいと思って、この言葉にしました。良い悪いじゃないですけどYouTubeとかの映像コンテンツだと言葉前後の間を切ってテンポを詰めているものが多いのですが、まさにそういう時に切られる言葉とか、余韻というか。そういう時間がたくさんあるドラマな気がして、すごく迷って5~6個タイトル候補を杉咲さんにも見せたりしながら、最終的には杉咲さんが選ばなかったタイトルにしました(笑)。
杉咲:そうですね(笑)。でも却下されたのは私だけじゃなくて…。
今泉:みんなほかのが好きだった、とか言わないでよ?(笑)
杉咲:冗談です(笑)。
――杉咲さんが感じる今泉作品の魅力はどんなところでしょう。
杉咲:今泉さんの作品が好きで欠かさず観ているのですが、たとえば何かが「消える」とか「なくなる」ということがあったとして、今泉さんは、それがなくなったことに対する深い悲しみではなくて、「確かに存在した」ことの価値を描く方だと感じるんです。今回もそういった今泉さんらしい広く優しい視点が端々に感じられて、ゆるやかに心が解きほぐされるような感覚になります。
――共演者にも魅力的なキャストの皆さんがそろわれました。
杉咲:そうですね。ご一緒したことのある方がたくさん出演されているので安心感もあります。特に成田くんとは、朝ドラの撮影で長い期間ご一緒して「次一緒にやれるのは5年後くらいかな」と話していたら、本当にそうなったんですよね。そんな感慨深さもあります。
さらに今泉監督をはじめ、山下敦弘監督や撮影監督の岩永洋さんなど、心から尊敬する作り手の皆さんが集結していて、ドラマ撮影の長い期間をこの夢のような座組でできることが本当に楽しみです。
――先日本読みが行われたとのことですが、手ごたえはいかがでしたか?
杉咲:初めてご一緒する内堀さんとのシーンは、思ってもみなかった方向から球が飛んでくるような愉快さのある時間で、とても素敵な刺激をいただきました。
本読みって、メイクも衣装も纏っていない、半分自分、みたいな状況でやるのですごく緊張するんです。監督が思い描いている方向と全然違ったらどうしようという不安もあったのですけど、なんだか大丈夫そうだなと思えた時間になった気がするので、ひとまずよかったです。
今泉:今回杉咲さんありきで書いていますし、何度かご一緒したこともあったので、声のトーンとか、ここはこうやってくれるんだろうなと想像しながら書いていたりしたんですけど、本読みの時点で「まじか!」みたいな瞬間があって。「この一言をこんな言い方してこんなに面白くなるの?」って。プレッシャーをかけるわけじゃないですけど、「すご!」「このセリフこんな言い方あるんだ!」ってなりました。それを杉咲さんに言ったら「2回はできません」って言っていたので、「現場では別パターンのもっとすごい言い方をしてください」っていう謎のやりとりをしてたんですけど(笑)、それくらい本読みも穏やかだったし、すごく信頼のメンバーでやれる気がしています。
◆杉咲花が作品選びで大切にする2つのこと
――杉咲さんは、2026年、杉咲花として活動されてから15年を迎えられます。振り返ると、どんな15年でしたか?
杉咲:月並みですが、長くて短い、本当にそんな感じでしたね。
そんな中で、節目節目で自分の感覚であったり、「演じる」ことの価値観みたいなものが変わってきている感じはあるのですが、『市子』という映画に携わった後くらいから、明確に「役を理解するということはできないんだな」と思うようになったというか。そこから自分のなかで、新たなフェーズに突入していった感じがあります。
――『市子』や『アンメット』など、ジャンルを問わず視聴者の心に残る作品にご出演されていますが、作品を選ぶ際に大事にされていることはどんなことでしょうか?
杉咲:俳優としての自分をアップデートさせたい思いはやっぱり常にあって。または、生活者としての自分が暮らしにフィードバックを与えられるかどうかも大きいかもしれません。そういった作品には進んで関わっていきたいなと思っています。
――最後に、作品を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いいたします。
杉咲:私は、今の時代って、一言の失敗も許されないような緊張感がある気がしていますし、自分の意志を持つことや自分の意見を表明することに高いハードルがあると思っているのですが、そんな中で、自分なりの答えを見つけ出そうとしていく登場人物たちがすごく好きなんです。そしてどこか勇気をもらえる。観てくださる方々にも、そんなふうに励まされる部分があったら嬉しいです。
今泉:主人公が万人から好かれるようなキャラクターというよりは、人によってはちょっと理解できなかったり、1人の人とまっすぐつきあうみたいなこととは違うような恋愛をして悩んでいたりする人なんですけど、自分は共感という言葉を疑っていて、すべての人から共感されるものをつくる、というよりは、観てくれた誰かが、自分はこの人のことをすごくわかるし、まるで自分が悩んでいることを描いてくれている、と思われるような、誰かの心に深く届くものをつくりたくて。「なんでほかのひとには理解してもらえない自分の悩みやつらさを描いてくれるんだろう」みたいなことが一番やりたいです。
自分は主に映画をつくってきたのですが、杉咲さんと話していた時に「今泉さん。ドラマもすごくいいんですよ」って言われたことがあって。ものすごく多くの人が、同時刻に、無料で見ることができるテレビという媒体。
(取材・文:渡那拳 写真:高野広美)
新水曜ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』は、日本テレビ系にて1月14日より毎週水曜22時放送。

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