見るたびに違う顔を見せる俳優がいる。『カムカムエヴリバディ』(NHK)の大月桃太郎(通称・桃ちゃん)で見せた人懐っこさ、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)のミナトで話題を呼んだ人たらしぶり。
【写真】青木柚、『じゃあつく』ミナトから印象激変! 醸し出す空気感に惹きこまれるインタビュー撮りおろしショット
◆共演の古川琴音は安心する存在でもあり、追いかけたい背中
――舞台『ピーターとアリス』は設定から斬新でワクワクしますね。台本を読んだ印象と、オファーを受けた時のお気持ちを聞かせてください。
青木:シンプルに本当に面白いなって。フィクションと現実といろんなものが入り混じっていくんです。「ピーター・パン」とか「不思議の国のアリス」って華やかなイメージがあるんですけど、その中にすごくシリアスでダークな部分が見え隠れしていて。すべてが混ざっていく感じが残酷でもあり、魅力的だなと思いました。
――不思議の国のアリス役は古川琴音さんですが、印象はいかがですか。
青木:しっかりセリフを交わすのは初めてなので、うれしかったですね。同じ事務所でもあり、もともとずっと見させてもらっていた方だし、アリスがぴったり。今も稽古中ですが、安心する存在でもあり、追いかけたい背中でもあって、本番に向けてもっとコミュニケーションを取れたらなと思います。
――実際に共演してみて、印象は変わりましたか。
青木:実際にお会いすると、表情のバリエーションというか、発想力がすごいなと。あんな素敵な声も聞いたことないですし。
――稽古の合間にお話しされることも?
青木:深い話をしたわけじゃないんですけど、作品への向き合い方とか、自分を客観視する部分とか、おこがましいですがちょっとだけ(自分と)重なるところが垣間見えて。この作品を通してもっと刺激をもらえるだろうなと思っています。
――同じ事務所に所属されている俳優さんには、それぞれどこか共通する空気のようなものを感じます。
青木:カリキュラム的なものがあるわけじゃないのに、近い空気をまとっているようで、でも全く違う人たちの集まりというか、個性の集まりで。不思議とどこか共通しているんだろうなというのは、先輩方を見ていて思いますね。
◆言葉を大切に思う気持ちは年々強くなっている
――実在したピーター・ルウェリン・デイヴィスという人物を、どう捉えていますか。
青木:いろんな狭間にいる人間だな、と。僕よりだいぶ年上で、家庭も持っている。ピーター・パンのモデルというレッテルがずっと付きまとって、苦しんでいる人。
――演出の熊林弘高さんとはどんなやり取りを?
青木:事細かく言葉について考えさせられる演出をいただいています。日頃の台本の読み方も変わりそうなくらい新鮮な体験です。まだ消化できていない言葉もいっぱいあるんですけど、他の方に言っているのを聞いてハッとさせられることも多くて。刺激的な稽古期間ですね。
――青木さんは以前、共演した先輩からのメッセージをスクショして保存しているとおっしゃっていました。言葉を大事にされているんですね。
青木:言葉を大切に思う気持ちは年々強くなっています。使う言葉の威力ってすごくあるなと思っていて。自分の中で思っていることをなかなか伝えられない時期があったんです。10代の頃は何も考えていなくて、気持ちを言語化できないからコミュニケーションがうまくできなかったり、演じる役が何を考えているかも分からなかったり。10代から20代の狭間でそこにぶつかったことで、自分が何を嫌で何を好きかという初歩的なものから日記のように整理していきました。
――演じる役の幅が広く、たくさんの役を演じてきたからこそ、自分自身に向き合いづらかった部分もあるのでしょうか。
青木:それは僕の性質的なもので、役をたくさんやっていたから自分の気持ちが分からないとかではなかったんですけど、普通に人見知りというか(苦笑)。社交的ではない面を克服したいなとは思っていました。自分が閉ざしてはいけないなと思い、ちょっとずつ開いていく感じでしたね。
――自己開示できるようになって、変わったことはありますか。
青木:自分はこう思っているっていう軸ができると、人と一緒にいる時に新たに気づくうれしい気持ちもあるし、「そういう考え方もあるんだ」と、自分とは違う人の気持ちや考え方にも気づける。シンプルな話ですけど、人を演じる仕事だから、そういう発想の広がりはあると思います。
◆俳優として目指すのは「その役が『生きている人』になること」
――お茶の間でも『カムカム』の桃ちゃん、『じゃあつく』のミナトと、記憶に強く残る役が続いています。
青木:今でも「桃ちゃん」って言ってもらえるし、会う人みんな「ミナト」って言ってくださる。人の記憶に浸透する役柄に出会えるのはありがたいことだなって思います。
――さまざまな役を演じる中で、ご自身の変化は感じますか。
青木:自分の考え方が広がっている面はあります。ただ、「役の幅が広い」ということにあまり意味を見出していなくて。結果的に幅が広いと捉えてもらえるのはうれしいけど、いろんな自分を見せたいみたいな気持ちはほとんどないんです。一つの役をやることが一番大事で、最終的にそれがいろんな役柄をやっているということになる。そこは大事にしています。
――青木さんご自身の役者としての“欲”は、どこに向かっていますか。
青木:その役が一番魅力的に見えるようにしたい。嫌なやつなら嫌なやつを全うする。その役が「生きている人」になることが目指すところなので、自分のいろんな面を見せるために役を演じるみたいなことになってしまうのは許せないんです。結果的に、たくさんの極端な役柄をいただけるのは巡り合わせであって、そこは感謝ですね。
――今後やってみたい役はありますか。
青木:近所の兄ちゃんみたいな役をやりたいです。
――青木さんは子どもの頃からこの世界で仕事をされてきて、24歳にして長いキャリアをお持ちですが、「大人になる」ってどんなことだと思いますか。
青木:良くも悪くも沸点が落ち着いてしまうこと、ですかね。人の意見を客観的に聞けるけど、直感的なものが出てこなくなったりする。例えば、今回ピーター・パンは無神経なことをたくさん言うんですけど、それは子どもの残酷さでもあり、自由でもある。そういうものを俯瞰して見られるようになると大人なのかなと思います。
――ピーター・パンを演じることで、ご自身も自由になれそうですか。
青木:稽古中、子どもと大人についてすごく考えるんですけど、「そんなことも言ってられないよな」って思ってしまう。自由にやろうと思っても全然自由にできない。今はちょっと頑張らなきゃなって感じています。
――ちなみに、青木さんは非常に落ち着いた印象がありますが、ご自身のテンションが一番上がるのはどんな時ですか。
青木:仕事中は落ち着いていることが多いのですが……親友と会って「『ラヴ上等』やばくない?」みたいななんてことない話をしている時ですかね(笑)。僕らのそういうおバカでアホな面は、友達同士の時だけ出るんです。
――最後に、2026年の抱負を聞かせてください。
青木:特に何かを決めていなくて。今までは自分に期待し続けて、その期待に値する自分でいなきゃって思っていたんですけど、もう応えられなくてもいいかなって。その場を純度高く楽しんで生きられたら、それでいい。「自分がワクワクしない自分になっちゃいけない」っていう気持ちはずっとあるんですけど、それを頭の一番上に持ってくるのをやめて、フラットにいただいたお仕事を一個一個やろうと思っています。
――本作も、言葉についてまた新しい発見がありそうですね。
青木:この舞台の中でも作家の言葉の威力が感じられるところがたくさんあります。言葉が全てじゃないとは思いつつも、また新しい気持ちをもらえそうな舞台になりそうです。
(取材・文:田幸和歌子 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])
舞台『ピーターとアリス』は、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて2月9日~2月23日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて2月28日~3月2日上演。

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