ノルウェー発のアニメ映画『スペルマゲドン 精なる大冒険』で、精子役として声優デビューを果たした、お笑いコンビ・ラランドのニシダ。引っ込み思案の精子、シメンをハマり役として演じ、観る者を大いに楽しませてくれる。

相方であるサーヤからの言葉も励みに、「胸を張って、精子役を演じた」というニシダ。もし自分が劇中のキャラクターならば「頭でっかちな精子」になりそうだという彼が、抜てきの率直な感想や、初恋の思い出までを語った。

【写真】外で元気いっぱい! “精子役”演じ切ったニシダの撮りおろしショット(14枚)

■精子役に感謝「ものすごくありがたい」

 思春期真っただ中の少年の体内で繰り広げられる精子たちの命がけの大冒険をミュージカルナンバーと共に描く本作。ゲーム好きの少年イェンスがついに、気になる女の子であるリサと初めてのチョメチョメを迎えることに。一方その瞬間、イェンスの体の奥に広がる精子たちの王国では、“スペルマゲドン警報”が発令。外の世界へ飛び出すことを夢見ながら悶々と暮らしてきた10億もの精子たちが、大冒険へとかけ出していく。

 映画での声優業は、ニシダにとって初めてのチャレンジ。2度の大学中退を経て、芸人として活躍している彼は「人生、思ってもみないことが起きる」と実感しているというが、そんな中でも精子役のオファーは「トップクラスに驚いた出来事」になったという。

 「精子に声を当てるってどういうこと? と思ったり、『本当かな?』という驚きがありました」と振り返りながら、「でも逆に、精子役をやりたいと思っても、この世の中の何人の人が精子役をできるのかというところですよね。山寺宏一さんだって、やっていないのではないでしょうか。ものすごくありがたいことです」と七色の声を持つベテラン声優の名前を挙げながら、誇らしげ。

 さらに「あの時を思い出せばできるのではないかと思った」と役作りにも、自信をのぞかせる。
「誰しもが通っている道。(生まれる直前)31年前の親父のきんたまを思い出せば、できるのではないかと。役作りがしやすい役なのかもしれないと思いました」と前のめりで新たなチャレンジに飛び込んだ。

■抜てきに、相方サーヤも太鼓判

 ニシダが精子役に抜てきされたニュースが発表されるや、SNSを中心に大きな話題を呼んだ。

 「周りの芸人さんも『ニュースを見たよ』と声をかけてくれましたし、SNSで“汁声優”とつぶやいたら、たくさんリツイートしてもらったり…。反響の大きさにびっくりしました。“汁声優”と言ったことで誰かに怒られるんじゃないかと思いましたが、今のところ怒られていないので大丈夫です!」と語りつつ、「思えば、誰だって他人事ではないでき事が描かれる映画ですから。あなたも、そしてあなたも、あの時の一投があってこそ、今があるんですから」とインタビュー部屋の一人一人の目を見ながら、生命の始まりを描く物語は「他人事ではない」と強調する。
 
 相方サーヤの反応は、いかがなものだっただろうか。「サーヤさんからも、『ニシダが一番うまく演じられる役柄は、精子だろう』というお言葉をいただきました。胸を張って、精子を演じました」と相方の言葉も励みになった。

 サーヤはNHK Eテレの性にまつわる教養エンターテインメント番組『はなしちゃお!~性と生の学問~』で、コンドームの妖精と共演している。
ニシダは「今回、僕が精子になったことで、相方はコンドームと精子と一緒に仕事をしているということになりますね。コンドームと精子と一緒にいるって、それはもうおちんちんですから」と笑顔を浮かべていた。

■シメンに共感たっぷり! もし自分が精子なら「頭でっかちな精子」

 映画の声優業は初めての挑戦とあって、ニシダは「不安もありました」と回想する。

 準備期間には、「他の芸人が声優をやっているアニメーションに触れてみようと思って、いろいろな作品を観ました。一番上手だったのは…すみません、お会いしたことはないんですが、宮迫(博之)さんです。宮迫さんが声優として出演している『Mr.インクレディブル』を、子どもの頃にも観たことがあったんですが、改めて観てみたらものすごく上手で。宮迫さんだとわからないくらいでした」と、鑑賞時には吹替えを担当した人の顔が浮かばないような演技が理想だという気づきもあった。「とはいえどのように参考にしたらいいかもわからなかったので、とにかくプロポリスをたくさん食べて、体調を整え、しっかりと声が出るようにして現場に向かいました」。

 どこか頼りないけれど、オタク心や好奇心を武器に奮闘していくシメン。ニシダが時にキュートに、時に勇ましく、シメンを愛らしいキャラクターとして演じきっている。

 「すごくかわいい」と役柄に愛情を傾けたニシダは、「シメンくんは、引っ込み思案の精子で、あまり前に出ることができない精子なんです。やっぱり精子って前向きなイメージがあって、前へ、前へと出ていくものだと思うんですが、シメンくんは引きこもりがちの精子。
インドア派の精子って、あまりいないですよね」とにっこり。イェンスの体内という安全地帯にいたい、発射の瞬間を迎えたくないと願うシメンに心を寄せるところも多く、「僕もそんなに外交的な方ではなく、誰かに勝てるとも思っていない。自分は一番にならないだろうと考えているタイプなので、シメンくんに共感ができた」という。アフレコはスムーズに進み、「3時間で録りました。監督が『いただきました!』とすぐにいただいてくれるんです」とスタッフにとっても文句なしの精子役だった様子だ。

 劇中には、シメンをはじめ、勝ち気でまっすぐなカミラ、圧倒的な権力を誇るジズモなど、個性豊かな精子たちがたくさん登場する。もしニシダが精子だとすると、どのようなキャラクターになりそうか聞いてみると、「頭でっかちな精子になると思います」と回答。「多分、いろいろと勉強はすると思うので、机で勉強したことがいざとなると役に立たなかったりするタイプ。劇中に登場した、体験に基づかない知識を述べる教授みたいな感じだと思います」と考えを巡らせていた。

■ニシダ、初恋は「スペイン人のマダム」

 イェンスとリサによる、10代の恋。そして彼らの体内で大冒険を繰り広げる精子たちの姿が、同時に描かれていく。観ていると、自分の体にも思いを馳せたくなるような映画だ。


 ニシダは「こういった精子たちが自分の体の中にもいるんだと考えたら、なかなか無下にできないところもありますよ」と切り出しつつ、「精子たちが頑張っている、そういった過程を経て生まれてきたんだと思うと、感慨深いものもあります。イェンスとリサ目線で見ると、まだ学生だし、これだけ対策をして受精したら困るという気持ちにもなるし、精子側からすると、なんとか卵子に辿り着きたいと思う。ストーリーとしてすごく面白いし、学ぶところもあるという、絶妙なバランスが取れた映画」だと太鼓判。

 ちなみにニシダの初恋は、「僕は帰国子女で、子どもの頃は海外にいたんです。初恋は小学生くらいの頃だと思いますが、同じマンションにいる、スペインのマダムでしたね。きれいな顔をしているなあとドキドキしていました」と笑顔。思い出の10代の恋は、「大学生の頃、同級生の子と付き合っていて。僕が大学を中退したタイミングで、フラれました。その後、彼女はインターン先で出会った仕事ができる感じの人と付き合っていましたね。就職活動が始まると、僕を見て『何の将来性もないな』と感じたんだと思います。何もしていなかったし、見限られました」と肩を落とす。

 しかしながら今や、精子役をゲットするという快挙を成し遂げた。
「今後またやらせていただける機会があるならば、ぜひ声優にも挑戦したい」というニシダだが、「一度、精子役をやっちゃっていますので。普通の役では満足できないかもしれない」と吐露。「精子役がハマり役だったというところもありますよね。声が、“精子声”だった。30年間、“精子声”だとは知らずに生きてきたので、新たな発見がありました」というから次なる精子役にも期待がかかる。

 これからもいろいろな仕事にトライしていきたいと、意欲を見せるニシダ。精子たちは、受精というゴールをつかみ取るために生き残りをかけて奮闘していくが、芸能界もまさに熾烈(しれつ)な競争の場所だ。その上でニシダが自身の武器だと感じているのは、「運、そして惨めさ。周りの人が手を差し伸べざるを得ない雰囲気と言いますか、手を差し伸べなきゃと思わせるくらいの惨めさが武器になっていると思います」と自己分析していた。(取材・文:成田おり枝 写真:上野留加)

 映画『スペルマゲドン 精なる大冒険』は、2月13日より全国公開。

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