1972年に放送がスタートし、平均視聴率21%という驚異的な人気を誇ったTVアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」。見たことがないという人も、名前くらいは聞いたことがあるのではないだろうか。
筆者もその一人である。

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 そんな伝説のアニメが、この度40年の時を経て実写映画化された。TVアニメ版を知らないため、比較することは難しいのだが、聞くところによると実写映画版は設定もストーリーも原作から一新した“新生ガッチャマン”になっているらしいので、純粋に一本のヒーロー映画としての観点からレビューしていきたいと思う。

 物語の舞台となるのは現代の延長線上にある近未来の日本だ。21世紀の初め、謎の侵略者によって、わずか17日間で地球の半分が壊滅状態に陥った。絶滅を回避するため、人類は最後の望みをあるものにかける。それは「石」と呼ばれる不思議な結晶体で、石から力を引き出せる適合者は800万人に1人しか存在しない。人類は適合者を探し集め、特殊エージェントとして訓練を強制した――。

 もうおわかりだろう。その特殊エージェントこそがガッチャマンなのだ。設定からもなんとなく伝わってきたかと思うが、実写版「ガッチャマン」の世界観はわりと暗い。全体的な雰囲気は「ダークナイト」とか「スパイダーマン」とか、アメコミのダークヒーロー物に近い印象を受ける。
ちょっと前に「変態仮面」が実写化されたが、あれもアメコミっぽい雰囲気が漂っていた。もっとも「変態仮面」に関しては、そもそも原作の変態仮面がスパイダーマンをリスペクトしたものなので、アメコミっぽく作るのはネタとして理にかなっているのだ。

 しかしガッチャマンのアメコミアレンジは、かなりマジな作りだ。予告編の最後にアルファベットのロゴと共に流れる「ガッチャメーン……!」というボイスには思わず吹き出してしまったが、本編は大真面目にそんな感じの雰囲気なのである。 そもそもガッチャマンである主人公の健(松坂桃李)と、副主人公であるジョー(綾野剛)の性格が暗い。なにしろ「石」の適合者として生まれてしまったがために訓練を強制され、人類の希望であるガッチャマンとして戦わされている――という過去を背負っているので、明るくなりようがないのだ。

 映画では四六時中こんな感じで、どよんとした雰囲気のままストーリーが進んでいく。個人的にガッチャマンにはそういうイメージがなかったので、その部分がしばらく気になって仕方なかった。

 こう書くとかなり大人向けの雰囲気に思えるが、ストーリーやセリフ回しなどはかなりストレートでわかりやすく、子供向けといってもいいかもしれない。子供向けアニメとしてのガッチャマンであればそれでいいと思うのだが、雰囲気がなまじっか大人向けに思えるだけにややチグハグに感じる場面もあった。

 一方で、アクション部分はなかなかがんばっていて、CGを駆使したアクションと演出はちびっ子にも喜ばれそうだ。監督自身がガッチャマン世代らしく、ガッチャマンとして押さえるべきところは押さえている。
かなり改変はあるものの、変えてはいけない部分はしっかりTVアニメ版を踏襲している印象だ。「完全に別物なんだけど、ちゃんとガッチャマン」というギリギリのラインを見極めて作られた作品なのである。

 ということで、本作を簡単にいえば"超豪華な二次創作"みたいな感じだろうか。TVアニメ版のファンだった人は、そこからどう改変されたのかという点に注目して見るとより楽しめるかもしれない。(文:山田井ユウキ)
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