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少年少女の奇妙な出会いを中心に、二転、三転とオリジナルアニメーションならではの先の読めない展開で、“真逆の世界”の謎が解き明かされる本作。脚本・監督を手掛けたのは、『イヴの時間』で世界のアニメファンの注目を浴びた吉浦康裕監督だ。脚本の印象を聞くと、「とにかくビックリして! こんな世界観を考える吉浦監督ってすごい」(藤井)、「固定観念が崩されるという体験ができた」(岡本)と、2人とも驚きを隠せない様子だ。
さらに岡本は「僕は数年前に、反重力実験に関する記事を読み漁っていたことがあって。この映画はファンタジーではあるけれど、こういう世界があってもおかしくないなと思った。ファンタジーの中にリアルがしっかりとあるのが、吉浦監督のすごさだと。冒頭の映像も、現代の心配現象を映し出しているように思えますから」と、本作の投げかけるリアルなメッセージを感じたという。
パテマを演じる藤井は、本作で念願の初ヒロインを果たした。藤井は、こう振り返る。「声優事務所に入って、初めてオーディションに受かった作品で。
演じた役柄について聞くと、藤井は「パテマは等身大の14才の女の子。コロコロと表情が変わって、それをストレートに表現する素直な子です。私も1年目ですし、全力でぶつかっていくしかなくて。それがうまく、パテマとリンクしてくれていたら嬉しい。恥ずかしいくらい素直に演じていました」とニッコリ。一方の岡本は「エイジは、秩序や規律を重んじる世界に暮らしているせいで、自身の性格を押し込められている状態で。パテマと出会うことによって、自身が解き放たれて、ようやく素直な一面が見られるんです。ものすごく真っ直ぐで、ヒーロー気質の男の子だと思います」と、分析。
「お互いの中に、パテマらしさ、エイジらしさを感じるか」と尋ねると、「岡本さんは、エイジくんそのもの!」、「藤井さんは、パテマそのもの!」と笑顔で声をそろえる。藤井は「収録に引き続き、このような場でも岡本さんに支えられています。リアルエイジくんですね。本当にありがとうございます! 岡本さんは、とても繊細な感性をお持ちの方だと思うんです。その繊細さが、そのままエイジくんの魅力として表現されていた」と、岡本に感謝しきり。岡本は「藤井さんは、超ストレートなんです。パテマもストレートですが、藤井さんはそれ以上かも。パテマがそのまま大きくなっちゃったみたい(笑)」と、共通点を楽しそうに話してくれた。 パテマとエイジが出会う瞬間は、時が止まったかのように思えるほどドキドキに満ちたシーンとなった。ファンタジーでありながら、“ボーイ・ミーツ・ガール”の胸キュンをしっかりと押さえた本作だが、特に胸キュンしたシーンはあっただろうか? 「180度違う感じ方、物の見方をしていた2人が出会う。出会いのシーンは、この作品の魅力をギュッと凝縮したシーンですよね。
岡本は「重力が反対に作用している分、2人が抱き合わないといけないシーンが多い。14才の自分として考えたら、あれは相当、緊張するんじゃないかと思います!」と告白。さらに「お互いの鼓動が聞こえる位置に耳や顔があったりするので、体温や相手の気持ちをゼロ距離で感じ合えることができたんじゃないでしょうか」と、2人が惹かれあっていく様子を振り返ってくれた。
未知の世界に飛び込んでみる。その勇気がもたらす未来を感じさせてくれる作品だ。2人にとって、「思い切って飛び込んでみて良かった」という経験はあるだろうか。岡本は「バンジージャンプです!」と即答。「超怖かったです。ラジオの企画で、後で聞いてみると、『ボボボボ』という風の音しかやっぱり聞こえてこないんですよ! 僕の『ウワー!』という声が遠くの方に聞こえてくるくらいで」と話すと、藤井も「ラジオの企画!?」と爆笑。岡本は「めちゃくちゃ怖かったんですけれど、飛んだ後は、『生きているって素晴らしい』という実感がかなりありました。怖いと思うってことは、まだ生きていたいと思っている証拠。
藤井は「私、実はすごく臆病で。すごくお芝居がやりたかったんですが、役者の世界に踏み出すことに不安があって。それでも舞台の仕事がしたいと思って、舞台照明の仕事をしていたんです」と打ち明ける。「でも照明を当てながら、『やっぱり役者をやりたい!』という気持ちがあふれてきてしまって。会社を辞めて、演じる側の世界に飛び込んだんです。後悔したくないと思って飛び込んで、本当に良かった。こんな素敵な作品に出会えましたから」と、新たな一歩で得たものは限りない。
見たことのない不思議な世界の中に、普遍的なメッセージがあふれ出す『サカサマのパテマ』。是非スクリーンで、未知なる体験に浸ってほしい。(取材・文・写真:成田おり枝)
『サカサマのパテマ』は11月9日より全国公開。