元女優の志穂美悦子(長渕悦子)氏が、12月18日に放送されたTBS系朝の情報番組「はなまるマーケット」内のトークコーナー「はなまるカフェ」に生出演した。彼女がテレビ出演したのは、夫であるシンガーソングライター・長渕剛との結婚会見以来、じつに27年ぶりのこと。
若い世代はピンと来ないかもしれないが、日本初の本格的アクション女優から演技派女優へ転身した彼女を知る世代には今年最後の“事件”だった。

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 1955年に岡山で生まれ、中・高時代、地元で陸上選手と活躍した彼女は、16歳のとき憧れのアクション俳優だった千葉真一が主宰する「ジャパンアクションクラブ (JAC)」 に合格。その後、翌73年に放送された特撮ヒーロードラマ『キカイダー01』で、人造人間ビジンダーに変身するマリ役に抜擢され、健康的かつセクシーなアクションで、一躍お茶の間の男子を虜にした。

 また、当時の日本といえば、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』から一大アクション・ブームであり、その後の悦子氏も『女必殺拳』シリーズなどで“女ドラゴン”として日本列島を席巻する。劇中のアクション・シーンをスタントなしで演じた日本初のアクション女優であると同時に、“悦っちゃん”の愛称で当時のスターの人気を示すバロメーターだったブロマイド売上1位も記録。また、悦子氏の出演映画が海外公開される際に命名されたSue Shiomi の名は、若き日のクエンティン・タランティーノをはじめ、海外のアクション映画ファンの脳に焼き付けることとなった(ちなみに、タランティーノ脚本の『トゥルー・ロマンス』にはクリスチャン・スレイター演じる主人公が映画館で、悦子氏と千葉が共演した『激突! 殺人拳』を観るシーンが登場する)。


 その後も、恩師・千葉の妹分として、後輩にあたる真田広之の姉御分として、『柳生一族の陰謀』『里見八犬伝』など、さまざまなアクション映画やドラマに出演。その後、現在までアクションができる女優が登場するたびに“第二の志穂美悦子”というキャッチフレーズが使われていることからも、悦子氏のスゴさは分かるだろう。だが、水谷豊主演の学園ドラマ『熱中時代』では同僚教師、国広富之&松崎しげる主演の刑事ドラマ『噂の刑事トミーとマツ』では国広の姉を演じるなど、徐々にアクションを封印し、実力派女優の道を歩み出したのも興味深いことだった。 JACから独立した85年には、劇作家・つかこうへいが悦子氏を念頭に置いて脚本を書いた『二代目はクリスチャン』に主演。ヤクザの二代目を襲名する清純なシスター役を熱演し、翌86年にも同じつかこうへい原作の『熱海殺人事件』で女刑事をコミカルに演じた。そして、その年のドラマ『親子ゲーム』と映画『男はつらいよ 幸福の青い鳥』で、カップル役を演じた長渕剛と翌87年に結婚。
夫の強い意向から悦子氏は突如表舞台から去り、専業主婦となっていたのである。

 その後、夫の父の葬儀や、06年に始め、花ソムリエの資格を取得したフラワーアレンジメントの写真集のイベントなど、密かに公の場に姿を現していた悦子氏。じつに27年ぶりのテレビ出演となったこの日は、オープニングから司会の岡江久美子がドラマ『金曜日の妻たちへII、男たちよ、元気かい?』での共演話を披露。その後も、ライフワークであるフラワーアレンジメントや愛犬のシェパードとトイプードルへの想い。そして、現在NYで演技の勉強をしている女優の長女、ヒップホップ・ミュージシャンの長男、レーサーの次男などの3人の子供たちにはエールを送った。

 さらには、19歳のとき一週間前に右膝の内側靭帯を断裂しながら、撮影に挑んだ主演作『華麗なる追跡』や、夫との出会いのきっかけとなった『親子ゲーム』の映像を観ながら当時を振り返るなど、往年のファンにはたまらないサービストークも披露。
しかも、「じつは隙あらば、復帰しようと思っていた(笑)」と語っていた。現在58歳に見えない美貌と体型を武器に、ふたたび表舞台に戻ってきてほしいと願ったのは、私だけではないはずだ。(文:くれい響)