日本と韓国を舞台に、記憶をトリックに紡がれるアクション・サスペンス大作『ゲノムハザード ある天才学者の5日間』。ほとんどのアクションシーンを自らこなし、画面上で圧倒的な存在感を放った主演の西島秀俊と、2国のスタッフを見事にまとめあげ、圧巻の物語を作り出したキム・ソンス監督が3ヵ月に及んだ撮影を振り返った。
【関連】『ゲノムハザード ある天才学者の5日間』公開直前記者会見フォトギャラリー
第15回サントリーミステリー大賞読者賞受賞の同名ベストセラー小説を原作に、記憶を“上書き”された天才科学者が、謎の男たちに追われながら、すべての記憶が消えるまでの5日間を描く本作。
端正なルックスと複雑で難しい役柄も違和感なく演じきる演技力が魅力の西島。徹底した役作りをすることでも知られる彼が、本作で挑んだのは「普通の日本人のサラリーマン」という記憶を上書きされた、韓国人の天才科学者役。
「2つの国籍のキャラクターを演技しなければいけない、とても難しい役だったので、演技がうまいことも大事ですが、誠実に演技をしていただける方じゃないといけなかった。西島さんは、ご覧の通りかっこいい方ですし、ものすごくいい演技をされる方。誠実な演技という意味でも、西島さんしかいないと思った」。キム監督は、西島を主演に起用した理由を語る。
西島自らが、体当たりでこなしたアクションシーンはもちろん見どころだが、本作の魅力はそれだけにとどまらない。そのひとつに、キム監督が高く評価をした西島の演技力がある。
記憶が混乱していることを、表情と動きで見事に体現した西島は、「監督からは、(クランク)イン前も撮影中も『これは奇跡が起きている話。普通の男が暴力のプロから逃げ続けるという不可能を可能にしたのは、妻が生きているかもしれない、助けたいという強い愛情があるから』と言われてました。だから、その気持ちを常に忘れないようにしてくれと」と撮影時を振り返る。
「かっこいいアクションを求めているわけじゃない。アクションシーンでもエモーションを感じさせるアクションにしてくれということはすごく言われて、それはこの映画通してすごく大切に演じたところです」。 また、一方で、西島が劇中内で語る、日本語と韓国語を織り交ぜたセリフも印象的だ。「(レッスンをして)1時間半でフラフラになった。韓国語って本当に難しい」と苦笑いで謙遜した西島だが、キム監督は絶賛だ。「映画の中で西島さんがしゃべっている韓国語は完璧に近い韓国語なんです。釜山国際映画祭のワールドプレミアの時に、観客の皆さんが韓国語が出た瞬間に『うわっ』てなって、固まっているところを僕は見ました。みんな本当にびっくりしてました」とキム監督は、笑顔で話す。
「わざと汚い言葉もやらせたんです。外国の俳優さんがスラングというか汚い言葉を演技として使うというのは初めてじゃないかなと思います。そこを完璧にやってくださったので、そこもまたおもしろい。韓国の男性ファンが増えるんじゃないかなと思います」と監督が自信を覗かせるほどで、ぜひとも注目してもらいたい。
本作では、「記憶」がひとつのテーマとなっている。そこで、西島、キム監督に「映画人として残しておきたい記憶」を聞いてみた。
西島は、悩んだ末に、「諏訪(敦彦)監督や黒沢(清)監督との出会い」をあげた。「それまで、僕はそこまで映画を観るタイプじゃなかった。お二人とのお仕事を通して、触発されて、たくさんの映画を紹介されて、そこから映画ってこんなにとてつもないものなんだって思うようになった」と語る。
一方のキム監督は、キム監督が助監督として長く映画製作に携わった「パク・チャンヌ監督」を真っ先にあげた。さらに、「今回の映画は、記憶に残り続けると思います」と話す。「主人公が最後まで映画を引っ張っていく作品だったので、監督としても西島さんに頼らなければ行けない部分があったし、国籍の違う俳優さんと作っていかなければならないという挑戦的な部分もあった。それでも、西島さんと一緒に作っていき、幸せをすごく感じさせてくれた」。
監督自身、そして西島が胸を張って送り出した本作。極上の映画人が作り上げる、息もつかせぬスリルとエンターテインメントを存分に味わってもらいたい。
『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』は全国公開中。
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第15回サントリーミステリー大賞読者賞受賞の同名ベストセラー小説を原作に、記憶を“上書き”された天才科学者が、謎の男たちに追われながら、すべての記憶が消えるまでの5日間を描く本作。
端正なルックスと複雑で難しい役柄も違和感なく演じきる演技力が魅力の西島。徹底した役作りをすることでも知られる彼が、本作で挑んだのは「普通の日本人のサラリーマン」という記憶を上書きされた、韓国人の天才科学者役。
「2つの国籍のキャラクターを演技しなければいけない、とても難しい役だったので、演技がうまいことも大事ですが、誠実に演技をしていただける方じゃないといけなかった。西島さんは、ご覧の通りかっこいい方ですし、ものすごくいい演技をされる方。誠実な演技という意味でも、西島さんしかいないと思った」。キム監督は、西島を主演に起用した理由を語る。
西島自らが、体当たりでこなしたアクションシーンはもちろん見どころだが、本作の魅力はそれだけにとどまらない。そのひとつに、キム監督が高く評価をした西島の演技力がある。
記憶が混乱していることを、表情と動きで見事に体現した西島は、「監督からは、(クランク)イン前も撮影中も『これは奇跡が起きている話。普通の男が暴力のプロから逃げ続けるという不可能を可能にしたのは、妻が生きているかもしれない、助けたいという強い愛情があるから』と言われてました。だから、その気持ちを常に忘れないようにしてくれと」と撮影時を振り返る。
「かっこいいアクションを求めているわけじゃない。アクションシーンでもエモーションを感じさせるアクションにしてくれということはすごく言われて、それはこの映画通してすごく大切に演じたところです」。 また、一方で、西島が劇中内で語る、日本語と韓国語を織り交ぜたセリフも印象的だ。「(レッスンをして)1時間半でフラフラになった。韓国語って本当に難しい」と苦笑いで謙遜した西島だが、キム監督は絶賛だ。「映画の中で西島さんがしゃべっている韓国語は完璧に近い韓国語なんです。釜山国際映画祭のワールドプレミアの時に、観客の皆さんが韓国語が出た瞬間に『うわっ』てなって、固まっているところを僕は見ました。みんな本当にびっくりしてました」とキム監督は、笑顔で話す。
「わざと汚い言葉もやらせたんです。外国の俳優さんがスラングというか汚い言葉を演技として使うというのは初めてじゃないかなと思います。そこを完璧にやってくださったので、そこもまたおもしろい。韓国の男性ファンが増えるんじゃないかなと思います」と監督が自信を覗かせるほどで、ぜひとも注目してもらいたい。
本作では、「記憶」がひとつのテーマとなっている。そこで、西島、キム監督に「映画人として残しておきたい記憶」を聞いてみた。
西島は、悩んだ末に、「諏訪(敦彦)監督や黒沢(清)監督との出会い」をあげた。「それまで、僕はそこまで映画を観るタイプじゃなかった。お二人とのお仕事を通して、触発されて、たくさんの映画を紹介されて、そこから映画ってこんなにとてつもないものなんだって思うようになった」と語る。
一方のキム監督は、キム監督が助監督として長く映画製作に携わった「パク・チャンヌ監督」を真っ先にあげた。さらに、「今回の映画は、記憶に残り続けると思います」と話す。「主人公が最後まで映画を引っ張っていく作品だったので、監督としても西島さんに頼らなければ行けない部分があったし、国籍の違う俳優さんと作っていかなければならないという挑戦的な部分もあった。それでも、西島さんと一緒に作っていき、幸せをすごく感じさせてくれた」。
監督自身、そして西島が胸を張って送り出した本作。極上の映画人が作り上げる、息もつかせぬスリルとエンターテインメントを存分に味わってもらいたい。
『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』は全国公開中。
(取材・文・写真:嶋田真己)
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