累計部数520万部の大ヒットコミックをアニメ化した『東京喰種トーキョーグール』の放送がスタート。ヒトを喰わねば生きられない、“喰種”の世界に足を踏み入れた青年の生き様を描くダークファンタジーだ。
主人公のカネキ役を演じる声優花江夏樹を直撃すると、「主演に決まったことは、嬉しくもあり、怖くもあり」と苦笑い。大役に向き合う意気込みを聞いた。

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 「オーディションを受けるにあたって原作に触れたんですが、これは一筋縄ではいかない。覚悟のいる役だなと。受かった時はもちろん嬉しかったですが、半分くらい怖い気持ちがあった」と花江。その言葉も納得するほど、カネキは心、体ともに大きく変化を遂げていく青年だ。

 「人間としての日常を演じられるのが、最初の10分くらいだけなんですよね。僕がもし、カネキのような状況になったら、逃げ出しちゃいますよ」と笑う。「喰種の世界に巻き込まれてからは、ものすごくもどかしい立ち位置に立たされて。すごく考えて悩むんですが、そのことによって彼自身も強くなっていく。だんだんと、頼もしく見えるようになれば良いなと思います」。

 そんなカネキを演じる上で大事にしているのは、彼の持つ「優しさ」だ。
「カネキには、誰かを守りたいという気持ちが強く芽生えてきます。と同時に、人間と喰種の間に立てるのは自分しかいないという意識も芽生えてくる。弱さやおびえも持っているけれど、その中には全部、カネキ本来の優しさがあるんです」。

 カネキの心の動きをつかむためには、「原作を読んで、台本と照らし合わせたりしています」と明かす。「アニメではモノローグがないシーンでも、原作にヒントがあったりして。そういったことを全て、自分の中にインプットしてからアフレコに臨むようにしています」と原作がお手本になると言うが、「アニメには、原作と違った展開もあるんですよ」とのこと。

 「原作者の石田(スイ)先生と綿密に打ち合わせをしてストーリーを決めているようなので、原作にはなかったけれど、このシーンの裏には実はこんなことがあったんだという展開もあって。アニメでしか知り得なかったことも明かされていきます」と、生みの親もお墨付きの展開で世界観を深めているというから楽しみだ。 2011年に声優デビューした花江。優しさの中にも凛とした強さが光る声、確かな演技力が魅力で、今、最も注目される声優の一人となった。大役を任される機会も増えてきたが、カネキ役で新たなチャレンジとなったことはあるだろうか? すると「“痛み”の表現ですね」と告白。「喰種って再生能力もあるので、刺されたとしても次の次くらいのシーンでは、ある程度回復していたりします(笑)。
今はどれくらい痛いんだろうと、痛みに関しては常にいろいろな想像をしながら演じています」。

 喰種役に花澤香菜雨宮天といった可憐なイメージのある女性陣が抜擢されているのも注目だ。「花澤さんは普段、ほわんとした雰囲気のある優しい方で。そんな花澤さんが大喰いの喰種・リゼ役というのはあまりイメージが湧かなくて。でもアフレコをやってみたら、今までの花澤さんの印象と全く違って! 色っぽくて恐ろしくて、まさに怪物。圧倒されるくらいの迫力があって本当に怖かったし、だからこそすごく痛がりやすかった。あんな花澤さんの演技を聞けて、ちょっと嬉しかったです」。

 トーカ役の雨宮に関しては、現在『アルドノア・ゼロ』でも共演しているが、「一方の作品と、ボーイッシュなトーカでは全く違う役柄で。でも、『東京喰種』の現場で雨宮さんの声を聞いた瞬間、『うわ!トーカだ!』と思いましたね」と、その演技力に感服。「普段は、天然ぽいんですよ」と教えてくれたが、「トーカは、すごく難しい役。カネキよりも難しいんじゃないかな。雨宮さんは毎回、監督とディスカッションをしながらトーカを突き詰めている」と共演者からも大いに刺激を受けている。


 「主人公なので、しっかりしなきゃとプレッシャーもありますが、刺激を受けながら現場に向かうことが毎週、楽しみ」と充実感をにじませる。続けて「僕はもともと、勉強が嫌いで、そこから声優になって。声優をやりたいという強い思いがあって、この仕事に就いたわけではなかったんです」と告白。「でもありがたいことに、いろいろな役を演じる機会をいただいて、役を通して今までの自分の中にはなかったものを吸収することができて。いろんな引き出しができて、どんどん表現の選択肢が増えていくことが本当に楽しくて。今、すごく充実しています」。

 これからも大きなうねりが待ち受けるカネキ役だが、「その時、どんな声を発するのか予測がつきませんね」と照れ笑い。今後の展開とともに、花江夏樹の変化・進化からもますます目が離せない。(取材・文:成田おり枝)

 『東京喰種トーキョーグール』はTOKYO MX他にて放送中。
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