中国で日本の若手俳優「古川雄輝」の人気が沸騰している。北京で今月初めに開かれた出演ドラマ『不可思議的夏天』の訪中イベントにはファンが殺到し、中国の「つぶやき」サイトのフォロワーは114万人を突破。
中国でのニックネームは“女神”ならぬ“男神”だ。中国女子の心をとらえた古川の魅力を探る。

【関連】『イタキス』『夫のカノジョ』など日本でも大活躍の「古川雄輝」フォトギャラリー

 8月6日、北京。フジテレビと中国の大手動画配信会社・iQIYI(アイチーイー)が共同制作したインターネットドラマ『不可思議的夏天』(全15話)の配信開始を2日後に控え、日本の関係者が出席して公開イベントが開かれた。主演の古川が現れると雰囲気は最高潮に。スクリーンに古川のキスシーンが映されば、観ていた女性ファンから悲鳴が上がる。この日一般向けに用意された座席は40人分。抽選には7万人を超す応募があったという。外では入れなかったファン300人以上が会場を取り囲み、現場は熱気に包まれた。

 中国で古川人気が沸騰するきっかけとなったのは、昨年の主演ドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』の放送だ。主役の入江直樹を演じた古川のイケメンぶりに、中国の女性ファンはたちまちとりこになった。中国でのニックネームは“男神”。
誰もが憧れる男性の意味だ。7月には日本人俳優として初めてファンミーティングを上海で開催し、空港には1000人を超す女性たちが出迎えた。

 『不可思議的夏天』を演出・プロデュースした久保田哲史氏(フジテレビ国際開発局事業開発部)は、中国での古川人気を「少女漫画から飛び出したような美しいビジュアル、聡明な雰囲気。中国の女性にとって、身近にはいない憧れの男性像となったのでは」と分析する。

 彗星のごとく現れた日本の若手スターを、中国メディアはそろって好意的に伝えている。帰国子女の慶應ボーイで英語は堪能、特技はバスケットボール。色白細面、小さな顔にすらりとした細身。ポータルサイト・鳳凰網は「温和で国際的なイメージ。日本の伝統的な男性スターと異なり、どこにも属さない無国籍感がある」と分析した。 また、エンターテインメントサイト大手の新浪娯楽は、中国人女子が古川に「萌える」ポイントをピックアップ。経歴を細かく紹介し「才色兼備の一言を思い起こさずにはいられない」と絶賛した。「全身すべてが萌えポイント。
穏やかな話し方、長身、繊細そうな手、時おり見せるぼんやりした表情など、すべてが魅力になっている」と激賞している。

 ドラマ『不可思議的夏天』で古川は第15話の“大トリ”として主演するだけでなく、各話の案内役も務めている。キスシーンの相手役となった中国人女優・張辛苑もイベントで「彼は私の男神。どきどきしたし、幸運だったわ!」と笑顔を見せた。

 『不可思議的夏天』は15本のオムニバス・ミステリー・ドラマ。久保田氏は「目の不自由な不思議な女性に恋する役を古川さんに演じてもらったが、『イタキス』とは違う繊細な役をこなし、新たな魅力が出ていると思う。今回は中国語にも挑戦しているため、中国での人気が拡大する要因になった」と語る。

 中国はテレビドラマの内容に関する規制が多く、ミステリーやホラー系ドラマというジャンルがほとんどなかった。最近は規制の少ない動画配信会社が急成長し、やっとさまざまなジャンルのドラマが中国で作られるようになってきたという。久保田氏は「その先駆けになったのが『不可思議的夏天』。日本人スタッフによる作品の質の高さも評価されている」と説明する。

 フジテレビでは今後、好調なスタートを切った『不可思議的夏天』の続編を制作する考え。
動画配信の主力視聴者である10代、20代の若者層をターゲットに、恋愛色の強いドラマも打ち出す方針だ。日本から中国へ-第2、第3の古川が生まれる日も来るかもしれない。(取材・文:遠海安)
編集部おすすめ