『赤毛のアン』の翻訳家・村岡花子の半生を描いた、吉高由里子主演のNHK連続テレビ小説『花子とアン』。最高視聴率は25.9%(第14週/7月5日)、第24週(9月8日~13日)までの平均視聴率は22.7%(関東ビデオリサーチ)、と絶好調のまま、いよいよ9月27日に最終回を迎える。
数々の社会現象も生んだチーフプロデューサー加賀田透氏に、これまでをふり返り、個人的に最も思い入れのあるシーンや、今だから話せる「制作秘話」を伺った。

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 花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)、二人の女性を軸に進んできたストーリーは、ときに王道朝ドラ、ときに昼ドラのように、めまぐるしく色を変えながら、スピーディーな展開と濃厚なキャラクターで、視聴者を強烈に惹きつけてきてくれた。

 そんななか、実は制作サイドの思惑を大きく超えていったキャラクターもあった。はなの女学時代の学友・醍醐亜矢子だ。「醍醐さんというキャラクターは高梨臨さんが演じ、衣装、メイクが作り込んでいったことで、ドラマが始まってから、その映像を見た脚本家の中園ミホさんが触発されて、イメージがどんどんふくらんでいったんです。女優さんと衣装・メイクとの総合的な力により、ドラマの中で役が成長していったのは、半年間という長い期間の連ドラだから起こった現象だと思います」。

 明治・大正・昭和という激動の時代の「変化」は、映像にも見事にあらわれているが、実はそこには美術サイドのかなりのこだわりがあった。「7週までの女学生時代には、映像の厚みを持たせるために、女学校の外観は愛知の博物館明治村を、玄関ホールは群馬大学を使い、はなの生家のシーンは甲府のオープンセットで……と、いくつもの場所を移動しながら撮影を行いました」。 はなが山梨から出てきて出会うミッションスクールにリアリティを出すことは、同時に、はなが今までと全く違う世界に出会う「カルチャーショック」と、翻訳家としての「原点」を描く上で、非常に重要な役割を担っていたのだ。物語は、修和女学校での輝かしいスクールライフから、大人の女性への成長・恋愛・結婚を経て、さらに「母」として、翻訳家としての道を進んでいく。花子と蓮子の友情も、女学生時代の男女の恋愛にも似たトキメキから、恋を知り、互いに家庭を持ち、さらに戦争によって別のかたちに変わってくるが……。

 「『若い頃は信じていなかったけど、年齢を重ねると、本当に頼れるのは女同士の友情』というのが、脚本家の中園ミホさん自身の思いなんですよ。
女性が家庭を持ち、違う歴史を積み重ねていって、戦争という時代もあって、考え方も違ってくるなか、それでも成立する友情を描きたかったということが1つのテーマにありました」。

 最終週には、花子と蓮子の二人が戦争中に袂を分かってしまった後、再びどう向き合うかが描かれるほか、『赤毛のアン』日本語版出版までの紆余曲折の道のり、さらにしばらく登場していなかった気になるキャラクターたちも勢揃いする。

 さらに、10月18日(BSプレミアム/19時30分)には、スピンオフドラマ『朝市の嫁さん』を放送することが決定した。はなをひたすら思いつつも、本編では結局、一度も思いを伝えていない朝市。全く知らない女性と突然結婚したことで、その背景が気になっている視聴者は多いはず。本編とともに見逃せない展開が盛りだくさんだ。(取材・文:田幸和歌子

 連続テレビ小説『花子とアン』は、NHK総合にて月曜から金曜まで8時~8時15分ほか放送中。総集編はNHK総合にて10月13日(月・祝)<前編>8時15分~8時59分(44分)、9時5分~9時59分(54分)<後編>10時5分~11時34分(89分)放送。また、『花子とアン』完全版 DVD‐BOX1は9月24日発売。
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