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初めてのアニメのアフレコを終えたばかりの鈴木は、開口一番「これまで生きてきて動かしたことのない筋肉を使いました」と苦笑いを浮かべつつも「最初は個別に収録するのかなって思っていたのですが、プロの方と一緒の空間で、掛け合いをさせていただいたのでずっとハラハラしていました。でも優しくリードしていただき楽しかったです。あとはヒロインがこんなハスキーボイスでいいのかという心配はありますが(笑)」とおどける。
そんな鈴木の初体験に、羽多野は「普段TVから聞こえてくる声とは違いました。本当に初めてかと思うぐらい、ちゃんと声優さんでしたよ。僕らは10年以上声優をやっていますが、初めての現場は思い出したくない過去なんです(笑)。たった一行のセリフもちゃんと言えなくて……」と驚きを見せる。一方の柿原も「僕はうらやましかったですね」とつぶやくと「僕らって、長くこの仕事をしているので、声の出し方や気持ちの作り方などが体に染み込んでしまっているんですね。だから鈴木さんのように感情を素直に、そして生々しく表現することって僕らではなかなかできないんですよ」と鈴木を絶賛する。
リップサービスも含んでいるのかな? という、うがった考えも頭をよぎったが、そんな思いを羽多野が否定する。「会話って生き物なんです。掛け合いは呼吸なので、一人で収録すると、相手がどんな呼吸でしゃべっているかわからない。
サミーとシェリーの心温まるロマンスは、作品の大きな見どころの一つだが、一方で、幼いころからの親友であるサミーとレイの掛け合いも多くのメッセージ性を含んでおり心を奪われる。羽多野は「僕はすごく面白かったですね。普段テレビアニメーションとかでは、僕らはライバル関係であることが多かったんです。でもこの作品では、お互い自分にないものを認めている関係性だったので、会話も面白かったし、演じていて楽しかったです」と感想を述べると、柿原も「今回はサミーのお話で、僕が演じたレイは、サミーを親友として支える立場。今まで、僕は成長する役が多く、見守ってもらっていたので、逆のパターンは新鮮でしたし、海外アニメーションということでテンポもよく楽しかったです」と満足そうな顔を浮かべた。 サミーは実直でひたむき、レイは奔放で自由気ままと個性は違うが、二人は固い絆で結ばれた親友。奇しくも羽多野と柿原は、同じ養成所で学び、多くの作品で共演するなど、サミーとレイの間柄とシンクロする部分が多く感じられるが、実際はどうなのだろうか?
間髪入れずに柿原が「似ているよね」と同意を求めると、羽多野は「原音の映画ではサミーとシェリーの音程は、サミーの方が高くて、レイの方が低いんです。僕ら自身は、実際は僕が低くて、柿原が高音なんです。だから音程でキャスティングすると、逆なのですが、監督さんが中身の部分を見て、奔放さを持っている柿原がレイで、好奇心はあるのだけれどまじめなサミーは僕だってね(笑)。
作品の中には、多くのメッセージ性が含まれている。「サミーはシェリーのことをずっと思い続けるし、世界中の海を見たいという気持ちも持ち続けます。この作品を通じて一途な心の大切さを実感しました。最近、占い師さんに『恋愛面について、地に足をつけろ!』って言われたんです(笑)。私は地に足がついていたと思うのですが、サミーを見習いたいです」(鈴木)。「サミーが広い世界に出ようと思ったのは小さな出来事から。僕自身もアニメが大好きで、母親から何気なく言われた『声優になったら?』という一言が頭にあって、小学校4年生から声優になりたいってずっと言い続けていました。夢を一途に思い浮かべることが、自分を変えるきっかけになるのかなって、この作品に携わって改めて感じました」(羽多野)。
さらに柿原は「レイという役をやらせていただけるのは、柿原に任せたら面白いものになるだろうという“信用”だと思うんです。
柿原いわく「(日本語吹き替え版は)オリジナルを確実に超えていると思います」と自信の本作。「大切なものがいろいろ詰まっている映画。大人も子供も楽しめるので、難しいことを考えず、劇場に足を運んでほしいです」と羽多野が締めくくってくれた。(取材・文・写真:才谷りょう)
映画『サミーとシェリー~七つの海の大冒険~』は10月4日より全国公開。