『ゲド戦記』(06)『コクリコ坂』(11)の宮崎吾朗監督が、『山賊の娘ローニャ』で初めてのテレビアニメーションシリーズに挑戦する。スタジオジブリを飛び出し、新たなスタッフと生み出す渾身作。
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本作は、アストリッド・リンドグレーンの名作ファンタジーを原作に、山賊の家に生まれた少女・ローニャの成長を通して描く家族の物語。ジブリを飛び出した現状を「武者修行」と表現する吾朗監督だが、手描きアニメにこだわってきたジブリに対して、今回は3DCGの手法にトライしている。「これまでの3DCGは、人間を表現することが苦手で。今回は、セルルックという、手描きのセルアニメーションと同じような見た目でどこまでできるかだと思っています」と、その難しさについて話す。
実作業をしてみての印象は「3DCG、結構いけるじゃん」と手応え十分。「3DCGは手描きよりも時間がかかってしまう」というが、感じた魅力も多かった様子だ。「手描きの場合、時間や人材、お金などいろんな問題があって、キャラクターを動かし続けるのがなかなか困難なわけで。その困難に打ち勝とうとすると、宮崎駿のような一人のスーパーマンが頑張るしかないということになると思うんです」。
父を「スーパーマン」といいつつ、「今回一緒にやっているポリゴン・ピクチュアズのスタッフたちは、アメリカの作品の作業をしていたり、ゲームの仕事をしていたりと、動かし続けることが前提になっていて。
武者修行に出た意味を聞いてみると「非常に良い修行になっている」と充実感をみなぎらせる。「僕は、やっぱりスタジオジブリは宮崎駿のスタジオだと思っていますから、ジブリにいる限りその影響下からは逃れられない。宮崎駿のセオリーや考え方がスタジオのベースにあって、僕の求めることと食い違う瞬間もどうしてもあります。それを突破できる力は、自分にはまだない。
「自分の土台を否定してもしょうがない」と偉大な父のもとに生まれた葛藤・苦悩は、常につきまとうものだろう。しかし、若い、新しいスタッフとの共同作業に「3作目にして、アニメーションを作るというのは、こういうことなんじゃないか。そして何をやれば良いのかというのがやっとわかってきた」と清々しい笑顔を見せる。森の中へと冒険に旅立つローニャのように、未知なる可能性を切り拓き始めた吾朗監督のこれからが、実に楽しみだ。(取材・文・写真:成田おり枝)
『山賊の娘ローニャ』は、NHK BSプレミアムにて10月11日19時より放送スタート。
3DCGによって制作するという、思い切ったチャレンジでもある。ジブリを離れて見えてきた父・宮崎駿という存在。そして自らの進むべき道とは。
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本作は、アストリッド・リンドグレーンの名作ファンタジーを原作に、山賊の家に生まれた少女・ローニャの成長を通して描く家族の物語。ジブリを飛び出した現状を「武者修行」と表現する吾朗監督だが、手描きアニメにこだわってきたジブリに対して、今回は3DCGの手法にトライしている。「これまでの3DCGは、人間を表現することが苦手で。今回は、セルルックという、手描きのセルアニメーションと同じような見た目でどこまでできるかだと思っています」と、その難しさについて話す。
実作業をしてみての印象は「3DCG、結構いけるじゃん」と手応え十分。「3DCGは手描きよりも時間がかかってしまう」というが、感じた魅力も多かった様子だ。「手描きの場合、時間や人材、お金などいろんな問題があって、キャラクターを動かし続けるのがなかなか困難なわけで。その困難に打ち勝とうとすると、宮崎駿のような一人のスーパーマンが頑張るしかないということになると思うんです」。
父を「スーパーマン」といいつつ、「今回一緒にやっているポリゴン・ピクチュアズのスタッフたちは、アメリカの作品の作業をしていたり、ゲームの仕事をしていたりと、動かし続けることが前提になっていて。
動きを止める方が苦手だったりするんですね。だったら、“動かしてしまえ”とどんどんエスカレートしていくんですが(笑)。要は、手描きの絵というのは、画力でもつ部分があるけれど、CGのキャラクターの場合、動かしてこそ命が吹き込まれる。彼らはそのことを実に、忠実にやってくれています」と新たなスタッフたちから大きな刺激を受けていた。 吾朗監督の描くものには、父と子、命をつなげていくというテーマが通底しているようにも感じる。すると「何せ、父が宮崎駿ですから」と苦笑い。「この歳になっても、息子であるということを意識させられ続けてしまう。そうすると、宮崎駿、高畑勲がやってきた時代、僕らが何かやろうとしている時代、そしてまた次の世代があるだろうと、常に上と下を意識してしまうところはある」。
武者修行に出た意味を聞いてみると「非常に良い修行になっている」と充実感をみなぎらせる。「僕は、やっぱりスタジオジブリは宮崎駿のスタジオだと思っていますから、ジブリにいる限りその影響下からは逃れられない。宮崎駿のセオリーや考え方がスタジオのベースにあって、僕の求めることと食い違う瞬間もどうしてもあります。それを突破できる力は、自分にはまだない。
でも今、やっているスタッフとは、ゼロの関係から始めて、お互いに“ああだこうだ”と言う中で“一緒に作っている”という感覚が非常に強くなっています。僕にとってはそちらのやり方のほうが、性に合っているとは思いますね」。
「自分の土台を否定してもしょうがない」と偉大な父のもとに生まれた葛藤・苦悩は、常につきまとうものだろう。しかし、若い、新しいスタッフとの共同作業に「3作目にして、アニメーションを作るというのは、こういうことなんじゃないか。そして何をやれば良いのかというのがやっとわかってきた」と清々しい笑顔を見せる。森の中へと冒険に旅立つローニャのように、未知なる可能性を切り拓き始めた吾朗監督のこれからが、実に楽しみだ。(取材・文・写真:成田おり枝)
『山賊の娘ローニャ』は、NHK BSプレミアムにて10月11日19時より放送スタート。
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