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主人公・エルサを演じた松たか子と、エンドロールで流れるMay J.が歌う「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」。ヒットの要因を“ありのまま“という心に響くフレーズのほかに、「楽曲が素晴らしいことが要因の一つ」と鈴木先生は提言する。
「楽曲を分析してみると、音階が強い部分=フォルテと弱い部分=ピアニッシモの強弱があり、リズムがはっきりしていることを挙げられます。1分間に約120回のリズムを刻んでいるのですが、これはスイングがしやすいリズム。やる気を起こすとか、運動をしようというときの脳波ベター波が出やすいリズムでもあるのです。前向きに活動したくなるリズムですね」。
「2つ目は、繰り返しによるメロディが割合に多いので、メロディが記憶にとどまりやすいこと。3つ目は、周波数帯域(音の高さ)に非常に拡大感があること。人間にとっては高音に聞こえる7000Hz(ヘルツ)という周波数を多用することで、透き通るような爽やかな歌声として私たちの耳に届く」と続ける。
また、「音気を研究している妻の意見ですが、旋律で伸ばすところが多いこと。
小川のせせらぎや除夜の鐘の音など、人間が心地よく聞こえる音のことを言うそうで、「その“ゆらぎ”を抑え気味に使っているから、心地よく、落ち着きがあるように我々の耳に届くのでしょう。松さんの歌声は日本人の気質に合っている。お年を召した方にもしっくりくるような、非常に心地よい歌声だと言えます」と、歌が幅広い年齢層に愛されている理由がわかる。
また、May J.については、「彼女の場合は、高音(7000Hz)にものすごく強い周波数があります。高音には清潔感を感じさせるだけでなく、感情をダイレクトに伝えられる効果がある。
ふたりに共通しているのは、ほかの人には真似ができない“独自ゆらぎ”があることと、腹式発声ができていること。そのため、言葉が聞き取りやすく、歌詞を覚えやすい。音のエキスパートである鈴木先生でさえもその心地よさに惹かれ、自然にフレーズを口ずさんでいたほどだとか。唯一無二の歌い手の“ゆらぎ”と、体が自然と反応してしまう楽曲。このふたつの要素が含まれたからこそ、老若男女のハートをがっちりと掴み、2014年を代表する楽曲になったと言えそうだ。(取材・文:小竹亜紀)