『シュレック』『マダガスカル』を生んだアニメーション製作会社ドリームワークス・アニメーションが、危機に陥っている。L.A.近郊のグレンデールに本拠を構える同スタジオは、先日、社員の約2割にあたる500人を今年中にレイオフし、北カリフォルニアのレッドウッド・シティにあるふたつ目のスタジオを閉鎖すると発表した。


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 ドリームワークス・アニメーションは、これまで年間3本の劇場用長編アニメ映画を公開してきたが、今後は2本に減らす。このリストラで、2015年末までに3000万ドル、2017年末までに6000万ドルのコスト削減を行うのが狙いだ。発表を受けた翌日、同スタジオの株は7.7%下落。今後公開される映画の成績次第では、2019年までに倒産する可能性もあると警告する経済アナリストもいる。

 ディズニー時代に『リトル・マーメイド』『ライオン・キング』などを大きく当てたジェフリー・カッチェンバーグが経営するドリームワークス・アニメーションは、ドリームワークスSKGの関連会社として2000年に誕生。最初の作品『シュレック』は、全世界で4億8400万ドルを売り上げたばかりか、オスカーの最優秀アニメ賞を獲得した。『シュレック』シリーズ全4本の世界興収は29億ドル。

 その後も、『マダガスカル』『カンフー・パンダ』などをヒットさせたが、近年は苦戦。昨年北米公開された『Mr. Peabody & Sherman(原題)』では5700万ドル、『ターボ』(13・未)では1350万ドルの損失を出した。期待されていた昨年秋の『The Penguin of Madagascar(原題)』も思ったほどヒットしていない。 ドリームワークス・アニメーションが立ち上がった頃、ライバルといえばピクサーくらいだった。だが、この2社が大きな利益を上げるのを見て、ほかのスタジオも次々アニメに参入。
20世紀フォックスは『アイス・エイジ』シリーズを大ヒットさせ、遅く参入したユニバーサルも『怪盗グルーの月泥棒』を成功させた。昨年は、ワーナー・ブラザースも『LEGO(R)ムービー』を大きく当てて、さっそく続編製作に入っている。一時はぱっとしなかったディズニーも、ピクサーのジョン・ラセターをトップに据えた後は、『アナと雪の女王』『ベイマックス』などで、再び業界のトップに躍り出た。

 2013年にも350人をレイオフしているドリームワークス・アニメーションは、昨年、大手おもちゃ会社ハスブロや、日本のソフトバンクなどに買収してもらう話し合いをもったが、実現に至っていない。カッツェンバーグは、今後、製作に当たって、ひとつひとつの作品をより深く吟味すること、1作品あたりの製作費を現在の1億4500万ドルから1億2500万ドルに下げることを語っている。だが、『怪盗グルー~』の製作費が6900万ドルであることを考えると、まだかなり高い。

 この状況を買い時と見て、新たな会社が買収を検討する可能性もある。しかし、良い買い手を惹きつけるためにも、今後の公開作の成功は重要だ。6月公開予定だった作品を延期したため、今年、ドリームワークス・アニメーションは1本しか公開予定作品がない。その1本の動向を、多くの業界関係者が興味津々に見守っている。(文:猿渡由紀)
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