松井優征による人気コミックをアニメ化した『暗殺教室』が現在絶賛放送中だ。殺せんせーと呼ばれるタコ型超生物と生徒たちの攻防をコミカルに描く、異色の学園ストーリーだ。
殺せんせー役に抜擢されたのは、これまでもカリスマ性溢れる役柄に命を吹き込んできた声優福山潤。福山を直撃し、彼にとっての“先生”。転機となった出演作を聞いた。

【関連】『暗殺教室』場面写真フォトギャラリー

 殺せんせーは、人知を超えた能力を持ち、地球を爆破すると予告する超生物。一方、なぜか中学校の教師となることを望み、落ちこぼれクラスの担任として熱心に教育に励む。見た目だけでなく、内面も謎に包まれた一筋縄ではいかないキャラクターだ。福山は「正攻法や答えがないキャラクターなので、これは楽しんだもん勝ちだなと思って。オーディションは、ちょっと気楽な気持ちで伸び伸びとやらせてもらいました」と笑う。

 不気味ながらどこか愛らしく、教師としては一流の殺せんせー。演じる上で大事にしたことは、「彼は基本的に口角が上がっているんです。口角が上がっている音でありながら、その中で喜怒哀楽を表現できないかなと思って」と緻密な役作りに徹した。内面を探る過程では、あるテーマも浮かび上がった。
「彼がずっとニヤニヤしているというのは、暗殺や教育もすべてを楽しみましょうということなのかなと。僕がやる上でも“楽しむ”ということをひとつのテーマとして掲げようと思いました」。

 「基本的にどんなものでも楽しもうと思う。僕らの仕事って、よっぽどのことがない限り、同じことを2度やらせてもらえるということはないですから」と前向きな姿勢を見せる。そんな中でモットーとしていることは「暗中飛躍」だ。「現場ではできることをすべてやる。そしてその前に、見えないところでどれだけ思考を巡らせられるかが大事」と、もがきながら役へとアプローチしていくのが楽しいという。 数々の難役にチャレンジしてきたが、「僕は天才型ではない。天才じゃないからいろいろできたんじゃないかな」と分析。生徒たちを大切に育てていく殺せんせーにちなんで、自身にとっての“先生”を聞いてみると、永井一郎と坂井治の名前を挙げた。「僕は勝手にお二人を師匠だと思っていて。デビューしたての頃、朗読劇でお二人に演出をしていただいて。
そこで物事の捉え方や、言葉の出し方の基本となる種をもらいました」と感謝しきりだ。

 では、作品や演じたキャラクターで自身を大きく成長させてくれたと感じるものはあるだろうか? すると「運が良いことに主人公をやらせてもらうことも多くなって。さらに運が良かったなと思うのは、主人公が必ず勝つという作品が少なかったこと」と微笑む。「『武装錬金』をやらせてもらったときは、やれることが増えてきて、体力的にも気力的にも充実しているとき。そのときに演じた武藤カズキは、人間的には成長したけれど最後の戦いには負けるんです。『超重神グラヴィオン』や『リーンの翼』もそうですが、先人や超然と強い人が、主人公に対して大きな壁として存在しているという作品を、ターニングポイントでやらせてもらえたのが、僕にとってはとても実になりました」。キャリアを重ねたとしても、敬うべき先人たちがいる。そう実感する瞬間にもなったようだ。

 たくさんの先輩や先生たちの存在を感じながら、しっかりと自身の歩む道のりを見つめてきた。異色キャラでありながら、学ぶことの大切さや自分の存在意義を教えてくれる殺せんせー。ぜひ『暗殺教室』で福山潤の魅力を堪能してみては。(取材・文:成田おり枝)

 『暗殺教室』はフジテレビにて毎週金曜日25:20~放送中。
ほか各局でも放送。ブルーレイ&DVD第1巻は3月27日発売。
編集部おすすめ