1975年に創業したアニメ制作会社・日本アニメーションが創設40周年を迎えた。同時に「世界名作劇場」シリーズも第1作目の『フランダースの犬』から40年の節目に。
【関連】日本アニメーション関係者が選ぶ、好きな「世界名作劇場」とは
「世界名作劇場」の魅力─。登場人物の優しさや強さ、異国の文化や香り、空気感、テレビの前にいながら体験できるワクワク感…。挙げればきりがないが、浅野氏は「人間性の涵養(かんよう)に寄与したいという創業者・本橋浩一の理念が詰まっている作品」と解説する。「涵養」とは難しい言葉だが「人の心にゆっくりとしみ込み、育むような、家族で楽しめるアニメ」が日本アニメーションの理念だという。
丁寧な描写も「世界名作劇場」の魅力。制作当初から舞台となった国での番組販売を考えていたため、各国にロケハンに行き、リアリティーの追求に務めた。良質なコンテンツは、現在も海外でも再放送され、多くの人々に愛されている。しかし、通年でじっくり世界観を描くことが多い「世界名作劇場」は、テレビ業界の取り巻く環境や生活習慣の変化もあり、第26作目の『こんにちは アン~Before Green Gables』(09)以降の新作は製作されていない。
「年間を通じて、日曜の19時台に約50話、家族みんなでアニメを見るという生活スタイルが、時代と共に変わってきました。弊社も、環境に応じて少し本数を減らしたり、BSで放送したりと様々な試みを行って、26作目の『こんにちは アン~Before Green Gables』まで制作してきました」と浅野氏は語る。
さらに「『世界名作劇場』という名前ではありませんが“子供の心の育成”という理念のもと、ここ10年ぐらいは、低年齢層に向けたショートアニメの製作など、親子の懸け橋となればという思いで、さまざまなアプローチを行っています。『世界名作劇場』に関しても、まだ白紙ですが、今の時代にあった企画で、弊社の理念に合うものがあれば、それを27作目として世に出すこともあるかもしれません」と付け加えてくれた。 現在まで制作したアニメは128作品。そして今年、創業40周年を記念し、長編アニメーション映画『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』を制作。誰もが知る名作の主人公に、今の子供たちに伝えたい思いを込めた。プロデューサーの井上氏は「時代の流れだと、ハイエンドユーザー向けのアニメで勝負するのが正しいのかもしれませんが、うちの会社は児童文学や、世界の名作を通して、子供たちの心を養うという理念がはっきりしています」と企画意図を語る。
そんな日本アニメーションの理念に、映画『STAND BY ME ドラえもん』など、VFXが得意な制作会社・白組が賛同した。「得意分野も違うし、お互いの良い部分が積み重なる相乗効果はあります。この映画も、企画当初よりずっと良くなりました。僕らがやりたい、伝えたいと思ったことが、新しい形で表現できていると思います」と井上氏。
地上波ゴールデンタイムのアニメ枠は減り、作品の出しどころに悩むことも多いと言う。しかし「配信も伸びていますし、BSさんやCSさんも力をつけています。
40年の歴史の中では、大変なこともあったと思うが「アニメは鉛筆一本で何でも出来る。描ける人と企画があれば制約はないんです」と井上氏が語るように、アニメを愛する人たちが同社には数多くいる。それが老舗アニメ制作会社の最大の魅力なのかもしれない。(取材・文・写真:磯部正和)
『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』は7月4日ロードショー。
長年にわたり日本のアニメ業界をけん引してきた同社の根幹にある思いとは何なのか─。ライセンス事業部部長・浅野恵代氏、メディア部兼映画プロジェクト部長・井上孝史氏、そして広報・宣伝担当の弥山亞希氏に話を伺った。
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「世界名作劇場」の魅力─。登場人物の優しさや強さ、異国の文化や香り、空気感、テレビの前にいながら体験できるワクワク感…。挙げればきりがないが、浅野氏は「人間性の涵養(かんよう)に寄与したいという創業者・本橋浩一の理念が詰まっている作品」と解説する。「涵養」とは難しい言葉だが「人の心にゆっくりとしみ込み、育むような、家族で楽しめるアニメ」が日本アニメーションの理念だという。
丁寧な描写も「世界名作劇場」の魅力。制作当初から舞台となった国での番組販売を考えていたため、各国にロケハンに行き、リアリティーの追求に務めた。良質なコンテンツは、現在も海外でも再放送され、多くの人々に愛されている。しかし、通年でじっくり世界観を描くことが多い「世界名作劇場」は、テレビ業界の取り巻く環境や生活習慣の変化もあり、第26作目の『こんにちは アン~Before Green Gables』(09)以降の新作は製作されていない。
「年間を通じて、日曜の19時台に約50話、家族みんなでアニメを見るという生活スタイルが、時代と共に変わってきました。弊社も、環境に応じて少し本数を減らしたり、BSで放送したりと様々な試みを行って、26作目の『こんにちは アン~Before Green Gables』まで制作してきました」と浅野氏は語る。
さらに「『世界名作劇場』という名前ではありませんが“子供の心の育成”という理念のもと、ここ10年ぐらいは、低年齢層に向けたショートアニメの製作など、親子の懸け橋となればという思いで、さまざまなアプローチを行っています。『世界名作劇場』に関しても、まだ白紙ですが、今の時代にあった企画で、弊社の理念に合うものがあれば、それを27作目として世に出すこともあるかもしれません」と付け加えてくれた。 現在まで制作したアニメは128作品。そして今年、創業40周年を記念し、長編アニメーション映画『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』を制作。誰もが知る名作の主人公に、今の子供たちに伝えたい思いを込めた。プロデューサーの井上氏は「時代の流れだと、ハイエンドユーザー向けのアニメで勝負するのが正しいのかもしれませんが、うちの会社は児童文学や、世界の名作を通して、子供たちの心を養うという理念がはっきりしています」と企画意図を語る。
そんな日本アニメーションの理念に、映画『STAND BY ME ドラえもん』など、VFXが得意な制作会社・白組が賛同した。「得意分野も違うし、お互いの良い部分が積み重なる相乗効果はあります。この映画も、企画当初よりずっと良くなりました。僕らがやりたい、伝えたいと思ったことが、新しい形で表現できていると思います」と井上氏。
地上波ゴールデンタイムのアニメ枠は減り、作品の出しどころに悩むことも多いと言う。しかし「配信も伸びていますし、BSさんやCSさんも力をつけています。
色々な形で我々が作りたい作品を出していける場所はあると思います」と浅野氏は前向きだ。
40年の歴史の中では、大変なこともあったと思うが「アニメは鉛筆一本で何でも出来る。描ける人と企画があれば制約はないんです」と井上氏が語るように、アニメを愛する人たちが同社には数多くいる。それが老舗アニメ制作会社の最大の魅力なのかもしれない。(取材・文・写真:磯部正和)
『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』は7月4日ロードショー。
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