4月よりニコニコ動画ほかにて配信開始となったアニメ『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』が、一部のアクションシーン以外を紙芝居風に描くという演出を行い話題になっている。間違った日本観や独特な言葉遣いなど、不思議な魅力を持った本作だが、そもそも『ニンジャスレイヤー』とはいかなる作品なのだろうか。


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 『ニンジャスレイヤー』の原作となるのは、米国人のブラッドレー・ボンド氏とフィリップ・ニンジャ・モーゼズ氏による小説である。日本に知られるきっかけとなったのは、2010年からツイッター上で連載をスタートした日本語翻訳版だ。本兌有氏、ライカ氏といったメンバーが作者から正式に翻訳の権利を取得し、ツイッターでつぶやく形で物語を展開していった。

 物語の舞台はネオサイタマと呼ばれる近未来都市。電子ネットワークが世界を覆い、サイバネティックス技術が普遍化した時代。平凡なサラリマン(原文ママ)だったフジキド・ケンジは、ニンジャ同士の抗争で妻子を失い、自らも瀕死の重傷を負ってしまう。そのとき、謎のニンジャソウルが彼に憑依。ニンジャを殺す者“ニンジャスレイヤー”としての復讐劇が始まった―。

 ジャンルとしては「サイバーパンクニンジャ活劇」と呼ばれており、間違った方向に誇張された日本観と濃密なストーリーの組み合わせが大きな魅力だ。たとえば「術」は「ジツ」、「手裏剣」は「スリケン」と表記されており、この他にもさまざまな片言の単語が登場する。「マルノウチ・スゴイタカイビル」や「ソウカイヤ」、「アマクダリ・セクト」といった表現は、日本人なら思わずニヤリとしてしまう。 しかし、米国在住の原作者が日本語で書いていたわけではない。
この独特な言葉遣いは、翻訳チームが原作の言い回しをそのままカタカナで表記したものなのである。原作では「ジツ」は「Jitsu」、「スリケン」は「Suriken」だ。

 これらは「忍殺語」と呼ばれており、原作の魅力を伝えるのに一役買っている。もしも、翻訳チームが気を利かせて、「術」「手裏剣」など正しい日本語表記に直して書いていたら、『ニンジャスレイヤー』の雰囲気はずいぶん違ったものになっていたことだろう。

 ツッコミを入れたくなる世界観と、思わず真似したくなる「忍殺語」の相乗効果により、『ニンジャスレイヤー』はSNS上で瞬く間に拡散された。特に物語の中で一般人がニンジャに遭遇した際に発する「アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」という叫び声はあまりにも有名だ。

 2012年頃からは商業展開が始まり、日本の出版社からも小説や漫画が発売。独特な演出が話題を呼ぶアニメ版もスタートし、『ニンジャスレイヤー』の世界はさらに広がりを見せている。今後どんな展開が繰り広げられるか楽しみだ。
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