19歳で月9『ビギナー』主演デビューを果たした女ミムラ。その後、休業を挟みつつ、31歳となり、人間として女優として成長した彼女が発売したエッセイ集「文集」が好評を博している。
“自分丸出し”と告白する本書は、出演作全43作(!!)を振り返る書下ろしを含め、女優という華やかな舞台に立ちながら、悩み多き等身大の女性として読む者の共感を呼ぶ内容に仕上がった。

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 小学生の頃から図書委員を務めていたミムラは大変な読書家。雑誌での絵本レビューや書評、公式サイトでの文章など、その文才にはかねてより定評がある。

 「わたし、末っ子なんです。そうすると、姉や親たちが知っていることを、初めて経験して『ねぇ、今日ね』と報告しても新鮮な話としては受け止めてもらえないんですよ(笑)。それでみんなが知らない話を持ってこようと思うようになって。幼稚園の頃から、漢字部分を飛ばしながらでもつま先立ちして、対象年齢より上の本や図鑑を一生懸命に読んでました。自分独自の話があるんだぞ!っと話すために本を開いたことが、読書好きになったそもそものきっかけだったと思います」と振り返るミムラ。

 末っ子の思いは、やがて本自体に向いていく。小学生の頃、文章を書くことから得た発見もあった。「読書感想文を書いて選んでもらったことがあったんです。そのときクラスメイトの男の子が褒めてくれて。
それまで全然話したことがなかった子が、わたしそのものではなく、わたしの書いたものに興味を持ってくれたことに感激したんです。それまで、文章は自分のコピーみたいなものだから、わたしを超えることはない。だからほかの人がおもしろいと感じるはずはないと思っていた。それがそうじゃないんだなと」。まさに本書は、ミムラと読者をそれぞれの視点で繋ぐ。 書下ろしの第7章では女優ミムラの軌跡が赤裸々に綴られる。「ひとつひとつの作品を個別に取り出して考えていくというよりも、そのときのわたしの感情の波に従って一気に書いていった感じです。そこに作品がはまっていったというか。なんの配慮もなく思いっきり出してしまったので、“丸出し”で恥ずかしいんですけど、書いていてすごく楽しかったのと、読み返してみて、どこかで引っ張ってきてしまったことから卒業する作業にもなったと感じています」。

 デビュー作『ビギナー』から、転機になった『斉藤さん』、自らが大ファンの向田邦子を演じた『おまえなしでは生きていけない』などなど、当時の彼女の思いに触れることができる。

 自身を見つめ直したことは、女優ミムラにとって大きな財産になった。「2年間休業していた時期があるんですが、休みに入る前に当時のマネージャーさんにわたしの売りを聞いたら、『圧倒的な清潔感』って言われたんです。
でもそれって役者としての売りとは違うんじゃないかと感じてしまったんですね。いまは自分が年上に見られることや、書いていてうんざりするほど感じた自分の真面目さ(これは本書を読むととてもよく伝わる)、これも特色だなと。わたしにしかできないアプローチで役にあたっていくことが使命なんだから、これからも真面目に頑張ろうと思えました」。垣根のない笑顔で迎えてくれたミムラ。本書を読めば、あなたもますます彼女を好きになる。(取材・文・写真:望月ふみ)

 ミムラ、エッセイ集「文集」(発行:SDP)は発売中。
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