NEWSの加藤シゲアキが書いた処女小説を大胆にアレンジし、幕開けから62分後に衝撃的展開が待ち受ける異色の青春映画『ピンクとグレー』。その中で、マドンナ的存在を演じた夏帆は、幼なじみ役のHey! Say! JUMP・中島裕翔と菅田将暉の間で揺れ動く乙女心に、「映画でしか経験できない三角関係、役得ですね」と笑顔を見せる。
今なおまぶしい制服姿も披露し、大胆なラブシーンにも挑み、清楚と奔放女性の二面性も見事に表現した夏帆が、作品への思い、撮影中のエピソードを語った。

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 本作は、NEWS加藤の原作を第53回岸田國士戯曲賞受賞の作家・蓬莱竜太が脚本化し、『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』などの俊英・行定勲監督がメガホンを取ったミステリー仕立ての青春ドラマ。売れない俳優・河田大貴は、幼なじみの人気俳優・白木蓮吾が急逝したことにより、一躍世間の注目の的に。白木の死は自殺か、それとも殺人か…。その死に立ち会った河田は、白木の遺言に従って彼の自伝を書き始める。

 前半、後半で内容が大きくシフトチェンジする本作は、「王道の青春映画ではない」と夏帆が言うように、とんでもない変化球で、観客は一瞬、何が起きたのかわからないほど驚き、そして動揺する。「撮影している時から完成が楽しみだった。私たちは内容を知っているので、『おお、来た来た!』っていう感じで観てしまうけど、先入観のないお客さんはどんな反応を見せるのかな」と興味津々の様子。

 ネタバレ厳禁、仕掛け満載の本作で、真逆の女性を見事に演じ分けた夏帆だが、清楚な女性から奔放な女性の変貌は、「観ている人が、え?急にどうしたの?って驚くぐらい極端に振り切った」と述懐する。中島との大胆なラブシーンにも挑戦しているが、これについては、「中島くんとはデビュー当時に共演していて、『まさか二人でこんなシーンをやるとは思わなかったね』っていう話はしました。お互い躊躇なくぶつかり合ったので、いいシーンになったと思います」とキッパリ。 女優としてのプロ意識が発言の節々に感じられる夏帆だが、中島と菅田との微妙な三角関係には、一人の女性として「憧れる」と目を輝かせる。
「幼なじみの男の子二人の間で揺れ動くなんて、うらやましいですよね。なんかキラキラしてる感じ。映画でしか経験できないことなので」と照れ笑い。ただ、撮影の合間は、中島と菅田があまりにも仲が良すぎて、入り込めなかったという夏帆は、「二人でキャッキャはしゃいだり、ギターを弾きながら歌ったり、なんかいいなぁって。疎外感があったわけではないけれど、入っていけない男同士の領域がありましたね」と笑顔で振り返った。

 2015年は、是枝裕和監督の『海街diary』でカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩くなど、世界にも視野を広げる飛躍の年となった夏帆。行定監督と組んだ本作でも体当たりの演技を見せ、女優として一皮むけた感もあるが、本人からは浮き足立ったところは全く見られない。「カンヌはとても刺激的でした。これからも真摯に作品と向き合って、夢は大きく自分の可能性を試していきたい」。意外と小さなことでウジウジ悩むと嘆くも、肝の部分は揺るがない得体の知れない強さを感じる。2016年の夏帆から目が離せない。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『ピンクとグレー』は2016年1月9日より全国公開。
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