2013年、まさかの実写化!と世間を騒がせ、大ヒットを記録した異色のヒーロー映画『HK/変態仮面』。あれから3年、さらにスケールアップした待望の最新作がいよいよ5月14日より公開される。
その名も『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』。しかも今作は、映画倫理委員会(以下、映倫)が定めた「PG12」の規制がない。もしかして変態仮面に何か異変が起きたのか?プロデューサー川崎岳氏にその経緯を聞いてみた。

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 映倫では、1・誰でも観ることができる「G」、2・小学生には助言・指導が必要な「PG12」、3・15歳以上が観られる「R15+」、4・18歳以上が観られる「R18+」と、年齢による4段階の区分(レーティング)が設けられているが、前作は「PG12」に指定され、今作は念願の「G」を獲得。この区分の違いは何だったのか。

 川崎氏は記憶を辿りながら3年前を振り返る。「通常、映倫さんに予備審査的に脚本を読んでもらって、引っ掛かりそうなところを事前に教えていただくんですが、ある言葉の“頻度・回数”に問題がある」と指摘された。「それは何ですか?」と尋ねたら、「チ○コという言葉が多すぎる」と。「え、回数ですか?じゃあ、例えば5回を3回にすればいいと?」と食い下がると、「ま、そういうことになりますかね」と。

 「なるほど、回数を減らすだけでいいならいける!」と喜び勇み、福田監督に報告すると、「そうですか…」と浮かない顔。ちなみに、その言葉が最も多く出てくるのは、安田顕演じるニセ変態仮面が演説をぶちまけるシーンだが、福田監督にとって思い入れがあるらしく、「考えさせてほしい」と深い闇の中へ。しばらくして、重い表情で戻って来た福田監督は、「すみません、例の件なんですが、“ティンコ”じゃだめですか?」と真顔で懇願したという。
 川崎氏は、すぐに映倫に提案すると、「うーん、あまり変わらないですかね」との回答。ところが福田監督も一歩も譲らない。「後から気づいたんですが、あれはチ○コを何度も繰り返すとこも重要なキャラクター性で、回数を減らしたら、あの狂気は生まれなかったと思うんです」と。そんなわけで「PG12」指定映画になったが、結果的には家族同伴の小学生も来場し、予想外の大ヒットを記録した。

 そして迎えた第2作、なんと、チ○コという言葉は1度も出てこない。唯一、ムロツヨシ演じる大金玉男の“ティンコ”という言い回しが1度出てくるが、これは福田監督が前回の経緯を踏まえて配慮したことだった。「ところが」と川崎氏が口火を切る。「今回は違うところで引っ掛かってしまって。前作のノリを知らない新しい方がご担当になったのも関係あったかも」と述懐する。

 「都合2回、未遂を合わせると2.5回。変態仮面の象徴である“おいなりさん”、いわゆる股間を手で触る、揉む、という表現が出てくるんです」。文字で追うと確かに過激だ。
「川崎さん、これはちょっと危ない。セクシャルな意味に取られる場合もあるので『R18+』になる恐れもあります」と担当者に指摘され、福田監督に相談。現場も「G」への熱い思いがあり、「間違っても卑猥な撮り方はしない」と約束したという。

 そして後日、映倫さんに完成前のオールラッシュを観てもらったら、「川崎さん、これは「G」ですね!『R18+』とか付けようがない。しかしまぁ、くだらない映画ですね(笑)」と愛あるお墨付きをいただき無事クリア。「映倫さんは、ダメなところはズバッと指摘するが、そこに他意はなく、製作サイドの意図を理解してアドバイスをくれる」と川崎氏は語る。変態だけど、ヒーローとして認められた…福田監督にとって「PG12」があるかないかは大問題。熱意は報われ、いよいよ公開を待つ。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』は5月14日より新宿バルト9ほか全国公開。
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