高野苺の人気コミック『orange』がTVアニメとなって登場する。10年後の自分から手紙が届いたことから始まる青春SFストーリーで、共演を果たすのは声優花澤香菜山下誠一郎
まるで姉弟のような仲の良さを見せる2人に、「自分を変えてくれた大切な出会い」。そして、10年後へ思い描く未来予想図を聞いた。

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 高校2年生の菜穂の元に届いたのは、未来の出来事が書かれた手紙。その手紙の目的は、同級生の翔を死から救うためのものだった…。青春SFラブストーリーでありながら、想いを果たせなかった10年後と現在が交差するドラマチックな人間模様が展開する本作。

 翔を救うために奮闘する菜穂役の花澤は「手紙の内容もあって、ナレーションやモノローグの場面では菜穂の中でも葛藤がある。そこは、私自身も悩んでいて。菜穂は高校生らしい明るいところもあるんだと意識しながらやらないと、どんどん重くなってしまうと思って。自分の中で切り替えが必要」と告白。翔役の山下も「10年後の世界では翔は“死んでしまう”という事実があるけれど、現在の菜穂たちの行動や心情で、この時代での未来が少しずつ変わってくる。どこで翔の感情が変化したんだろうと考えることが多いです。すごく難しい」と「生と死」に真っ直ぐに向きあった物語だからこその、繊細な表現に挑んでいる。


 また花澤は「オーディションの前に、偶然、友達と松本旅行に行ったんです」と“先取り聖地巡礼”に行ったとも。どっぷりと役柄に浸りたいタイプのようだが、「本当に不器用で。マイク前に行ってバッと役になれるタイプではなくて、いつでも彼女のことを思ってスタートしないとダメ。助走が長いタイプなんです」とひたむきな姿勢を明かす。

 そんな花澤について山下は「近しい役どころでご一緒させていただくのは2回目。劇中では翔が菜穂を引っ張っていくようなところもありますが、演技では僕が引っ張ってもらっています。花澤さんがドンと空気作りをしてくれるので、現場では、家で考えていた以上のものが思わず出ちゃう。頼もしいです」と尊敬しきり。花澤は「現場では先輩・後輩は関係ないんですけど」と言いつつ、「うちの事務所って、いい声のおじさま方がいっぱいいる事務所で、若い男の子がいなくて。やっとできた男の子の後輩なんです。現場にくると、“よし!”と独り言を言っていたり、放っておけないところがあって(笑)。私自身、弟がいるのでなんとなく重なりますね」と笑い合う姿は、本当に姉弟のようだ。
 仲間たちの思いが、翔の未来を変えていく物語。2人にとって、自分を変えてくれたような大切な出会いはあるだろうか?すると花澤は、ヒロイン・常守朱を演じた『PSYCHO‐PASS サイコパス』との出会いをあげた。「TVアニメ、劇場版、ゲームと長い間、朱と接することができて。他の役者さんたちが全員ベテランだったりと、私の置かれている状況も朱と重なったんです。彼女と一緒に色々な経験をして、成長させてもらった。自分でいうのも何ですが、ちょっとたくましくなったかな?“何が来ても撃ち返してやる!”というのが朱。私もそうできるようになってきたのかなと思います」。

 山下は「高校の書道の先生」だと話す。「“進学すべし”といった学校だったので、今の仕事や業界に行ってみたいと話した時に苦い顔をされることが多くて。唯一、その先生だけが“男だったら一度くらいそうやって出て行かないと大きくなれない!行ってこい”と言ってくれたんです。あの一言は大きかったです」。

 一つ一つの出会いを糧にしてきた2人。
最後に10年後の希望を聞いた。花澤は「求められなければできない仕事。続けられていたらいいな」と謙虚に語り、「そのために常にチャレンジしたい。もともと体は丈夫ですが、健康も大事ですね」とにっこり。山下は「今はしがみつくことで必死。自分から発信できるようになって、もっと仕事を楽しめるようになりたい」と前のめりで話す。清々しく誠実な2人の未来が、これからも楽しみで仕方がない。(取材・文・写真:成田おり枝)

 TVアニメ『orange』は7月3日深夜24:00よりTOKYO MX他にて放送。
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