方言指導のOKが出てから監督のチェックが入る…。「珍しいですよ」と声優陣が口を揃えるほど“言葉”というものを大切に扱うアニメ、それが『バッテリー』だ。
今回、その『バッテリー』にメインキャストとして出演する内山昂輝畠中祐梅原裕一郎の3人に話を聞いた。

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 『バッテリー』は、長きに渡り愛されるあさのあつこ著作の青春文学。シリーズ累計発行部数1000万部の青春野球小説であり、このたび刊行から20年という節目の年に初のTVアニメ化となった。岡山県、新田市を舞台に主人公の天才ピッチャー・原田巧役を内山、巧とバッテリーを組む永倉豪役を畠中、巧と豪が所属する新田東野球部のキャプテンであり、二人を見守る海音寺一希役を梅原が演じる。

 刊行から20年、“児童文学の金字塔”とも呼ばれる原作なだけに、読んだことがある、もしくは当たり前のようにその存在は知られている本作。ゆえに、内山は「『バッテリー』を今、このタイミングでアニメ化すると聞いた時は驚きました」と正直に明かす。その理由は「小さい頃に、原作を読んだ覚えがあるので、その記憶が色濃く残っています」と口にする。一方、読んだことはなかったものの「小学校の時に、図書室にあった作品ですし、純粋に『バッテリー』と聞いたら“あれか!?”って思いますよね」と話したのは畠中。「キャスト同士の掛け合いなどをきちんと求められる作品という予感もあったので、“やりたい!”って思いました」と目を輝かせた。

 内山、畠中の言葉にもあるように「有名な作品なので、多くの人が読んでるし、それぞれが印象を持っていると思う」という梅原は、だからこそ「海音寺というキャラクターをどう作っていこうかなとは、思いましたね」と、長きに渡って愛されてきた作品との向き合い方を語る。

 本作では中学生を演じている3人だが、それぞれ「違和感などはなかった」と口を揃える。内山曰く「絵(キャラクターデザイン)に助けられた」とのことで、「実際の年齢との差はあるけれど、アニメ内のリアリティといいますか、全体のバランスも含めて成立しているかなと思います」。
梅原も「無理のない範囲で意識せず、“らしく”演じました」と明かす。そんな中、「途中で声変わりもするだろうし…」と、自分内キャラ設定を告白し、内山と梅原からツッコまれたのは畠中。「僕の中では若干声変わりをするだろうと予測して、声を多少低くしてもいいのかなと思っていたんです!」と2人に弁明。アタフタする畠中に内山と梅原も笑う。 野球を通じて、中学生たちの成長を描き、様々な人間関係を描く『バッテリー』。登場キャラクターも誰ひとりとして同じような性格などはおらず、一人ひとり丁寧に人物を描いている。自身が演じたキャラクターを含め、登場人物全員の中で誰が自分に似ているか、3人にズバリ聞いてみた。

 「巧を演じる中で、“理解できない”という印象はなかった」と、自身が演じた巧の名をあげた内山。「気持ちの流れといいますか、言わんとするところはわかりました」。畠中は、「豪も近いのですが、豪に吉貞感を足さないと…」と少し照れた様子で口にする。「豪のように、物事を考えているのかと言ったらそうでもないので…吉貞の少しお調子者なところを足して2で割る感じです」と自身を分析する。
 
 そんな内山、畠中から驚きの声が上がったのは梅原の発言。
「似ているか似ていないかというより、共感できたのは展西です」と、巧をリンチし部の存続問題にまで発展させた人物の名を挙げた。「あれが普通の反応なんじゃないかと思ったんです。リンチはやり過ぎですけど、人間ってああいう部分もある気がします」梅原のコメントに、内山、畠中の2人も“言われてみれば…”というように顔を見合った。

 物語も佳境に入り、巧と豪のバッテリーがギクシャクしてくるTVアニメ後半。畠中は「何で二人が話さなくなっていくのか…キャラクターの心の機微に注目してほしいです」。「二人の会話が減れば減るほど、海音寺がしゃべります(笑)」と梅原。「二人がギクシャクしている時の海音寺のわちゃわちゃ感が面白いと思います」とそれぞれアピールする。

 最後に内山は「野球をテーマにしつつも、中学生たちの人間関係や、彼らと親との関係など、そういう人間ドラマを描いている作品です。後半は念願の試合に向けてストーリーが動いていきますが、彼らの未来に思いを馳せたくなる結末になっていると思います」。(取材・文:ほりかごさおり)

 TVアニメ『バッテリー』は、フジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜24時55分放送。ほか各局でも放送中。
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