漫画原作の実写化において、厚い信頼を得ている俳優・本郷奏多。奥浩哉の人気コミック『いぬやしき』を映像化するプロジェクトでは、実写映画版とアニメ版の両方にキーマンである安堂直行役で出演する。
奥の代表作を映画化した『GANTZ』について「ターニングポイント」と言い切る彼。漫画原作の実写化に注ぐ、並々ならぬ情熱を語った。

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 『いぬやしき』は、サラリーマンの犬屋敷壱郎と高校生の獅子神皓が、強大な力を手に入れたことから始まるSFヒューマンドラマ。アニメ版が10月12日より放送、実写映画は2018年公開となる。今年の春に行われた実写映画の撮影現場で、「“アニメ化もするらしい”と聞いて。キャスティングがまだ決まっていないというので、“安堂役やりたいな、アニメ出たいな”と言っていたんです。
言ってみるもんですね」と自ら志願して、アニメへの出演を勝ち取ったそう。

 『BTOOOM!』をはじめ、声の演技にも定評のある本郷。「アニメーションに声を当てるお芝居というのは、映像で顔を出してのお芝居と使う技術が基本的に違うと思っていて。僕はアニメが好きでたくさん見ている時期もあったので、アニメの演技において“ここでブレスを入れるべきだな”“キャラクターがこういう動きをしたら、こういう演技が必要だな”など、見ているからこそわかることもあったと思います」とアニメ好きとしてのアドバンテージも感じている。

 安堂役については「芯があって心のきれいな男の子。物語の中でとても成長するんです」と愛情たっぷり。
安堂は「『GANTZ』信者」という設定だが、本郷も「大好きな漫画」という『GANTZ』の大ファン。2011年の実写映画には、西役として出演を果たした。「『いぬやしき』の中では、『GANTZ』をけなされた安堂が『悪口は言うな』という展開があって。面白いシーンです。しかも原作で『GANTZ』の実写映画を観ているシーンがあって、そこに僕が演じる西が映っているんです。僕は『いぬやしき』の原作、アニメ、実写と制覇したことになります」と楽しそうにニッコリ。
 「奥先生の作品に出られるのはうれしいです」という彼。改めて『GANTZ』は自身にとってどんな作品になったのだろうか。すると「ターニングポイント」とキッパリ。「役者人生の中で一番大きな作品と言えると思います。いまだに“GANTZ観ました”と言われることもあって。『GANTZ』の西に関しては一度も否定的な意見を言われたことがないんです。
あの当時、『GANTZ』に出させていただいたことはラッキーだったし、自分自身もハマれたと思っています」。

 西は当たり役となり、その後もドラマ『アカギ』の赤木、映画『鋼の錬金術師』のエンヴィーなど、原作ファンからも「本郷奏多なら楽しみ」と声が上がることもしばしば。“実写化請負人”との呼び声も高いが、「そう言っていただけるのはありがたいです」と喜びを噛みしめる。「僕は漫画やアニメが好きなので、オファーをいただいた時点でその原作のファンであることも多くて。もし知らなければ、きちんと読んで勉強します。ファンの中でも一番のファンになろうと思って、読み込みます」。


 「実写化するといったときに、一番熱心に気にしてくれるのは、原作ファンの方。原作を好きな人からしたら、役者がオリジナリティを出してきたら嫌だと思うんです。“実写化したらこういうものを見たい”というところに合わせるのが、一番の正解だと思っていつもやっています」。原作ファンの気持ちを十分に理解しているからこそ、信頼を得ている。

 「でも漫画やアニメの登場人物は、こちらが歳を重ねるにつれて離れていってしまうもの。あと数年かもしれません。
漫画原作の実写映画に出られる間は、なるべく色々な作品に出たいです」と冷静に分析する本郷。「役者業はゴールや正解がないからこそ、不安です。いつ声がかからなくなるかもわからない。その場でできる限りのことを精一杯やる。それを続けていくしかないと思っています」。クールなイメージの中に、熱い思いを秘めていた。(取材・文・写真:成田おり枝) 

 『いぬやしき』は、フジテレビ「ノイタミナ」ほかにて放送中。第2話は25時05分より放送。