映画『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、あの花)や『心が叫びたがってるんだ。
』で脚本を務めた岡田麿里が、初監督に挑んだ最新作『さよならの朝に約束の花をかざろう』が公開となった。本作で、10代半ばの姿で成長が止まり長い年月を過ごす一族であり、“少女のような姿”のまま、みなしごの男の子の母親として生きる決意をする主人公・マキアを演じるのは、デビュー1年半ほどの新人声優石見舞菜香。大作での主演を射止めた思いなどを明かしてくれた。

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 映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、岡田麿里が脚本・監督を担当、制作をP.A.WORKSが手がけるファンタジー作品。数百年の寿命を持つイオルフの少女・マキア(CV:石見)は、ある日、イオルフの長寿の血を求めるメザーテ軍の侵略により故郷を追いやられてしまう。その後、さまざまな人びととの出会いを通して、みなしごの赤ん坊だったエリアル(CV:入野自由)の母として生きる決断をする…。

 本作は自身にとって「宝物のような時間が多かった作品」と語る石見は、その理由を「アフレコまでの準備期間が1年ほどで、脚本を読み込んだり作品と接する時間がいちばん長かったからです」と明かす。

 オーディション当時は「感情を爆発させるようなお芝居が初めてで、自分なりにもっとできたんじゃないかという思いもありました」と不安があったものの、合格を告げられたときは「信じられないほど驚いて、マネージャーさんの前で思わずほっぺたをつねりました(笑)」と回想。その直後、帰りの電車に乗る直前に母親へ報告すると「おめでとう!ケーキを買って帰るから!」と一緒になって喜んでくれたという。 アフレコ時は岡田監督から「マキアちゃんのキャラクターを作り込み過ぎず、オーディション当時のいっぱいいっぱいだった石見さんのままでお願いします」と指示をもらったようだが、じつは、声優を志したきっかけは『あの花』での茅野愛衣の演技に魅了されたところから。収録現場で岡田監督にその思いを伝えたところ、喜びと共に「え、そんな若いの?」と意外な反応も返ってきたそうだ。

 少女の姿のまま母として生きるという難しい役どころに「もちろん母親を今まで経験したことがないので、初めは何も分からなかった」と率直な思いも明かしてくれた石見だが、本作で参考にしたのは母と子をテーマにしたドラマ『14才の母』や『Mother』など。
一方で、日頃から母親を観察するようになり「自分の世代だと感じることのできない母親の感情があるんだなと、改めて気づかされました」と振り返る。

 声優になった当初は「誰かに評価されるお仕事だし、自分を認めた瞬間に成長が止まってしまうから辛いことばかりなのだろう」と思っていたというが、今では「素敵な作品や物語、あこがれの方々に出会える喜びを感じられるようになりました」と実感を示す。本作で長編アニメの主演という大役を射止めたが、自身は「自然体のお芝居が好き」という石見は、今後「茅野さんのようにお芝居を通して、人の心を揺り動かせるような役者になりたい」と将来への展望も語ってくれた。(取材・文・写真:カネコシュウヘイ)

 映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、2月24日より公開。
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