吉田秋生の伝説的コミックが、TVアニメ『BANANA FISH』となって登場する。アニメ化決定のニュースを受けて、連載当時少女だったアラサー、アラフォー女子の中には「ヤバイ!」とドキドキが止まらない人も多いはず。
『BANANA FISH』というタイトルが、なぜ今でもこんなにも胸をときめかせるのか。永遠にファンの心に生き続ける、本作の魅力を探ってみたい。

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 1985年~1994年まで「別冊少女コミック」に連載された『BANANA FISH』は、ニューヨークのストリートキッズのボス・アッシュが心優しい日本人の少年・英二と運命的な出会いを果たしながらも、ともに巨大な陰謀に巻き込まれていく姿を描く物語。『吉祥天女』『YASHA‐夜叉‐』『海街diary』などで知られる人気漫画家・吉田秋生の代表作だ。

 バナナフィッシュというキーワードをめぐるミステリー、スリリングなストリートキッズたちの戦い、立ちはだかる巨悪、激しいガンアクション…。まるでハリウッド映画のようなハードボイルドな世界観は少女漫画界に衝撃を与え、幅広い世代の女性だけでなく男性の心をもわし掴みにした。

 何よりも鮮烈だったのが、アッシュという主人公の登場だ。金髪、緑の瞳のアッシュは誰もが息をのむほどの美しさを持った青年。さらにはIQ180以上と頭脳明晰、運動神経もずば抜けており、リーダーとしてのカリスマ性たっぷり。悲しい少年期を過ごしたことから、冷酷さを身につけてしまっており、そのヒリヒリとした心を英二が癒していくのだ。

 アッシュは、『スタンド・バイ・ミー』や『マイ・プライベート・アイダホ』などで人気を誇りつつも、1993年に23歳の若さで亡くなった俳優リヴァー・フェニックスをモデルにしているともいわれており、彼が日本の漫画に出てきてような感覚に酔いしれた人も多い。リヴァーそっくりの美しき孤高のヒーローが日本人の英二にだけ心を開く。
今読み直しても、キュンキュンする設定…。母性本能をくすぐられ、多くの女性陣は「私があなたを守る!」と英二と自分とを置き換えてアッシュに寄り添っていたことだろう。結果、アッシュが永遠に忘れられない男性=伝説となった人もいるはず。それほどに彼は特別なキャラクターなのだ。 改めて思うのは、吉田が“孤独”を見事に描き出す漫画家だということ。そして孤独を抱えた人が出会いを通して変化していく様を、丁寧に描き切る。誰も信じず、“美しく危険な獣”だったアッシュ。彼がまっすぐに自分を受け止めてくれる英二と巡りあったとき、英二の前では顔を赤らめたり、小さな子供のように涙をこぼす。2人の結ぶ絆からは、「この世には裸の自分を愛してくれる人がいる」という希望があふれる。アッシュという、弱さと強さを持った伝説的ヒーローの存在。そしてアッシュと英二が見せてくれた“希望”こそ、本作の最大の魅力と言えよう。

 原作ファンにとっては長年、大切に思い続けてきた作品だけに、アニメ化に際してざわつかずにはいられない。
先日、解禁となったアニメ版PVでは、物語の舞台が“現代”に変更されていることが判明。アッシュがスマホを持っていることが話題となるなど、「おや?」と思った場面も。しかし原作の大ファンで、企画を担当したアニプレックス・瓜生恭子の「原作を読んだことのない世代にも本作の魅力を伝えたい」との言葉に大きくうなずいた。確かに時代設定が馴染みのないものだと、ドラマ性を受け止める反応が鈍くなってしまうこともあるだろう。アッシュの輝き、アッシュと英二の絆は、時代設定を変えたからといって色褪せるはずがない。若い世代の胸にも必ずや響くはずだ。

 原作ファンが制作を担い、アッシュ役の内田雄馬、英二役の野島健児声優陣もコミックスを読み込んでいるとのことで、原作愛にあふれた作品になりそうなことがビシビシと伝わるのがうれしい限り。動くアッシュも美しい!吉田秋生も「やばい。あたしよりウマい(笑)」との最高の賛辞とも思えるコメントをアニメ公式サイトに寄せており、7月の放送に向けて期待が膨らむばかりだ。

 TVアニメ『BANANA FISH』は2018年7月よりフジテレビ“ノイタミナ”で放送開始。
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