アフリカを中心に世界中の少数民族を撮り続けるフォトグラファーのヨシダナギが、現在、大ヒット公開中のマーベル・スタジオ最新作『ブラックパンサー』を自ら劇場に足を運び鑑賞。「私が知っているアフリカ人の暮らしや人間性が見事に反映されていた」と笑顔で語る彼女は、細部にまでこだわった本作のクオリティーに感心しきり。
「ヒーロー映画として描かれているけれど、彼らのかっこよさは本物。決して作り物の“ヒーロー”ではない」と太鼓判を押した。

【写真】ヨシダナギインタビュー写真&『ブラックパンサー』場面写真

 本作は、若き国王と漆黒のヒーローという2つの顔を持つ男ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)が祖国の存亡を懸けて死闘を繰り広げるアクション・エンタテインメント。超文明国ワカンダの国王だった父を亡くした息子ティ・チャラが、祖国の秘密である世界を破壊するパワーを秘めた鉱石“ヴィブラニウム”を守るため、“ブラックパンサー”に変身し、世界中の敵と戦う姿を壮大なスケールで描く。

 5歳の時に偶然テレビで観たマサイ族のスタイルに魅了され、その後、独学で写真を学び、2009年よりアフリカを中心に世界中の少数民族をカメラに収めてきたヨシダ。現地をよく知る彼女だけに、本作に対する反応が気になるところだが、開口一番、「私が知っているアフリカ少数民族の気質や昔ながらの暮らし、ファッションなどが上手に盛り込まれていて、とても親近感が持てた」と満面の笑顔を見せる。

 普段はほとんど映画を観ないというヨシダ。アフリカをテーマにした作品は何本か観たことはあるそうだが、そのほとんどがドキュメンタリーだった。「CGを駆使した娯楽映画は観たこともなかったので、“どうせアフリカの現実とはかけ離れたものだろう”とやや懐疑的だったのですが、マサイ族やヒンバ族、トゥアレグ族、ズールー族などの少数民族がモチーフになっているシーンがたくさんあり、衣裳やアクセサリー1つ取ってみても、物凄く綺麗に再現されていた」と驚きを隠せない様子。

 また、主人公のティ・チャラ(チャドウィック)が口にするアフリカの言語にもこだわりを感じたというヨシダはこう予測する。「時おり“クリック音”が聞こえたので、たぶん、南部アフリカの言語も入っているのかな?と思いましたね。たまたまなのか、それとも計算して入れたのかはわかりませんが、アフリカ少数民族の文化をこの1本にギュッと凝縮したところが凄い」と手放しで絶賛した。


 特に印象に残ったシーンについてヨシダは、「オコエ(ダナイ・グリラ)を中心とした親衛隊が、槍で地面をドンドンと叩くシーン」をチョイス。「実際にマサイ族が叩いているところを生で観たことがあるんですが、凄まじい迫力なんですよ。彼らが槍を持って地面を叩くだけで“こんなに引締るんだ”ということを、今回映像を観て改めて実感しました」と自身の思い出と重ね合わせる。 さらに、心に刺さったセリフについてヨシダは、「ネタばれになるので、あまり詳しくは言えませんが、劇中、“私たちは、違いよりも、共通点の方が多いと思う”という発言があるのですが、彼らは本当にそう言うんですよ。差別を受けてきたという歴史もあるのですが、ネイティブな人ほどそういうスタンスで生きている」と力説。「彼らの生の声だからこそ信憑性がある。このシーンは心からグッきました」と思いを込めた。

 「ヒーロー映画ではあるけれど、ここで描かれる登場人物は、実存するアフリカ少数民族を反映した人たちばかり。私にとっては決して作り物ではない、本物のヒーロー」。そう強調するヨシダは、「アフリカに興味がなかった人にこそ観てほしい。この映画を観て、こんな綺麗な衣裳やアクセサリーがあるんだ、とか、こんなかっこいい人たちがいるんだ、とか、アフリカに少しでも関心を持っていただけたらうれしい」と、愛を込めて締めくくった。(取材・文:坂田正樹/写真:坂本碧)

 映画『ブラックパンサー』は全国公開中。
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