90年代、全世界をにぎわせたスポーツ界の問題児が、今、映画でよみがえる。マーゴット・ロビーが主演とプロデューサーを兼任する『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(5月4日公開)は、アメリカ人女性として初めてトリプルアクセルを成功させたフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの伝記映画だ。
【写真】『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』フォトギャラリー
1994年1月に起きたその出来事は、やはり有名なフィギュアスケートの選手だったナンシー・ケリガン(当時24歳)が、練習の直後、何者かに棍棒で脚を殴られたというもので、しばしば“ナンシー・ケリガン襲撃事件”と呼ばれる。怪我のせいで、ケリガンはアメリカ代表としてリレハンメル・オリンピック出場を諦めることになるかと思われたが、順調に回復し、無事出場を果たして、見事、銀メダルを獲得した。
犯人として逮捕されたのは、シェーン・スタントという名の男性。まもなく、彼を雇ったのがケリガンのライバルであるハーディング(当時23歳)の元夫ジェフ・ギルーリーと、ギルーリーの友達でハーディングのボディガードを自称するショーン・エッカードだったことが判明する。
ハーディングは関与を否定したが、メディアはすぐさまこのスキャンダルに飛びついた。ハーディングとケリガンは、仲良しとは呼べなかったものの、狭い世界で、同年代の、長年にわたる知り合いだ。そんな相手を、自分がアメリカ代表としての枠を得るために、こともあろうに“元”夫を使って襲撃させたとは、フィギュアという美しい世界といかにも不釣り合いな安っぽい話ではないか。ハーディングは育ちが悪い人、ケリガンはお姫様というイメージがあったことも(実際には、ケリガンの家も裕福とはほど遠かったのだが)、このドラマに輪をかけた。当時、アメリカのテレビのコメディアンは、大喜びでハーディングをジョークのネタに使ったものである。
しかも、そこまでして出た肝心のオリンピックで、ハーディングは、トリプルルッツが1回転となる失敗をおかし、演技を中断して、ジャッジに「靴紐のせいだ」と訴える醜態を見せることになってしまった。
私生活では、最初の夫ギルーリーと離婚後、2番目の夫と結婚するも2年で破綻。2010年に、現在の夫ジョセフ・プライスと結婚した。『アイ,トーニャ』の監督クレイグ・ギレスピーは、映画が完成した時、この夫婦ふたりだけのために、彼らが住むオレゴン州ポートランドの映画館の1スクリーンを貸し切り、プライベートの試写を行っている。映画の出来にハーディングは満足したと監督は語っている。(文:猿渡由紀)
映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、5月4日より全国公開。
だが、現在27歳のロビーも、脚本を読むまで彼女について知らなかったという。“史上最大のスキャンダル”とは何だったのかを、振り返ってみよう。
【写真】『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』フォトギャラリー
1994年1月に起きたその出来事は、やはり有名なフィギュアスケートの選手だったナンシー・ケリガン(当時24歳)が、練習の直後、何者かに棍棒で脚を殴られたというもので、しばしば“ナンシー・ケリガン襲撃事件”と呼ばれる。怪我のせいで、ケリガンはアメリカ代表としてリレハンメル・オリンピック出場を諦めることになるかと思われたが、順調に回復し、無事出場を果たして、見事、銀メダルを獲得した。
犯人として逮捕されたのは、シェーン・スタントという名の男性。まもなく、彼を雇ったのがケリガンのライバルであるハーディング(当時23歳)の元夫ジェフ・ギルーリーと、ギルーリーの友達でハーディングのボディガードを自称するショーン・エッカードだったことが判明する。
ハーディングは関与を否定したが、メディアはすぐさまこのスキャンダルに飛びついた。ハーディングとケリガンは、仲良しとは呼べなかったものの、狭い世界で、同年代の、長年にわたる知り合いだ。そんな相手を、自分がアメリカ代表としての枠を得るために、こともあろうに“元”夫を使って襲撃させたとは、フィギュアという美しい世界といかにも不釣り合いな安っぽい話ではないか。ハーディングは育ちが悪い人、ケリガンはお姫様というイメージがあったことも(実際には、ケリガンの家も裕福とはほど遠かったのだが)、このドラマに輪をかけた。当時、アメリカのテレビのコメディアンは、大喜びでハーディングをジョークのネタに使ったものである。
しかも、そこまでして出た肝心のオリンピックで、ハーディングは、トリプルルッツが1回転となる失敗をおかし、演技を中断して、ジャッジに「靴紐のせいだ」と訴える醜態を見せることになってしまった。
そしてオリンピック終了後の同年3月、ハーディングは、懲役を逃れるために罪を認め、500時間の社会奉仕活動、16万ドルの罰金を受け入れる。これを受けて全米フィギュアスケート協会は、ハーディングに生涯追放を命じた。貧しい家に生まれ、スケートだけをひたすらやってきたハーディングは、こんな形で自分を定義するものを失ってしまったのだ。 その後、ハーディングは女性ボクサーとしてデビューするが、そのキャリアは短くして終わり、次にはカーレースにも挑戦している。映画『アイ,トーニャ』の成功のおかげか、4月30日に新シーズンを迎える人気リアリティ番組『Dancing with Stars』に、挑戦者として出演することも決まった。彼女の人生は、次のステップを迎えたようである。
私生活では、最初の夫ギルーリーと離婚後、2番目の夫と結婚するも2年で破綻。2010年に、現在の夫ジョセフ・プライスと結婚した。『アイ,トーニャ』の監督クレイグ・ギレスピーは、映画が完成した時、この夫婦ふたりだけのために、彼らが住むオレゴン州ポートランドの映画館の1スクリーンを貸し切り、プライベートの試写を行っている。映画の出来にハーディングは満足したと監督は語っている。(文:猿渡由紀)
映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、5月4日より全国公開。
編集部おすすめ