アイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ソー(クリス・ヘムズワース)ら、最強ヒーローチーム「
アベンジャーズ」が、最凶の敵・サノスと死闘を繰り広げる映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。オープニング3日間の興行収入があの『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を超えて、全米歴代映画史上No.1の大ヒットを記録中だ。
見るものを圧倒する世界観や迫力ある映像、壮絶なアクションと見どころ満載の本作を、「新しい映像体験だった。気持ちのいい戸惑いがあった」と絶賛するのは、『牙狼‐GARO‐』シリーズで知られる
雨宮慶太監督。自身も特撮ヒーローものを多数演出する雨宮監督に、映画監督ならではの視点で本作の魅力を語ってもらった。
【写真】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』雨宮慶太監督インタビュー写真&場面写真 6つすべてを手に入れると世界を滅ぼす無限大の力を得るインフィニティ・ストーンを巡り、アベンジャーズとラスボス・サノスが人類の命運をかけたバトルを繰り広げる本作。「この作品の主役はアベンジャーズじゃなく、サノス」と雨宮監督は話す。
そして、「サノスは、ほかの映画で見るヴィランズのように深みを持たせるためだけに『宇宙のバランスをとる』と言っているわけではない。彼のその言葉は首尾一貫していて、昨日今日思いついたことではなく、彼の生き方や美学、哲学にはブレがないんです」と踏み込んだ視点でサノスを分析すると、「ブレないものに対しては、太刀打ちできない。アベンジャーズも、それぞれのキャラクター自体はブレてないんですが、価値観が淘汰されていなくて、各々の価値観で戦っている。この作品では、それは弱点だと表現されています」と本作の真髄についても言及した。
「一貫して彼の価値観や行動で動いているので、映画を見終わるとサノスが好きになってしまう。それは、キャラクター造形をそれだけやっているから」と、マーベルの徹底したキャラクター造形を賞賛した。
キャラクター造形で言えば、「アイアンマン」についても「一番(自分たちと)近い感じ」が魅力的だと雨宮監督はいう。
「トニー・スタークのキャラが好きなのもありますが、顔を全部覆っている、鎧的なビジュアルが良いんです。例えば一般的にはキャプテン・アメリカやソーのように、顔や顔の一部が露出しているヒーローの方が人気があるんです。 そもそも、雨宮監督はキャラクターデザイナーとしても名高い人物だ。自身のキャラクターデザインについての考えを聞くと、「ヒーローは、倫理観や正義感を押し付けていいと思っている。それが歪んできてしまうと、悪になってしまうけれども、それが歪んでいないのであれば、描く価値のあるもので、押し通すことでブレないキャラクターが出来上がる」と思いを語ってくれた。さらに、マーベルヒーローは何年経っても、外観やコンセプトが変わらないことを挙げ、「例えばアイアンマンはスーツ以上の力を出したり、巨人になったりしない。それはずっと変わらない。スーツ自体の印象も変わらない。その凄さがある。押し付けるほどの価値観を持つヒーローを、何十年も前から作って、それを変えずにいることがすごい」と力説。「僕もキャラクターはなるべく変わらないようにしている。このデザインがかっこいいんだ、この行動原理がかっこいい、痺れるんだって、人に押し付けることができる造形を作るように心がけています」。
衝撃的な結末が待ち受け、大きな話題を呼んでいる本作だが、雨宮監督は「一言で言えない要素がある映画。鑑賞というより体験する作品。映画の枠を超えている。エンタメの新境地を切り開いた」と本作を評し、「続きの物語がどう語られていくか気になるところですね」と次回作への期待をのぞかせた。(取材・文:嶋田真己/写真:中村好伸)