【写真】2015年から辿る「町田啓太」フォトギャラリー
幕末の動乱期、薩摩藩の事実上の最高権力者であった島津久光(青木崇高)の側近として藩政を盛り立てるとともに、大久保一蔵(利通/瑛太)や西郷吉之助(隆盛/鈴木亮平)ら優秀な下級藩士を積極的に登用。その功績は高く評価され、“維新の十傑”に数えられている。
そんな英傑を演じることになり、「文献などをかなり読んで自分なりに調べた」という町田。「読めば読むほど、頭脳明晰なエリートで、人格的に素晴らしいという非の打ち所のない人物だと分かり、大きなプレッシャーを感じました」と胸の内を明かす。
しかし、広く人の意見を聞く耳を持っていた小松の特性に共通点を見出したという。「坂本龍馬(小栗旬)の新婚旅行の段取りを整えたのも帯刀らしいのですが、裸一貫になれば上級武士だと気づかれないと温泉に入って一般の話を聞き、そこで得た情報を上に進言するところは素敵だなと思いました。僕も俳優としてお芝居させていただく中で、いろいろな方とお会いして話を聞く機会があるのですが、立場など関係なしに感銘を受けることが多いんです。相手の話をしっかり聞いて、取り入れる感覚は活かせるのかなと思います」。
今回、帯刀の部下・大久保を演じる瑛太は、2008年放送の大河ドラマ『篤姫』で帯刀を演じた過去がある。
「瑛太さんの目線は気にならないと言えば絶対嘘になるんですが、現場の瑛太さんは大久保にしか見えないですし、これと言って帯刀について話してもいなくて。でも、ふとした時に『こういう小松帯刀像なんだね。
町田の考える帯刀像。それは「自分の行動に誇りを持っていた人」であり、「気高さ」を意識して演じているという。「どうしてここまで褒め称える資料が残されているのかと考えると、やはり“居方”が上手い、本当に頭のいい人なんだろうなと。役に寄り添い、何とか自分との共通点を見つけて膨らませていくのが僕の常ですが、帯刀は実在した人物。説得力を持たせるために、史実を大事にしながら、心を柔らかくして臨みました」。
「いろいろなところで時代劇をやりたいと言いふらしてきた」という町田。幼少期から祖母や祖父と共に時代劇を観て育ち、剣道も習っていたことから「いつか刀を振り回したいという気持ちは強いほうだった」という。 そんな思いが大河ドラマという大舞台で実現。初めてセットに入ったときは「パワーに圧倒され、自分自身が高揚している」と感じたそう。中剃りのちょんまげ姿も、撮影当初は「違和感しかなく、似合っているかどうかさえ判断つかなかった」と言うが、周囲には「本当に“居そう”だね」と好評。
一方で「所作もセリフも、現代劇のようにただ感情をのせるだけでは伝わらない。当時の匂いがするようにならないと」と、時代劇ならではの難しさも実感。普段は「現場はできたものを持ち寄る場所で、勉強しにいくところではない」と考える町田だが、「亮平さんは『花子とアン』での兄弟役以来、プライベートでも親しくさせていただいているので、思い切って『初めてなのでいろいろ教えてください』と伝えました」という。
その鈴木について、「体づくりもすごくて、西郷隆盛にしか見えないです。チャーミングで真面目だけじゃないところにすごく包容力を感じますね」と絶賛。特に吉之助が久光に懇願するシーン(第23話/17日放送)は「小松だから動いているのか、町田だから心が動いているのか分からないほど」だったという。
「僕自身、亮平さんの演技を目の当たりにして感化されましたし、実際に感化されたセリフを言う。そのときはそのまんま、本当に鳥肌が立つ感情でやらせていただきました。この人のために動きたい、日本の宝だと感じる一方で、かしこまらず気を許したシーンは全然違って、すごく心地よくて。
実は撮影前、小松の故郷である鹿児島県を訪れ、墓地と地元の銅像に挨拶してきたという町田だが、そのことは公表していなかった。理由を問うと「“俺行ってきたぞ!”とか自ら進んで言うことでもないのかな…と思って」と恥ずかしげな表情を見せつつも、立ち寄った飲食店で「ただの旅人の僕に、帯刀の資料をいろいろ見せてくれて感激しました。鶏も豚も牛も全部おいしかったです」と人好きのする笑顔。類まれなる才能を持ち、動乱期をその知恵で力強く駆け抜けた小松だが、謙虚でつつましやかな面を持ち、人望も高かったという。まさに“謙虚でつつましい”町田の一面が垣間見えるやり取りだった。(取材・文:磯部正和)
NHK大河ドラマ『西郷どん』はNHK BSプレミアムにて毎週日曜18時、総合テレビにて20時放送。